多機関・多職種連携によるヤングケアラー支援マニュアル~ケアを担う子どもを地域で支えるために~まとめ
このドキュメントについて
佐藤まみhealthy-sato.icon が多機関・多職種連携の取り組みとして「令和3年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業「多機関連携によるヤングケアラーへの支援の在り方に関する調査研究」多機関・多職種連携によるヤングケアラー支援マニュアル」について調べた履歴。 見出し
第1章 マニュアルの目的及び使い方
1.1 マニュアルの目的
1.2 マニュアルの対象と活用方法
1.2.1 マニュアルの対象
1.2.2 マニュアルの活用例
1.2.3 マニュアルで用いる用語の説明
第2章 ヤングケアラーに関する基本事項
2.1 本マニュアルにおける「ヤングケアラー」の捉え方
2.1.1 ヤングケアラーとは
2.1.2 ヤングケアラーと関係の深い子どもの権利
2.1.3 家庭内での役割(家族のケアやお手伝い)が子どもにもたらす影響
2.2 ヤングケアラーの多様な状況
2.2.1 ヤングケアラーがおかれている状況
2.2.2 ヤングケアラーのことをよりよく理解するためのヒント
2.3 連携して行う支援はなぜ必要か
2.3.1 ヤングケアラーの課題は家族が抱える課題が複合化したもの
2.3.2 ヤングケアラーの支援では家族の状況に応じた既存の支援の組み合わせが重要
2.4 連携して行う支援の在り方・姿勢(連携支援十か条)
第3章 連携して行う支援のポイント
3.1 ヤングケアラー支援の流れ
3.2 ヤングケアラーの発見(支援の入り口)
3.2.1 ヤングケアラーに気づくためのポイント
3.2.2 相談窓口を明確にする工夫(本人・家族向け)
3.2.3 相談窓口を明確にする工夫(連携先担当者、地域関係者向け)
3.2.4 アウトリーチの重要性
3.4 リスクアセスメント・多機関連携の必要性の判断
3.4.1 リスクアセスメント実施の重要性
3.4.2 初期介入のポイント
3.5.1 関係機関とその役割
3.5.2 ヤングケアラーの負担軽減につながるサービス
3.6 責任を持つ機関・部署の明確化
3.6 課題の共有・支援計画の検討(ケース会議等)
3.6.3 関係機関の役割分担
3.7 課題の共有・支援計画の検討(ケース会議等)
3.7.1 多機関連携によるアセスメント
3.7.3 ヤングケアラーのサポートのための地域力を高める(民間団体との連携、地域での支援)
3.8 見守り・モニタリング
第4章 支援の基盤づくり
4.1 個別ケースの支援に向けた連携体制づくり
4.3 周知や啓発(予防的な取組)
4.5 人材育成
第5章 付録
5.1 アセスメントシート
5.3 ヤングケアラー支援における主な関係機関
5.4 ヤングケアラー支援に関係する主な専門職
5.5 ヤングケアラー支援事例(仮想)
5.6 ジェノグラムとエコマップの作成方法の例
5.7 本マニュアル作成に係る研究事業について
5.8 アンケート調査結果集
以下ハイライト
3.3 本人や家族の意思確認
○ ヤングケアラーと思われる子どもを発見した場合、本人や家族が、現在の状況をどのように捉えているか、支援が必要であると考えているか、といった意思や希望を確認することが重要です。
○ 本人や家族の意思を確認することは、本人たちが意図しないところで勝手に支援が進められてしまうといった行き違いを防ぐことになります。これは本人や家族との信頼関係を構築していく上でもとても大切なことです。
○ 例えば、ヤングケアラーと思われる子どもは何等かの支援を希望しているが、家族(保護者)としては家族の置かれている状況を人に言いたくないという場合があるなど、本人と家族の希望が異なることもあるかもしれません。その場合においても、家族ありきの支援ではなく、ヤングケアラーである子どもを中心とした支援はどのようなものかを検討することが大切です。
○ 以下に、本人や家族の意識を確認する際のポイントを挙げていますので、参考にしてください。
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なお、本人や家族の意思確認は、この段階に限って一度だけ行うというものではありません。支援を続けていく中で、必要に応じて繰り返し行い、本人や家族の状況や意思を確認することが大切です。
3.4.1 リスクアセスメント実施の重要性
○ ヤングケアラーと思われる子どもを発見した後は、すぐに支援につなげる必要があるか否かの判断が求められます。子ども本人や家族の命に危険が及んだり、心身に危険が及んだりする可能性がないか、重大な権利侵害がないかなどを確認し、そのリスクがあれば速やかに児童相談所、自治体に連絡を取りましょう。児童相談所による一時保護、自治体による緊急の福祉サービス導入、入院などの対応が検討される場合もあります。
3.4.2 初期介入のポイント
○ リスクアセスメントを行い、緊急で介入する必要がないことが分かったとしても、ヤングケアラーと思われる子どもや家族がつらい状況にあるなど支援が必要と考えられる場合は、初期介入をすることになります。
○ なお、緊急での介入が不要と判断された場合であっても、その後の状況変化によって、緊急での介入が必要になる可能性があることには留意が必要です。
図表 12 :初期介入時に意識すべきポイント
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○ 必ずしもすべてのケースにおいて連携して支援を行う必要はありませんが、ヤングケアラーのおかれている状況が、経済的困窮や要介護(介護が必要な状態)、精神疾患など、様々な課題が複合的に絡みあっている場合には、関係各所が連携して、組織横断的に取り組むことが求められます。
○ また、ヤングケアラー本人やその家族に対して、これまで接してきた担当機関・部署とは異なる立場から話をすることで、必要な支援につながるきっかけができる場合もあります。
○ 自機関・部署で解決できるか否かの判断に迷う場合は、そのままにせず、状況が深刻化する前の段階で、関係機関に対して連携して支援を行う必要性や可能性について、相談してみてください。なお、連携先となりうる関係機関については、「3.5 連携先の確認」を参照ください。
○ 「5.8 アンケート調査結果集」において、本事業におけるアンケート調査で得られた、効果的であったと感じられた多機関連携による支援の例を紹介しています。どのような時に連携が必要となるのか、どのような場面で連携をすると効果的な支援になるのか、参考にしてみてください。
第3章 連携して行う支援のポイント
3.5 連携先の確認
図表 14 : ヤングケアラー支援における主な関係機関の機能及び役割例
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3. 6 責任を持つ機関・部署の明確化
3.6.1 関係機関・部署の間でのヤングケアラーに関する共通理解
○ 他機関・部署と連携した支援が必要であると判断し、いざその相談をしても、相談先の機関がそれを課題であると捉えなければ、一体的な連携支援を行うことは難しいといえます。関係機関・部署の間でヤングケアラーに関する共通理解が得られていることが重要といえるでしょう。
○ ヤングケアラーは法律などで定められた判断基準や明確な定義が設けられていないことから、「ヤングケアラーとはどのような状態にある子どもを指すのか」という点において、関係機関ごとに異なる解釈を持っていることも考えられます。また、共通の課題を認識することができたとしても、支援の目的や方針が不揃いであると、一貫した支援の提供が難しくなります。支援の方向性に差異が生じないように、関係機関同士で顔を合わせて協議をし、共通理解を持った上で対応することが重要となります。
3.6.2 関係機関の連携円滑化のコツ
○ 多機関で連携・調整する際に取りうる方法を紹介します。地域の規模や実情に合わせて工夫の仕方や取組の方法を選択することが望ましいため、以下に紹介している方法と同じようにしなければならないということではありませんが、ご自身の所属機関で取り入れられそうな方法はないかという視点で参考にしてみてください。
図表16:多機関連携における連携円滑化のコツ
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○ 支援を開始する前に、ケースに関わる機関の間で役割を明確にしておくと、一つの機関に負荷が集中しすぎることは避けられるでしょう。
○ 連携して支援を行う機関や支援担当者が多いほど、様々な専門性、考え、状況が影響し、全体の方針がぶれてしまう可能性もあります。また、人数が多くなればタイムリーな情報共有が難しくなる場合もあります。関係機関ができることや機能を把握したうえで、役割分担を明確にしておき、情報共有の方法を予め決めておくとよいでしょう。
○ 以下に、関係機関・部署の間での役割分担の例を紹介します。
図表 17 : 関係機関・専門職の間での役割分担例 https://scrapbox.io/files/64bdc5e49b0d68001be1e498.png
3. 7 課題の共有・支援計画の検討(ケース会議等)
○ ヤングケアラーの支援を検討する際、 できる限りヤングケアラーを含む家族の状況を正確に把握しておくことが重要です。 ヤングケアラーの支援を検討するにあたり、 必要な情報は次のようなものがあります。 これらの情報を共有し、 アセスメントを行い、 支援目標、 支援計画を立てていきます。
図表 18 :ヤングケアラーの支援を検討する際に必要な情報
○ 自機関・部署だけで得られる情報がわずかであったとしても、ヤングケアラーが通う学校、家族が利用している公的サービスなどで既に把握している情報があるかもしれません。支援の現場では様々な立場から状況の把握や支援計画の検討が既に行われていることがあるため、事前に他機関・他部署で把握できていることや検討されていることを確認し、ヤングケアラー本人や家族に対して同じ質問を繰り返すことを減らしたり、各機関・部署における見守りの中で徐々に情報を得たりする、といった意識も大事だといえるでしょう。
○ 追加的に情報を把握する必要がある場合も、自機関・部署よりもヤングケアラーやその家族とつながりが強い機関・部署があれば、その機関から話を聞くことが有効な場合もあります。ヤングケアラーやその家族がおかれている状況、他者との関わりや関係性はケース毎で異なることを意識し、必要に応じて関係機関・部署とも相談をしながらアセスメントを進めていくのがよいでしょう。
3.7.2 情報共有における留意点
○ ヤングケアラーへの支援を検討するにあたり、個人情報を関係機関と共有する際の前提として、ヤングケアラー本人やその家族から同意を得ることが必要となります。
○ 本人やその家族から同意を得る際には、例えば、「同じことを何度も話すのは大変だと思うので、私からお伝えしてもよろしいですか」と情報を共有することのメリットを伝えたり、情報共有先でも個人情報は守られることを伝えたりすることで安心してもらう、といった工夫が考えられます。
○ 本人や家族の同意が得られる場合には、事前に、多機関連携を視野に入れた包括的な同意を取っておき、この先、相談支援のために関わる機関において情報を共有することになることを説明するのが良いでしょう。
○ しかし、中には、家族の同意が得られないケースもあります。このような場合も、ケースに応じて様々な対応が考えられます。個人情報の共有に関する取組や考え方の例を以下にまとめましたので、参照してください。
図表19:個人情報の共有に係る取組や考え方の例
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○ また、 関係機関・部署間で個人情報を共有する準備が整った後も、 種々の留意すべき事項があります。 以下にその工夫と例を示します。
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○ 関係機関と連携した支援を行うためには、必要事項を漏れなく情報共有をしていくことが重要です。ただ、単に情報共有をするということではなく、「密に」「こまめに」「タイムリーに」「定期的に」「本人を含めて」情報共有を行うなど、工夫を凝らしている機関が多くあります。昨今ではオンラインによるミーティングが普及していることから、対面での情報共有以外にも電話やオンラインでの情報共有により、さらにスムーズな連携が可能となります。
○ 連携の相手方となる機関からも情報を得られるように、まずは自らが情報発信をしていくという姿勢も、情報共有においては重要なポイントとなるでしょう。
○ また、情報共有した内容や得られた情報を記録に残しておくことで、支援の途中経過や支援の終了後に充実した振り返りを行うことができます。記録によって、過去の情報共有の内容や支援の成果を振り返ることで、より効果的な支援方法を見つけ出すことや今後の改善点を見出すことができます。
第4章 支援の基盤づくり
4.1 個別ケースの支援に向けた連携体制づくり
○ 個別ケースの課題の共有・支援計画の検討を行うために、関係機関・専門職が情報共有をし、「何が課題となっているのか」、「何を目的・ゴールとするのか」、「どのような目標・計画を立てるのか」ということを議論する場を設けるのが良いでしょう。
○ 様々な分野の機関を一気に集めようとしても、招集するだけで時間がかかってしまい、なかなか実際の支援に至らないということもあります。どのような体制を組むと良いか予め検討しておくことが、ケースへの早期対応につながるでしょう。
○ 個別ケースの支援を重ねると、地域における支援の課題が明らかになってきます。明らかになった地域の課題を整理し、新たなサービスや体制の構築に反映させることが重要です。そのためにも個別ケースの会議だけでなく、地域全体の課題を検討できる場をつくることも重要です。
○ 連携体制の設け方については、以下のようなパターンがあります。
図表 22 :多機関連携における調整の方法・体制づくりのパターン https://scrapbox.io/files/64bdc45d57691c001cfbf2e9.png
○ 多機関連携による会議を行う場合の基本的な流れを紹介します。
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○ 多機関連携による会議を行う場合には、まず、何が課題であり、なぜ多機関連携が必要なのか、また、個別ケース会議のゴールをどこに置くのかを明確にする必要があります。
○ また、 会議開催にあたっては、 会議の目的、到達地点、進行と時間、守秘義務等を確認したのち、これまでの経緯、各機関のこれまでの関わりについて皆で共有します。 その後、全員でアセスメントを行い、 目標(長期目標、 短期目標)を決めます。 その目標にのっとって支援計画を立て、 役割分担を決めるところまで行います。
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4.4 日頃の関係作り
○ 多機関での連携を進めるにあたり、仕組みや体制を整えること以外にも様々な工夫が考えられます。例えば、連携が必要になった時にはじめて他の機関と関わりを持つのではなく、日頃からコミュニケーションを取っておくことで、早期の対応につながるでしょう。特別な仕組みや体制を整えなくとも、ちょっとした気配り・心配りをすることで、円滑に連携することが可能になります。
○ 特に、関係機関、職種が一堂に会する場でヤングケアラーを話題にする、ヤングケアラーの理解を深める、実際に会って議論することなどが重要となるでしょう。行政が中心となってそのような場を用意していくことが望ましいでしょう。
○ 以下に、実際に取り組まれている工夫や事例をご紹介します。日々の取組の中に取り入れることとして、参考にしてみてください。
図表 26 :多機関連携における日頃の関係作りの例
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5.2 多機関連携チェックリスト
○ 多機関連携を行う際に留意すべき点をチェックリストとしてとりまとめましたので、 各機関が集うケース会議の場で活用するなど、 連携時の参考にしてください。
図表 32 : 多機関連携チェックリスト
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