フォーマリズム再論
法としての所有権
組織・会社を所有する
公的所有と私的所有
主権と所有
法としての所有権
スティーブン・シャベル『法と経済学』によれば、所有権とは「譲渡可能な使用収益権」のことであり、
所有権の存在意義とは、
1) 労働のインセンティブ
2) 物を保存し改良するインセンティブ
3) 物の譲渡のインセンティブ
4) 紛争ならびに物を防衛または奪取する努力が回避されること
5) リスクからの回避
6) 富の望ましい分配の実現
である。(p.12-24)
つまりレントシーキング費用を避けるという役割。
でもネオカメラリズムの話では(1)(2)に訴えてもいる気がしますね。
ヤーヴィンの、所有権は争いを解決するためのものだから歴史的偶然のディストリビューションでもいいというのは、所有権は労働のインセンティブとしてあるという理解と対立するように思える。なぜなら、偶然は定義上労働ではないのだから(本当?)。
追記: いや、分配が恣意的でも、労働するインセンティブになるということはあるのでは。要は取られるから育てても意味ないという状態を回避すればいいのであって、労働した人に報酬として所有物を与えるという初期分配が労働のインセンティブを与えるのに重要なわけではないはず。
「コースの定理」からはどのような原理が導かれるだろうか? コースの定理によると、取引に一切摩擦が伴わないとすれば(取引費用がゼロであれば)、所有権がどのように割り当てられようとも、最終的にはパレート効率的な結果(資源配分)がもたらされることになる。しかしながら、現実の取引には様々な摩擦が伴う。そこで、各種の摩擦を原因として引き起こされる非効率をできるだけ抑えるためには、所有権をどのように割り当てたらよいか、という問題が浮上することになる。例えばだが、取引費用を抑えるためにも、不完全競争に起因する各種の問題を和らげるためにも、何ものかに対して労働を付け加えた人物にその何ものかに対する所有権を割り当てる(帰属させる)のが(他の事情を一定とすると)何かと都合がいい、という場合もあるかもしれない。これはコース流の議論から導かれる可能性の一つ(あくまでも一つ)だが、(所有権の根拠を労働に求める)ロックの所論が示唆するのと同じ方向を向いている可能性の一つではある。マイルズ・キンボール 「ジョン・ロックの所有権論 ~労働と所有権~」(2017年9月10日) – 経済学101 狩猟採集社会での狩猟などでは、取れなかった場合のリスクが大きいため所有権が明確ではないらしい。しかし、フォーマリズムの観点からすればリスクが大きかろうがそうでなかろうが、所有権は明確であるべきということになるのではないか。
追記: 衝突から生じるコストとの比較になるから、かならずしもそうではないような
人は所有権が無ければ、金の卵を産むガチョウを引き裂いて食べてしまう
羊飼いと羊: 羊を殺す (短期的思考) か羊の毛を継続的に刈る (長期的思考) か
所有権の唯一の目的が予測可能性を生み出し争いを防ぐことだとする。
では、xという物の所有権があらかじめ予測でき争いの余地さえなければ、10時にA氏に、11時にB氏に、12時にC氏に、13時にD氏にと言ったように占有が移動しても問題ないのか。
その場合でも、A氏とB氏が取引を行えればまずいことは起こらないのではないか
α: A氏に1000円、B氏に0円
β: A氏に100円、B氏に1000円
という選択肢をxをA氏が占有している間に直面した時、B氏は「901円あげるからβを選んで!」と交渉すれば、A氏の利益が1001円、B氏の利益が99円となり、A氏はβを選ぶだろう。
この取引によって、A氏がαを選んだ場合よりも、A氏もB氏も得をすることになる。
政治には権力追求の副作用としての悪影響もあるが、それは市場競争にも言えるのではないのか
政治の副作用のほうが暴力的に見えるのは、警察などの組織を有しているという点に求められるのであって、所有権の未確定とは別の論点なのではないか
たとえばロビー活動を通して新規参入者の参入を規制を通じて制限しようとする民間企業の活動のもとになっているfrictionの源泉は、ロビー活動により権力を追求したい気持ちではなく、市場でのシェア獲得を求める気持ちではないのか。
ヤーヴィンのように時効取得 (adverse possession) を安易に認めすぎても、窃盗のインセンティブが強くなってしまうことも考えられる
マネジメント上の組織の所有
残余請求者
残余請求者なしの(完備)契約 vs. 所有
インプット、アウトプットの均質性
配当が一括で全員に支払われること
株式によって配当の率が明確に予測可能であり、意図的に操作できないこと
株主はお金でのみ会社から受益できること
←株主優待は?
株主優待は日本とかドイツにしかない。
ウルトラ・ヴィーレスの法理
王様ゲームから得られる主観的な効用を株式の保有数に従って分配することは出来ない
→フリンジ・ベネフィット
私的所有と公的所有
ハンス・ハーマン・ホップ
主権と所有
ハトが増えることで交易が起こりタカの搾取するものが増えるタイプのタカハトゲーム
ヤーヴィンの観点をまとめると、主権も所有権も(株式も)、社会がホッブズの自然状態に陥ることを避けるためにあるという、根本的に共通の機能を持つ。
主権における時効取得
ヤーヴィンの理論によれば、権力闘争が絶えず権力が安定しないソ連の権力者は移動型盗賊に近いから、ソ連の政府内は、アナーキー (権力闘争によるホッブズの自然状態) である。