Basedow病
#内分泌疾患 #甲状腺中毒症
<参考>朝倉
【概念】
甲状腺腫と眼球突出・動悸などの臨床症状をBasedowが結びつけた。自己免疫疾患
【原因・病因】
複数の遺伝的要因と環境要因との関与のもと、自己のTSH受容体に対する免疫制御機構の破綻
→抗TSH受容体抗体(anti-TSH receptor antibody: TRAb)が生成
→甲状腺機能亢進症、眼症などの甲状腺外症状
【疫学】
甲状腺中毒症の基礎疾患として最頻:Basedow病
比較的若年の女性。15-50歳女性
有病率は女性の0.3%
男女比は1:7-10
【病態生理】
抗TSH受容体抗体が、TSHと同じように甲状腺を刺激して、甲状腺ホルモンの合成や分泌を増加させ、甲状腺機能亢進症を引き起こす。
眼症状(眼瞼突出、複視):自己免疫学的機序によって、後眼窩脂肪組織や結合組織の増生腫大や、外眼筋の炎症性肥厚→眼球の前方への突出や眼球運動障害
コントロール不良な甲状腺中毒状態では、感染、手術、ストレスを誘因として、高熱、循環不全、ショック、意識障害などをきたし、生命の危機を伴う場合があり、甲状腺クリーゼとよばれる。
【臨床症状】甲状腺機能亢進状態によるもの・甲状腺以外の症状
甲状腺機能亢進状態
動悸、多汗、体重減少、疲労感、手指振戦
びまん性甲状腺腫、頻脈
眼症状(眼球突出・複視・眼球偏位)
甲状腺ホルモン過剰→交感神経機能亢進作用→機能性眼症:眼瞼遅延(von Grafeフォン・グレーフェ徴候:上眼瞼おくれ。眼瞼挙筋の肥大、拘縮、ミュラー筋の緊張でも)、眼瞼後退(Dalrympleダルリンプル徴候:眼裂開大。驚いた目)、瞬目減少
眼窩組織内器質的変化:眼瞼突出、複視
前脛骨部粘液腫
〇Merseburgメルセブルグの三徴候:甲状腺腫、頻脈、眼瞼突出
<個人差>
高齢者:頻脈になりにくい。甲状腺腫が小さい。体重減少☆
男性:周期性四肢麻痺(稀。早朝起床時に四肢脱力発作、発作中は低K血症)
<甲状腺クリーゼ>
➀全身性症候:高体温、高度の頻脈、多汗、ショック
②臓器症候
③甲状腺基礎疾患関連症候
【問診】
27歳の女性.
動悸および手の震えを主訴に来院した.妊娠中は自覚しなかったが,1年前の出産後,半年経過した頃から労作時の動悸,発汗および手の震えを感じていた.
食欲は変わらないが,体重は最近3ヵ月で5kg減少した.
急に暑がりになった.
出産後から無月経が続いている.
【身体所見】
身長160cm,体重42kg.
体温37.2℃.
脈拍112/分,整.血圧116/60mmHg.呼吸数14/分.SpO2 99%(room air).
甲状腺の腫大を認めるが,柔らかく圧痛は認めない.(→亜急性甲状腺炎,無痛性甲状腺炎は否定的.Basedow病の可能性(→Basedow病,無痛性甲状腺炎,亜急性甲状腺炎の可能性)
頸部リンパ節を触知しない.手指に細かい振戦を認める.
血液生化学所見:甲状腺刺激ホルモン〈TSH〉0.01μU/mL未満(基準0.2〜4.0),遊離トリヨードサイロニン〈FT3〉21.5pg/mL(基準2.3〜4.3),遊離サイロキシン〈FT4〉3.7ng/dL(基準0.8〜2.2).
頸部の写真を次に示す.