Wave Equations
まだ arXiv にあげるまでにもなっていないのですが,「Klein-Gordon 方程式,Maxwell 方程式,Dirac 方程式を同じ形に書く」という原稿を書きました。お読みになったらコメントいただけるとうれしいです。twitter@gandhara16,tadas@fpu.ac.jp。計算間違いや誤字脱字の指摘も歓迎します。数式の符号とか係数とかは結構間違えてると思います(1 = -1 = i = 2 = π という単位系を使ってる)。
論文下書き
2022/03/02, 05/23 最終更新
動機
Klein-Gordon 方程式,Maxwell 方程式,Dirac 方程式は相対論的要請をみたす基礎方程式なのに,見た目がかなり違う。
とくにほかの2つがベクトル解析の形であるのに対し,Dirac 方程式は複素行列の方程式で意味がとりづらい。
この3つを同じ形に書けないものかと考えるのが人情である。
実は前世紀中盤に Hestenes が「時空代数」という理論を考案し,この3つがほぼ同じ形に書けることを示している(本文中の参考文献参照)。
これはしかし,あまり知られていない。時空代数がとっつきにくいせいだろうか?
方針
時空代数をつかわずに,みんなの知ってる行列計算で同じ結果をだしてみよう。
まず,3次元の静電磁場の方程式$ \nabla\cdot\mathbf{E}=\rho,\nabla\times\mathbf{E}=0,および$ \nabla\cdot\mathbf{B}=0,\nabla\times\mathbf{B}=\mathbf{J}をディラック方程式に似た形で書いてみる。
3次元からはじめるのは,計算が簡単だから。4✕4のガンマ行列ではなく,2✕2のシグマ行列で書ける。
重要な点はだいたい3次元で理解できる。
これがうまくいったら(実際うまくいくのだが)4次元のガンマ行列に応用。
結果
Klein-Gordon 方程式,Maxwell 方程式,Dirac 方程式の3つが,まったく同じ微分作用素(Dirac 作用素と呼ばれる)から導出できる。
方程式の見た目が違うのは微分演算子の違いでなく,微分される対象の違いである。微分される対象とは:
Klein-Gordon 方程式はの 1-ベクトル
Maxwell 方程式は 2-ベクトル
Dirac 方程式はスピノル
量子力学の教科書には,Dirac のガンマ行列のおかげでスピノルが出てくる,とあるが,これは逆ではなかろうか。
もともと,世の中にはベクトルとかスピノルとかの性質の違う場があり,それにディラック作用素をあてがうといろいろな方程式があらわれる。
これらの結果は時空代数のような高級な数学を使わなくても,普通の行列計算で示すことができる。