システムズ・アプローチ
企業とシステムズ・アプローチ
1960
1960年代に入って経営組織論においても、システムズ・アプローチが本格的に議論されるようになった。システムとは相互作用する要素の集まりであり、創発特性、すなわちシステム全体としては認識できるが構成する要素においては現れない特性と、階層構造、ならびに変化する環境において生き残るためのコミュニケーションとコントロール・プロセスの保持という特性を持つものである。
企業は相互依存関係を持つサブシステムから構成される階層化された全体であり、資源のやりとりを通じて環境と相互作用を行うオープン・システムとしてとらえられる。変動しつづける環境と相互作用を行うことによって、組織は必然的に、時間とともにその構造が変化するダイナミックなシステムとして特徴づけられ、また、環境の中で生かされている生存(可能)システム(viable system)であるとみなされる。生存システムは、相互に作用する要素の集合体であるが、創発特性によって、全体としてのシステムの性質を個々の要素の性質に還元して説明することはできない。
各要素は、インプット、変換、アウトプットのプロセスを持ち、これを通じて要素相互にかつ全体に変化を与える一方、システムが存続するためには要素間に動的均衡が保たれる必要がある。
生存システムに関する議論では、生命体の2つの機能、すなわち自己維持と自己組織化が注目される。環境が安定的な場合には、生命体は従来からの秩序を守る(自己維持する)ために環境に適応しようとする一方、環境変化が激しいときには、新しい秩序の形成を目指して要素を組み替え、新たな均衡状態を生み出そうとする自己組織化のプロセスが発現する。企業組織のような合目的な組織においては、自己組織化は、個々の要素が持つ自由裁量権と情報処理能力に基づく自律的行動から発現可能になる。
生命体という視点からの一般システム理論は、ベルタランフィ(L. von Bertalanffy)らによって洗練されたものであり(von Bertalnffy, 1968)、1950年代の初めから社会科学のさまざまな領域でシステムズ・アプローチが用いられるようになった。
システムズ・アプローチとは、問題状況をシステムとして把握しようとするアプローチであり、システムを構成する各要素の単なる機能分析やその統計としての全体の把握にとどまらず、要素の相互作用性に注目し、関係全体を説明する全体論的アプローチを強調するものである。
50年代、60年代においては、伝統的なOR(Operations Research)のモデルのように、従来の科学的伝統を継承した目的追求主導型のハード・システム思考が一般的であったのに対し、70年代頃から問題状況を確固とした物理的構造を持たないソフトな者として認識するソフト・システム思考が出現した。