ブラッシュアップ急性腹症
p17
4.腫瘤の有無:腫瘤は腫瘍とは限らない。
・蜂窩織炎性(虫垂炎)/膿瘍など:急性炎症は組織が硬くなる
・胆嚢炎、痩せた人の腎盂腎炎:腫れた臓器そのもの
・腫瘍そのもの:圧痛を伴わない
・嵌頓ヘルニア:硬い皮下腫瘍
・大腿ヘルニア
5.温度
・絞扼性腸閉塞、上腸間膜動脈閉塞症 SMAO:虚血となった小腸の部分の腹壁と周囲とに温度差を感じる
6.稀な所見:触った部分が皮下出血
・敗血症→DIC
・皮下気腫:下部消化管穿孔が後腹膜経由で皮下に達する
p53-
❸痛みの性状からのアプローチ
1⃣七転八倒型=痛みの原因は局所に限定しているタイプ
悶絶して動いている:結石性疾患(尿管結石発作・胆石発作)=腹膜刺激症状なし
内臓痛なので臓器虚血(捻転も)でも同様→心房細動 AFや卵巣腫瘍はないか?
2⃣苦悶型=痛みの原因が周囲に広がっているタイプ
じっとしている=上部消化管穿孔(ベッド上座位)、急性膵炎(胸膝位)=腹膜刺激症状あり
※注1 痛みがマスクされている
麻痺がある場合(脊髄損傷後、脳血管疾患後など)
高齢者
統合失調症
肥満、糖尿病
妊娠
※注2 疾患の進行で痛みが和らぐ
穿孔性虫垂炎:穿孔直前が一番痛い。穿孔直後自発痛は少し和らぐ
梗塞(上腸間膜動脈閉塞症 SMAO):壊死
p54-
❹随伴症状からのアプローチ→消化器症状、発熱
1⃣消化器症状
➀悪心・嘔吐 メインの管(本管):胃・小腸・大腸、枝分かれした管(側管):膵管、胆嚢、膵臓、憩室
本管は悪心が強く出る。口側であればさらに強くなる
本管とも側管ともいえないような虫垂は吐き気はあるが長続きしない
側管は悪心が弱い。強い痛みに伴う吐き気はある
後天的にできた側管では悪心はほぼない(憩室など)
②下痢
大量の水様下痢→急性腸炎を想起
頻回だが量が少ない下痢→骨盤内炎症の存在(膿瘍など)
下痢どころか軟便もない→初期診断から急性腸炎を一旦除外
2⃣発熱 悪寒戦慄の有無をチェック!「外科的感染症」→ドレナージ(急性胆管炎、閉塞性腎盂腎炎)
Common disease(虫垂炎・胆嚢炎など)は発熱の有無は重視しない
明らかな発熱→感染性疾患から鑑別
平熱→非感染性疾患から鑑別(腫瘍など)
低体温(septic abdomen)
3⃣黄疸
胆管炎
敗血症(軽度の黄疸)
4⃣腹部以外の痛み
腰背部痛→後腹膜病変
右肩甲骨部の痛み→胆石・胆嚢炎
左肩痛→脾臓・膵臓・左横隔膜
右肩通→肝臓・右横隔膜
下肢の痛み→血管疾患(大動脈解離)・閉鎖孔ヘルニア
❺女性へのアプローチ
➀どのようなとき産婦人科疾患を考えるか
消化器症状(悪心嘔吐下痢)の乏しいとき、発熱を伴わない強い腹痛、持続痛。例外として卵巣捻転は嘔吐、PID(骨盤内炎症性疾患)は発熱
②年齢
初潮~20歳台前半:卵巣茎捻転(奇形腫による)、子宮外妊娠、PID、卵巣出血
20歳代後半:+子宮内膜症
中年:子宮筋腫(20歳代には考えにくい)
高齢者:子宮留膿腫
③症状
発熱を生じる疾患が少ない
高熱:PID(若年)、子宮留膿腫
急性発症が多い:卵巣出血、子宮内膜症性卵巣囊胞(チョコレート囊胞)破裂、卵巣茎捻転
p190- 8.急性腸管虚血
p223- 10.嵌頓ヘルニア