作り手と使い手の理解は反比例する
道具は発明によって機能の質が高まる。ところが、この機能の高まりと、利用者の理解は反比例していく。テレビを自作することが可能だった時代は終わり、壊れたら専門家でも直せない時代になっている。
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https://youtu.be/88qetLhKuBY
例:しるすことの発明と発展
↓しるす
指で地面をなぞって、跡をつける
↓より残す
石で地面に残す
↓場所を移す
鋭く加工された石で木の板を彫る
↓より早く
羽にインクを付けて紙に書く
↓より長く
インクだまりのあるペンにインクを付けて紙に書く
↓より手軽に
インクの内蔵されたペンで紙に書く
下に進むほど、できることは増えていく。道具を使う人は道具を作る知識や道具を扱う技能はどんどん少なくなる。より無知でも機能を利用できるようになる。怠惰にできるようになる。道具が洗練されていくほど、多様な構成部品を生み出し、的確にくみ上げ、機能として発揮するために巨大な知識が必要になる。
たとえば速乾性のインクがある。書くとインクがすぐに乾くようにすると、ペン先もすぐに乾いてしまって書けなくなってしまう。こういったトレードオフの解決するために膨大な知識が必要となってくる。たった100円のペンの謎だ。
https://gyazo.com/c5ac870bf3554fedcdd9da36837f6028
プロッキーの謎
さらに、それらの知識は特許や企業秘密によって製法が秘匿され、より使い手は、知恵との距離をおかれ、無知な存在となっていく。機能を利用する人の理解と、機能の実現のために物体を作る人の理解は反比例していく。より無知な人と、より巨大な知識を持つ組織体へ。
ブラックボックス化してきた「製品を構成する知識」
20世紀初期は機械工学の時代だった。
製品を分解すれば構造が分かる。電気系統が占める割合は少なかった。
20世紀後半になると電気電子工学の時代になり、分解しても理解しきることは難しくなった。
マイコンが加わり積層基板が登場すると分解も難しく、仕組みを理解しきることも難しくなった。
21世紀に入りソフトウェア工学の時代になり、さらに分解による理解は困難になった。
2019年においてクライアント側ソフトウェアと、クラウド側で分けることで、手元の製品を分解しても全体像がわかり得ない時代になっている。
製品を理解するために、製品よりも、作った人の脳の需要が高まった。ヘッドハンティングが不可欠となっている。
特許という仕組みの効果も限定的になってきている。
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機械
電気電子
ソフトウェア
非所有(クラウドなど、所有しきれない)
ペンの矛盾した特性
無臭
裏移りのしにくさ
金属やプラスチックなどにも書ける
リサイクル性
速乾性
ペン先の乾きにくさ
軽さ
湿度、高度、剛性
書ける長さ
疲れにくさ
線の安定性
インク量の安定性
インクの材質との調和性(にじみにくさなど
色の安定性
コスト
身体的安全性
利用温度条件
最大温度
最低温度
セラミック包丁
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