COPD
=慢性 閉塞性 肺 疾患
<参考>授業、朝倉
【鑑別疾患】
閉塞性細気管支炎(移植後や膠原病関連、健康食品被害など)
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安尾将法先生(2023)
【定義】日本呼吸器学会COPDガイドライン第6版
タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入、暴露することなどにより生ずる肺疾患であり、呼吸機能検査で気流閉塞を示す。気流閉塞は末梢気道病変と気腫性病変がさまざまな割合で複合的に関与し起こる。臨床的には徐々に進行する労作時の呼吸困難や慢性の咳・痰を占めすが。これらの症状に乏しいこともある。
【原因】
90%以上が喫煙
大気汚染、粉塵、化学物質の長期間にわたる吸入
肺の炎症→肺末梢気道の狭小化、肺胞壁の破壊、過分泌
【病理】
粘液をつくる細胞(杯細胞)が増える→痰が増える→気管支腺の肥大 =慢性気管支炎
➀気管支が狭くなる ②肺胞が壊れる →息がスムーズに吐けない→酸素が取り込めない =肺気腫
中枢気道気管支粘膜:杯細胞の増生、扁平上皮化生。気道壁:粘膜下腺の肥大と過形成。
末梢気道(内径2㎜以下の細気管支):壁の線維化+杯細胞の過形成
肺胞領域:肺胞破壊
肺血管:内膜・平滑筋の肥厚や血管壁の線維化。進行すると肺高血圧から右心不全の原因
気道腔・肺胞腔:マクロファージと好中球の浸潤
【発症機序】
プロテアーゼ・アンチプロテアーゼ不均衡、オキシダント・アンチオキシダント不均衡
現喫煙者では、BALF中に、肺胞マクロファージ、好中球が増加
<遺伝的素因>α1アンチトリプシン欠損症(まれ)
【病型】
気腫型(気腫性病変優位型)CXR、胸部CTで気腫性陰影が優位に認められる
非気腫型(末梢気道病変優位型)CXR、胸部CTで気腫性陰影が無いか微細にとどまる
【評価】
mMRC質問票(呼吸困難を評価)、COPD assesment test
【症状】症状が乏しいことも
慢性的な痰:粘膜下腺や杯細胞といった分泌組織の肥大や過形成
咳嗽
労作時息切れ:
➀気道狭小化による呼吸抵抗の上昇:1.末梢気道の気道壁の肥厚・線維化。2.肺胞組織の断裂による気道の外側への牽引力低下→呼気時の気道虚脱
②気腫化による肺容量の増大に伴う呼吸仕事量の増加(静的過膨張)+気道の抵抗増加や肺の弾性収縮圧低下に起因した換気増大時のエア・トラッピング(空気が入ったまま!)(動的過膨張)
低拡散領域と気道閉塞による低換気領域が不均一に存在する→運動時の低酸素血症が助長。重症化すれば安静時でも低酸素血症に。
階段や坂道で息苦しい、同僚と同じペースで歩いているとつらい、休んでいる時は大丈夫なのに動くとつらい
低酸素血症からチアノーゼ
進行すると、体重減少、肺性心による症状、精神症状(抑うつ、不安)
【身体所見】
視診:呼吸数の増加、口すぼめ呼吸、呼吸補助筋の使用(胸鎖乳突筋、前斜角筋など)、奇異性呼吸、チアノーゼ、ばち指、右心不全(浮腫(特に下肢)、頚静脈怒張)、樽状胸郭=前後径の開大、横隔膜平坦化→吸気時に肋間腔が胸腔側に陥凹する(Hoover徴候)
聴診:呼気時間延長、呼吸音減弱、心音の最強点の移動
打診・触診:鼓音、肺肝境界の下降、心濁音界縮小、心尖拍動の移動・触知困難、肝腫大(肺性心の場合)
>高度の肺気腫
呼吸音の減弱
【検査】
<生理学的検査>
閉塞性換気障害(FEV1%<70%)→進行すると混合性換気障害
吸入気管支拡張薬を含む治療によっても、閉塞性換気障害は完全には回復を示さない=非可逆性の気流閉塞
肺過膨張:FRC、RV、残気率(RV/TLC)
ガス交換障害:肺胞領域の破壊→肺胞ガス交換面積と肺毛細血管の減少→拡散能が低下する(%DLCO<90%)
静肺コンプライアンスの上昇
換気不均等分布:ΔN2の上昇、Closing Volumeの増加
肺血管床の減少、低酸素性肺血管収縮→PH→肺性心→右心不全→浮腫
FRC: Functional Residual Capacity
RV: Residual volume
TLC: Total Lung Capacity
<画像検査>
肺野の透過性亢進(重症例で肺胞破壊や肺の過膨張による)
肺野末梢血管影の細小化、肺紋理の減少
肺過膨張所見:横隔膜の平低化、肋間腔の拡大、心胸郭比の減少、胸骨下気腔の拡大
肺性心:肺動脈主管部が太い
胸部CT LAA(Low Attenuation Area)低吸収領域
軽症例:径10mm以下の小LAAが多数
中等症例:径10mm程度のLAAが密集、互いに融合
重症例:融合したLAAが広い領域占拠、正常肺組織がほとんど消失
スパイロメトリー:労作時呼吸困難の出現前にCOPDの検知が可能
【診断】40歳以上の喫煙歴
>肺気腫
通常長期間の喫煙歴がある中高年の成人
形態学的、画像的、病理学的に
>慢性気管支炎
通常長期間の喫煙歴がある中高年の成人
原因不明の咳や痰が1年のうちに3か月以上持続し、なおかつそれが2年以上続いている場合(=臨床的診断 問診!どのくらい続いている?)
>COPD
➀長期の喫煙歴などの暴露因子があること
②気管支拡張薬吸入後のスパイロメトリーでFEV1/FVC<70%であること
③他の気流閉塞を来たしうる疾患を除外すること
鑑別疾患※COPDと周辺疾患
慢性気管支炎、肺気腫、喘息
【鑑別疾患】
ほとんどはCXRで鑑別可能
気管支喘息:アトピー素因、発作性の呼吸困難、NO濃度測定(合併もあるけどね) 【病期分類】気管支拡張薬投与後の%1秒量(対標準1秒量)で評価
∵閉塞性気管支障害が進行すると、細気管支領域の閉塞からFVCの低下が起こり、FEV1%が低下から上昇に向かう
【管理目標】
1.現状の改善
症状およびQOLの改善
運動耐容能と身体活動性の向上および維持
2.将来リスクの低減
増悪の予防
疾患進行の抑制および健康寿命の延長
【治療】
<急性期>
ABCアプローチ(抗菌薬:antibiotics,気管支拡張薬:bronchodilators,ステロイド:corticosteroids)
A:感冒様症状の先行、喀痰量増加など感染が疑わしい場合
B:短時間作用性の気管支拡張薬
C:感染の有無にかかわらず、呼吸機能と低酸素血症の改善のため有用
増悪時の第一選択薬はSABAの吸入
高度の気流閉塞や入院を要する増悪では、禁忌となる合併病態がなければ全身性ステロイド薬が推奨される。プレドニゾロン換算30-40mg/日を5-7日間
呼吸不全がある場合には酸素療法 基本的に低濃度の酸素投与から開始する(CO2ナルコーシスの回避)
換気補助療法 NPPV(JCS1桁)30~3桁だと難しいかも ※CO2ナルコーシスを生じた場合や,NPPVでも低酸素血症が改善しない場合には速やかに気管内挿管と人工換気
<安定期>
長期間作用性気管支拡張薬(β2刺激薬LABA、抗コリン薬LAMA):呼吸機能の改善、QOL・運動耐容能の改善、増悪の予防、生命予後の延長。気管支拡張薬による気流制限(閉塞性換気障害)の改善の指標はFEV1の変化。肺容量減少で労作時息切れや運動耐容能改善が認められることも(FVCやICの評価も)。
第一選択薬
1.基本的治療
LAMA:迷走神経由来のAChによる気道収縮に特異的に拮抗
LABA:気道平滑筋内のcAMPの増加からプロテインキナーゼAを活性化し気管支を拡張させる
LAMA/LABA配合薬
2.喘息合併例(ACOなど)、末梢血好酸球増多例、頻回増悪例
ICS/LABA配合薬
ICS/LAMA/LABA(Triple therapy)
〇他の薬剤
喀痰調整薬
テオフィリン:cAMPを分解する酵素PDEを阻害し気管支を拡張させる
抗菌薬
利尿薬
禁煙
インフルエンザワクチン(毎年)および肺炎球菌ワクチン(5年持続)、covid-19感染症ワクチンの接種
身体活動性の向上・維持
呼吸リハビリテーション
ICS,テオフィリン,喀痰調節薬など
長期酸素療法
高度慢性呼吸不全例 PaO2 60Torr以下
PH
慢性心不全
チアノーゼ型先天性心疾患
【合併症】増悪の原因として(肺炎、CO2ナルコーシス、呼吸不全)
喫煙やCOPDにおける全身性炎症病態による合併症、またCOPD治療薬による副作用が問題となる
肺癌(6%)、PH、気胸、肺性脳症(CO2ナルコーシス)、虚血性心疾患、心不全、消化性潰瘍、骨粗鬆症、骨格筋機能障害、栄養障害、精神症状、糖尿病 COPD患者は労作時息切れから身体活動性が低下→心血管病変、糖尿病、骨粗鬆症の発症・悪化
■COPDの予後不良因子(『COPD診断と治療のためのガイドライン(第5版)』)
●男性※ ※女性の方が1秒量の低下速度が大きく予後が悪いとの報告もある.
●喫煙
●高齢
●るいそう
●運動耐容能の低下
●1秒量の低下
●肺高血圧症の存在
●市中肺炎の発症
●胸部CTにおける気腫病変の存在
●重症の息切れ
【栄養療法】
カロリー:高カロリー
タンパク:高タンパク(分岐鎖アミノ酸を多く含むもの)
炭水化物:過剰摂取を避ける(二酸化炭素産生を助長)
食事量・回数:1回摂取量を減らして食事回数を増やすなどの工夫
微量元素:特にリン,カルシウムの摂取が重要(骨粗鬆症合併頻度が高いため)
その他:炭酸飲料など腹部膨満を惹起するものは避ける。ビタミンDの摂取も推奨されている