文章産出のためのQNKS
文章産出のためのQNKSとは
簡易モデル
QNKSとは「問いを立て、(情報を)抜き出し、組み立て、整理する」という思考のプロセスの頭文字をとった用語である。この概念を最も簡略に図式化すると下図のようになる。(図1)
https://scrapbox.io/files/6094d602474753001cc21afd.png
図 1QNKSの簡易モデル
文章産出を開始するためにはまず[Q:問いを立てる]必要がある。本稿も“書くことが苦手な子が多いのは、統合的でダイナミックな方略的知識の欠如に起因するのではないか”という問題提起から初めたように、文章産出活動は「問い」を出発点かつ、柱として展開される。また、文章産出は本稿のような明確な主張を目指す場合もあれば「なぜ〇〇は・・・なのか」といった探索的な問いを投げかけ、展開させることもある。学校教育においてはこの段階は「課題の提示」として経験されることも多い。「この文章を読んでどんな感想を持ったか」「地球の環境問題を解決するために、何が必要か」など、「Q(問い)」は指導者側から与えられることもある。
問いが見いだされたのなら次は[N:(情報の)抜き出し]である。問いに対する答えを練り上げるためには、関連する情報を多く集めてこなければならない。文章の内容が何かを解説する内容であるのなら、説明すべき内容項目を抜けなく配列せねばならないし、文章の内容が読書感想文など自身の思いを述べるものであるのなら対象について想起された自身の感情や思考を隈なく抽出することが求められる。探索的な内容であるのなら、その問いの答えに成りうるものを抽出する必要がある。
情報が集められたのなら次は[K:(集まった情報群を)組み立てる]が求められる。単に箇条書き的に羅列された情報群の関係性に基づいて分類したり、論理関係に基づいて配列したり、重要度に基づいて取捨選択したりしながら、情報を構造化していく。
構造化は[S:整理された状態]を目指して行われる。ここで「整理された状態」とは、“何も知らない他者がみても意味構造を理解できる状態”と定義する。文章産出の目的は「他者に自己の思考を伝えること」であるため、ここを目指すのは当然である。Sの段階を明示的に設定することで、誰に向けた、何のための文章産出かということをゴールにプロセスを進めるという意識を持ちやすくしている。
Sの段階まで行くことができれば文章産出過程が一巡する。次の矢印は「深化」という用語を挟んで再び「問いを立てる」につながっている。過程は一巡して完結するものではなく、一巡目に構築した文章構造を読み返し、さらなる問いを生み、二巡目三巡目とスパイラル状に連続させていきながら、推敲していくものであると考えられる。よってQNKSモデルでもそのことを表現した。
また、こういった思考プロセスを有効に活用するためには、自身の文章産出過程が今どのように進んでいて、どのような状態にあるのか、次に求められることは何か、といったことを自己モニタリングすることも求められる。これを促すために、QNKSでは各過程で書くべき表象を明確に伝え、子どもたちは自身の文章産出過程の進行に合わせてその表象をノートに外化しながら作文を進めていく。 次はこのモデルを先行研究と比較しその優位性を述べる