フラワー(1980)の研究
先行研究から(Hares & Flower (1980), Flower & Hayes(1981)
(Hares & Flower (1980), Flower & Hayes(1981)は文章を書く時の書き手の心内で起こっている活動を発話思考法を用いて分析し、モデル化した。そのモデルでは文章産出過程は3つの過程に分けられており、それぞれ「課題環境」「書き手の長期記憶」「文章産出過程」である。これらは相互に影響しあっている。「文章産出過程」については、さらに4つの下位過程「プラニング」「文章化」「再考」「モニター」が想定され、文章を書くときには、書くための計画を立て、実際に文章化し、それを読み直すという作業を自己モニターしながら行っていることが示されている。
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このモデルは文章産出研究における代表的なモデルであり、その後の方略研究の基礎となっており、基本的にはQNKSもこのモデルを踏襲するものとなっている。以下QNKSの視点でこのモデルを説明する。
Q:課題環境
まず「Q(問いを立てる)」段階であるが、これは「課題環境」に対応する。Qにおいて“トピック”や“読み手”の情報、またその問いに対して自身の思考を表明する動機などが意識される。
N:書き手の長期記憶
次に「N(情報を)抜き出す」段階は、課題に関係する記憶を抽出するという特性から、「書き手の長期記憶」に対応する。Flower & Hayes(1981)のモデルは、課題を与えられた場で文章を生成する場面の研究であるが、文章産出の実際の場面では、記憶だけでなく、他者との対話や、文献からの情報も使用することができる。そういった様々な媒体から情報を揃えることが「N(情報の)抜き出し」で想定されていることであるので、Flower & Hayes(1981)のモデルよりも意味する範囲は広いが、本質的な機能は同じであると考えられる。また、この過程に含まれる「文章を書くことの計画についての知識」とは、QNKS全体の知識そのものであると考えられる。この知識があるからこそ、次の「文章産出過程」のはじめの段階である「プラニング」に移行することができるのではないか。課題を見てなんとなく関連する考えは浮かぶが、それをどうやって文章化したらいいのかわからないという躓きは、この「文章を書くことの計画についての知識」の欠如に起因すると考えられる。
K:プラニング(文章産出過程)
「K(集まった情報群を)組み立てる」段階は、「文章産出過程」の最初の段階である「プランニング」に対応する。プラニングでは、生成、組織化、目標設定などが求められると表記されているが、まずその「生成」が問題となる。「K(集まった情報群を)組み立てる」段階ではその「生起」にスムーズに移行するためにその段階で外化すべき表象を指定している。(・・・参照)こうすることによって、生起の段階で何をすればいいかという迷いに明確な答えを与える。また、その表象はボーン図のような形をとっており、「背骨」と「お肉」という概念で具体と抽象を区分けし、その配列順で論理展開を意識させるなど、「組織化」の補助をすることにもなっている。
S:文章化(文章産出過程)
「S(整理する)」の段階は、「K(集まった情報群を)組み立てる」の段階で組織化した情報群を文章化していく過程であるため、文字通り「文章化」に対応する。
S→Qのスパイラル進行:再考
では「再考」はどこに当たるのかといえば、QNKSの2周目に当たる。「S(整理する)」の段階で表彰した文章を読み直し、そこから新たな課題(Q)を見出して、2周目のQNKSへと入る。「課題環境」の中に示された「それまでに書かれた文章」から新たなQを見出すのである。
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