世界文学の著名作
仮タイトル
ただし、たびたび喧伝されている「世界最古の長篇小説」という評価は、近年でも2008年(平成20年)の源氏物語千年紀委員会の「源氏物語千年紀事業の基本理念」でも、『源氏物語』を「世界最古の長編小説」と位置づけするなどしているが、王朝文学に詳しい作家中村真一郎による、(古代ラテン文学の)アプレイウスの『黄金のロバ』や、ペトロニウスの『サチュリコン』に続く「古代世界最後の(そして最高の)長篇小説」とする知見や、島内景二のように日本国内にも『竹取物語』や『宇津保物語』などがあるため最古とは認定できないという意見もあり、学者たちの間でも見解が異なる。20世紀に入り、英訳、仏訳などで欧米社会にも紹介され、『失われた時を求めて』など、20世紀文学との類似から高く評価されるようになった。 『ドン・キホーテ』が出版された当初は滑稽本として高い評価を受けており、ドン・キホーテのキャラクターも道化としてのイメージで受けとられた。17世紀初頭には早くも、スペイン本国や南米で行われたいくつかの祭りで、ドン・キホーテに扮した人物が人々の笑いをとったという記録が残っている。 セルバンテスの伝記研究と共に実証的な作品研究が始まったのは、18世紀のイギリスからである。1738年にセルバンテスの伝記が初めて出版されたのを期に研究の気運が高まり、それに呼応する形でスペイン本国での実証研究が始まった。この時代の解釈の特徴は、『ドン・キホーテ』から、騎士道に代表される古き悪習を諷刺し、やがて打倒につながったという道徳観や、批判精神を読み取っていることである。だが19世紀に入ると、これとも全く異なる読み方が登場する。
19世紀の解釈はロマン主義によるもので、ドストエフスキーの解釈が典型的である。彼は『作家の日記』の中で『ドン・キホーテ』を「人間の魂の最も深い、最も不思議な一面が、人の心の洞察者である偉大な詩人によって、ここに見事にえぐり出されている」、「人類の天才によって作られたあらゆる書物の中で、最も偉大で最ももの悲しいこの書物」(ちくま学芸文庫版、小沼文彦訳より引用)と評した。19世紀はこのような、ドン・キホーテの感情を尊重した悲劇的な解釈が主流になったが、現在ではこの見方もP・E・ラッセルなどによって批判されている。
20世紀の文芸評論家ミハイル・バフチンは、ドン・キホーテをカーニバル文学の大傑作であるとして評価している。そしてこの文学の系譜を忠実に受け継いだのが、19世紀のドストエフスキーだと述べた。
2002年5月8日にノーベル研究所と愛書家団体が発表した、世界54か国の著名な文学者100人の投票による「史上最高の文学百選」で1位を獲得した。
世界文学の歴史
こうした、小説自体についての小説といった意味も兼ねた『失われた時を求めて』の画期的な作品構造は、それまで固定的であった小説というものの考え方を変えるきっかけとなり、また、物語として時代の諸相や風俗を様々な局面で映し出しているという点ではそれまでの19世紀の作家と通じるものがあるものの、登場人物の心理や客観的状況を描写する視点が従来のように俯瞰的でなく、人物の内部(主観)に入り込んでいるという型破りな手法が使われ、20世紀文学に新しい地平を切り開いた先駆け的な作品として位置づけられている。