『春の雪』を読む(イの一その1)
『春の雪』を読む(一その1)
学校で日露戦役の話が出たとき、松枝清顕は、もつとも親しい友だちの本多繁邦に、そのときのことをよくおぼえてゐるかときいてみたが、繁邦の記憶もあいまいで、提灯行列を見に門まで連れて出られたことを、かすかにおぼえてゐるだけであつた。あの戦争がをはつた年、二人とも十一歳だつたのであるから、もう少し鮮明におぼえてゐてもよささうなものだ、と清顕は思つた。したりげにそのころのことを話す級友は、大てい大人からの受売りで、自分のあるかなきかの記憶を彩つてゐるにすぎなかつた。 単行本からの引用なので旧かな。今後は文庫から引くかもしれへん 学校が舞台? 学園もの? 友情がテーマ?
日露戦役……日露戦争だナ。学校(たしか学習院)の授業で出たんだな。大日本帝国の勝利!などと教えたのだろうか。いやそれとも、雑談で話題になったのかな? 戦争の話からということは、テーマは「戦争」?あと、この人たちはは軍人になりたいの? 二人の名前が出てきた。「松枝清顕」と「本多繁邦」。むつかしい名前だナ。でもフリガナがふってある。どうやらそれぞれ「まつがえ きよあき」と「ほんだ しげくに」と読むらしい。「松・枝・清・顕」「本・多・繁・邦」それにしても豪勢な名前だ。 「もつとも」? 単行本だと旧かなづかいなんだ。文庫だと、新かなになってる。げ、「よくおぼえてゐるか」だって!「ゐ」なんか出てきちゃったよ! 古文か! いやでも夏目漱石も当時は使ってたし…… 松枝くんにとって、本多くんは親友、そうじゃなくてもいちばん仲良くしてる友達なんだね?
「そのときのこと」? これいつの話なん? ヒントの日露戦争についてググってみました!
byAI
どこで聞いてるのかな? 校庭? 教室? 廊下を歩きながら?
繁邦くん「うーむ、記憶があいまいだなア……せや! 提灯行列があったような……」
提灯行列? なんじゃらほい。何らかのイベントがあったんだね。さしあたり調査中ということで……。 門まで連れられて出た。自宅の門だろう。じゃあ、通りを行列が過ぎたんだ。それを見たんだね。でも「かすかに」で~す
「よくおぼえてゐるか」ときかれたけど、「かすかにおぼえてゐるだけであった」。
ところでそういう松枝くんはおぼえてゐるの?
「あの戦争」日露戦争だよね。日清戦争じゃないんだろうね。「をはつた」おうふ、「おわった」をこう書いてたのか。そんなおはスタみたいな。 日露戦争が終わったのは、「1905年」!なので、清顕くんと繁邦くんは「1894年」うまれくらいかな?え、2025年のいま生きてたら131歳だ! ひいひいおじいちゃんくらい? 著者の三島由紀夫って、1925年生まれじゃなかった? なんで生まれる31年前のこと書いているの? というかこの小説、1965年、40歳のときに書いたんだよね? そのときすでに81年前じゃない? いまの80年前なんて、1945年だよ。昔! あとこれはイタロー.iconの正確だけど、1895年生まれにしてほしかったかな、それだと1895→1905→1925→1945→1970→……とか、スッキリするのになあ。え? 自分だけ? 「もう少し鮮明におぼえてゐてもよささうなものだ」と清顕くん思う。たしかに、っていうか11歳のころの戦争体験なんて絶対覚えてるでしょ! ふつう! 大江健三郎なんて、1935年生まれだから、終戦時に10歳だった。その体験が彼の文学の出発点だったのに! 繁邦くんはなんでかすかにしか覚えてないの?
「したりげにそのころのことを話す級友」。『カラマーゾフの兄弟』でも出てきたなあーそんな子供! その子も歴史の知識をしたりげ披露してたな。まあ子供だったからかわいいけどね。なるよね、したりげ。あるある。で、いま気づいたけど、この人たちいまは何歳なの? 学校っても、中学生? 高校生? 大学生? 「級友」っていってるから、高校生かな? 中学生だったら、3,4年前のことを忘れかけてるってことになっちゃうし!
「大てい大人からの受売りで」。「大てい」ってなに? 「大抵」? いやふつう漢字をひらいても「たいてい」じゃない? 「たい抵」よりはわかるけどさ!
大人からの受売りっていっても、あれじゃん、子供にはなかなかわからないでしょ。戦場いってないし。太平洋戦争みたいに沖縄戦とか空襲とかなかったんでしょ? たしか大陸や海洋で行われた。ふつう、直せつ経験できないよ。 ところで、「したりげだ、受売りだ、彩ってるにすぎない」って感じて思ってるのって、誰? 誰が語ってるの? ぼくらのドストエフスキーなら、作者が出てきたり、手記の内容ってことになってるけど。地の文とセリフがつながってない? 自由間接話法ってやつ? ? 「自分のあるかなきかの記憶を彩つてゐるにすぎなかつた」。
イタロー.iconもおばあちゃんから戦争の話をきいたくらいだから、ふつうのことじゃない? 直接きいたなら、或る意味体験じゃない?
親とか先生、近所の人から、戦争の物語をきいてるんでしょ? それで記憶を補填してる。「彩つてゐる」って表現、美的だな。旧かなだと、なんか雰囲気あるねー。
「したりげ君」たちも、「記憶」、あるかなきかなんだ。まあしゃあない。そう教えられたんだし。大事にしてこうぜ、記憶。
本多くんは、したりげに知ったかしないんだね。それも或る意味「美徳」かな? それともそういう「性格」なのかな。 ここまでのあらすじまとめ:
清顕くんは日露戦争を覚えてるかと繁邦くんに訊いた。繁邦くん、かすかにしか覚えてない。もうちょっと覚えてたっていいのに。まあでも、ほかの友達は大人から教わったことを自分の体験みたいに話してるだけだしなあ。と清顕くん?は思った。
え、疑問点多すぎ。これどうなるの? どんな話になるの? 果たして、清顕くんと繁邦くん、二人の関係は? 運命やいかに?