プロダクションシステム
スキーマは、概念や意味を表現するのに適したものである。しかし、問題を解くような場合にはあまりうまく機能しない。このような場面では、人は手順に従った行為を行っている。つまり、ある状況とそこで行う行為が結びついた、応答性を持つ知識を使っていると考えられる。こうした知識の表現を手続き表現と呼ぶ。
この表現方法を直接的に取り入れたのが、プロダクションシステムである( 図2-6)。これは、認知科学、人工知能両分野のパイオニアであるニューウェルとサイモン( 8) によって提案された、知識の表現と利用のための基本枠組み(アーキテクチャ)である。この枠組みでは、知識はプロダクションルールというif-then形式で表現される。if部分ではそれが発動されるための条件が書かれており、then部分ではその時に行う行為(頭の中の操作も含めて)が書かれている。外からの情報や処理の途中に生み出される情報は、ワーキングメモリという一時的な情報の保存場所に置かれる。ここの情報とマッチするif部分を持ったプロダクションルールが、ワーキングメモリの内容を書き換える。すると、ワーキングメモリ内の新しい内容に合致したif部分を持つプロダクションルールが発動される。これを繰り返していくことで課題を達成する。一定程度以上複雑な課題を行う場合、ワーキングメモリの内容に合致するプロダクションルールは複数出てくる。この場合は競合解消というメカニズムがはたらき、特定のプロダクションを一つ実行する。