マンサー・オルソン「独裁制・民主制・経済発展」
独裁制
定住型盗賊、移動型盗賊
定住盗賊、流浪盗賊
〜〜ここから自分の考察〜〜
ayu-mushi.icon政策の選択肢によって権力を奪われる確率が変わらないが、常に一定の権力を奪われるリスクがある場合
1年後にpの可能性で権力が転覆されるとすると、ある政策の平均的な税収がrだとして、
r + (1-p)r + (1-p)^2 r + (1-p)^3 r + …という等比数列
時間割引率がdだとすると
r + (1-p)d * r + ((1-p)d)^2 * r + ((1-p)d)^3 * r + …
ayu-mushi.icon長期的思考と短期的思考を対比させて高税率・低成長と低税率・高成長を対比させたいなら、税収rは時間の関数にする必要があるか
$ \Sigma_t (r_t ((1-p)d)^t)
$ r_1を低くしたことで、$ r_{100}が高くなることがありえる
税率だから、税率aと経済全体のアウトプット$ Y(a, t)をかけて $ a \times Y(a, t)と表したほうがいいかも
$ \Sigma_t (a \times Y(a,t) \times ((1-p)d)^t)
ayu-mushi.iconいや転覆されたらそのあとはゼロになるんだから、総和じゃおかしいのでは
$ a \times Y(a,t) \times (1-p)d (a \times Y(a,t)\times (1-p)d(a \times Y(a,t) \times (1-p)d (\dots)))
いや、この式の掛け算を分配すれば期待金額は一緒になるからいいのかな
期待金額だけで考えるのはリスク回避性を含めないからおかしいけど
たぶんこの辺はシムシティみたいなゲームにしたらわかりやすいきがするね
ayu-mushi.icon選択肢によって権力を奪われる確率が変わる場合
A: 権力は保たれるけど低成長な政策
B: 権力を保てないけど高成長な政策
この政策の場合は転覆確率がq, 平均税収が l になる
l + (1-q)d * l + ((1-q)d)^2 * l + ((1-q)d)^3 * l + …
q > p, l > r
権力が不安定だけど圧政をすると転覆確率が上がるという場合と、権力が安定な場合とだとどっちがいいんですか、みたいな問い
前者がいいというのが民主主義っぽい議論、後者がいいというのがヤーヴィン説
でも CEO が株主総会の決定で入れ替わることは認めているわけだから、ヤーヴィン理論も前者の要素を含んでいるとも考えられるのでは?
もし仮に権力の安定性が少ないとしても、どの政策をしても安定性が変わらないと仮定するなら、ヤーヴィン的な議論は当てはまらなくなる。まあそういうことはもっともらしくないけれど。
なるべくどの政策をしても転覆確率pが一定になるように反乱を計画する反乱軍を作るとか
仮に権力がすでに安定でも、もっと安定にすることによる利益があった場合はどうか。そういう利益は収穫低減するものなのか。→まぁそうなんじゃない?
「権力がなんらかの外的な理由で不安定な政体は、権力を保つことと経済成長することの間のトレードオフに直面することが多いけれど、安定性による利益は収穫低減するので、権力がなんらかの外的な理由ですでに安定的になっている政体は、『高成長だけど今よりちょっと権力が不安定になる政策』『低成長だけど今よりちょっと権力が安定になる政策』の間の選択で前者を取りやすい」
複数権力者が居る場合はすべての税収が1人に入るわけではないので、シェア (税収の分け前の分配の比率) s みたいな概念を入れたほうがいい
$ \Sigma_t (s \times a \times Y(a,t) \times ((1-p)d)^t)
s: 税収の取り分の比率
a: 税率
Y(a,t): 経済全体のアウトプット
p: 単位時間あたりの転覆確率
d: 時間割引率
t: 時点
コスト1単位あたり、Yや1-p, sはどれくらい上げることができるのか
そもそもsを比率で考えるべきなのか
多分安定性 1- p は、コスト1単位あたりの増加率が収穫逓減するだろうと考える
1 - p = 25%から1 - p = 50%にするほうが、1-p = 50% から 1- p = 100%にするよりコストが低い
1単位が何倍という単位でいいの?
自分のシェアが減るけど全体のパイが増える政策、自分のシェアが増えるけど全体のパイが減る政策
転覆されることはシェアがゼロになることというふうに表せる。シェアを時間の関数として表した方がいいかも。
シェアが1%で税収全体が1000円だとすると、自分の取り分は10円。自分のシェアを2%に増やすこと(2倍にすること)による利益(= +10円)は、税収全体を2000円にすること、つまり2倍にすることの利益 (= +10円) に等しい。
1時点における利益$ s \times a \times Y(a,t)を増やすには、シェアsを2倍にしても、税率aを2倍にしても、経済全体のアウトプットY(a,t)を2倍にしても自分の得られる利益としては同じ
逆に言うと、それをしたときの税収全体の減少率が1/2以下にならない限り、自分のシェアを2倍にする行為をすることは得
おそらくもともとシェアが小さい人にとっては、自分のシェアを2倍にするほうが、税収全体のパイを2倍にするよりかんたん
なので、シェアが1%の人にとっては、全体の利益を増やすより、政治をやって自分のシェアを増やすことに費やしたほうがコスパがよさそう
これは会社でも、社内政治をやって給料を増やすほうが、会社全体の利益を増やすより得みたいな理屈にできそう
GDPを2倍にするより、いままで50%の取り分を持っていた権力者がクーデターを起こして100%の取り分を取るようにするほうがやっぱりかんたんそうな気がするので、取り分が大きいほど全体の利益を気にかけるという話はどうなのか
60%からさらにシェアを2倍にすることはできないので、60%から自分の収入を2倍にしたかったらGDPを2倍にするか、GDPとシェアをそれぞれ$ \sqrt{2}倍するなどするしかない
この議論は税率aについても適用できる。政府は、いくら経済成長 Y がそのことで減るとしても、1/2以下に減らない限り、税率 a を2倍にすることが自己利益になる。
ここで取り分 s の (意図的な) 変化をなるべく難しくすることで、権力者を全体のパイの増加に集中させることができる
経済全体のアウトプットY 以外の変数の変化を難しくすることで、権力者が経済成長させる以外の方法で得することができないという方向に仕向ける
権力者が税率 a の操作をするのが難しい場合も同様
税率がすでにラッファー最大ならそれ以上は操作しても権力者にとって意味ない
政策による転覆確率 p の変化を妨げる方法は、それを外的な要因によってもともと十分に高くしておくこと
政治権力や取り分sをより平等な方向にするよりも、sの比率を固定し、sを上げようとして生じる争いの余地をなくし、Yを増やす経済成長に集中させるようにするべきというのがカーティス・ヤーヴィン主義?
もし経済全体のアウトプットが政策によってどうこうできる上限に達したらあとは取り分争いをすることに労力を費やすの?
取り分争いによって経済全体のアウトプットが減ると予想されるわけだけど
権力の安定度の収穫低減と似たものが、経済成長にもあったらどうする?
s, a, pが固定されてしまえばあるいは上限に達してしまえばあとはYを上げるしかなくなる、という議論と同じ構造で、Yが固定されてしまえばあるいは上限に達してしまえばあとはs, a, 1-pを上げるしかなくなる、という議論ができるのでは?
成長の限界?
お金による限界効用逓減により、一定以上取り分が入ったらあとはリスク回避で権力の安定度をさらに高める方向に走る権力者とかが居たらどうするのか
1%を2%にするのと、99%を100%にしてさらに権力を盤石にするのとどっちがかんたん? どっちによる利益が大きい?
The State has never been created by a "social contract"; it has always been born in conquest and exploitation. The classic paradigm was a conquering tribe pausing in its time-honored method of looting and murdering a conquered tribe, to realize that the time-span of plunder would be longer and more secure, and the situation more pleasant, if the conquered tribe were allowed to live and produce, with the conquerors settling among them as rulers exacting a steady annual tribute.[6] One method of the birth of a State may be illustrated as follows: in the hills of southern "Ruritania," a bandit group manages to obtain physical control over the territory, and finally the bandit chieftain proclaims himself "King of the sovereign and independent government of South Ruritania"; and, if he and his men have the force to maintain this rule for a while, lo and behold! a new State has joined the "family of nations," and the former bandit leaders have been transformed into the lawful nobility of the realm.
[6]Oppenheimer, The State, p. 15:
What, then, is the State as a sociological concept? The State, completely in its genesis . . . is a social institution, forced by a victorious group of men on a defeated group, with the sole purpose of regulating the dominion of the victorious group of men on a defeated group, and securing itself against revolt from within and attacks from abroad. Teleologically, this dominion had no other purpose than the economic exploitation of the vanquished by the victors.
And de Jouvenel has written: "the State is in essence the result of the successes achieved by a band of brigands who superimpose themselves on small, distinct societies." Bertrand de Jouvenel, On Power (New York: Viking Press, 1949), pp. 100–01.
「政府」の起源をcoordinate(外部性への対処など)に置く仮説とエリートによる搾取に置く仮説について、
ティグリス=ユーフラテス川の流路変更という「自然実験」を通して検証。
ayu-mushi.icon盗賊であるという形容は一定の所有権理論に基づいていないとできない
〜〜ここまで自分の考察〜〜
それでも民主制がいい理由
オルソンはヤーヴィンと違って、定住型盗賊モデルから王政主義を導いていない。
ただし、王政主義を支持するかもしれないという可能性があることは認識し、実際に検討した上で退けている。
王政では、税収最大化をして独占レントを搾取してしまう
オルソンは、二大政党のような大きな党による統治なら「定住型盗賊」と同様の経済成長させるインセンティブを持つと考えているようだ。
(一方で、ロビー活動や零細政党などは移動型盗賊に近い)
//おそらく、二大政党制であれば2つの政党間の取引によって総利益の最大化を謀ることは可能だろう。
それにより、民主制でも長期的な利益を考えた公共財、法・契約制度の提供が可能となる。
また、個々の政治家ではなく民主制全体の体制としての安定性 (法に則って権力が決まる)によって、定住型盗賊になっているという論も与えている。
ayu-mushi.icon個々の政治家レベルでの安定性を見るのか、党レベルでの安定性を見るのか、体制レベルでの安定性を見るのか、という点がカギになるのだろう。
安定性があると経済成長させるインセンティブがあるという理論は、その安定性があるとされる単位が、合理的エージェントとして振る舞うことが必要
なら、党や体制が合理的エージェントとみなせるような振る舞いをするのかという点が重要?
(全然読んでないけど) McGuire & Olsonは、民主政における多数派も定住型盗賊として振る舞うとしている
ayu-mushi.icon集合行為問題は?
さらに、民主制では独占レントを利用して、税収最大化みたいなことをすると (多数派に嫌われ) 選挙で落ちるので、税率が控えめになるって点でもメリットがあると考えているようだ。
定住型盗賊ではパイを増やす型の政体になると予想でき、移住型盗賊では再分配型の政体になると予想できる