説明のセリフ
よく橋田壽賀子のドラマなどでセリフが説明的で長すぎると指摘される。 同じようなことを村上春樹もしている。
つくるは言った。 「誰かを真剣に愛するようになり、必要とするようになり、 そのあげくある日突然、 何の前置きもなくその相手がどこかに姿を消して、 一人であとに取り残されることを僕は怯えていたのかもしれない」「だからあなたはいつも意識的にせよ無意識的にせよ、相手とのあいだに適当な距離を置くようにしていた。あるいは適当な距離を置くことのできる女性を選んでいた。自分が傷つかずに済むように。 そういうこと?」つくるは黙っていた。 その沈黙は同意を意味していた。村上春樹. 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 104ページ めっちゃわかりやすく、そうか?という解釈をそのまま説明してくれてる。
あまりにもストレートなのでポカンとするが、さすがにこれは「罠」なのでは.....。
この女性はすみれを愛している。 しかし性欲を感じることはできない。 すみれはこの女性を愛し、しかも性欲を感じている。ぼくはすみれを愛し、 性欲を感じている。すみれはぼくを好きではあるけれど、 愛してはいないし、性欲を感じることもできない。 ぼくは別の匿名の女性に性欲を感じることはできる。 しかし愛してはいない。とても入り組んでいる。 まるで実存主義演劇の筋みたいだ。 すべてのものごとはそこで行きどまりになっていて、誰もどこにも行けない。 選ぶべき選択肢がない。そしてすみれがひとりで舞台から姿を消した。 村上春樹. スプートニクの恋人 (Japanese Edition) Kindle 版. 157ページ この小説の説明をたった数行でしてしまった.....。