第242回例会「負債とは何か」
#例会
会計学における負債概念の特徴付けをおこない、日常的な「借り」の概念や法律言語上の債務からの独立宣言を果たす。会計哲学あるいは経営哲学。発表者はふかくさ。
谷口一平.icon 谷口一平「非常に面白い発表だった。会計認識論において複式簿記は、「借り」という物自体を認識するための超越論的カテゴリーとして捉えうるが、このような“主流派”の経営哲学に対し発表者の構想は、複式簿記を可能にする根拠としての「負債」そのものから会計人(会計する主体)の認識を演繹しようという野心的な試みであり、資産(所有)をむしろ「借り」の側から基礎付けようとする。このとき「負債」を扱う会計合理性は、経営の言語・法(税=債務)の言語・倫理の言語、それぞれの言語ゲームの橋渡しをしつつも、それ独自の領域を明らかにしたと言ってよい。発表者は 西澤(2005) の議論を前へ進めつつ、「経過勘定」及び「引当金」に着目することによって、「負債」独自の“時間性”の観点を導入した。すなわち時制のずれこそが静的体系(形而上学)としての複式簿記に対し、「負債」そのものの存在論を展開する契機になるという立論であり、この着眼点は秀逸である。ぜひ、本発表を論文にまとめられることを期待する。なお、私は商学には門外漢であるが、個人的には残高試算表・貸借対照表・損益計算表書の関係もわかり、財務諸表の意味も理解できて大変勉強になった。」
200.icon 200「貨幣によって外延化・数値化された借方の資産に対して、倫理的な恩義や形而上学的な価値、あるいは法的制度によって特殊なあり方を強いられる負債について分析することで会計の哲学的な側面を浮き彫りにしようといった内容。要旨以外にも事実の認識のみにしか有用性がなく『豆数え』などとも揶揄される会計の仕事が逆にブランディングとして作用することや、会計学は経済現象の認識のためにカテゴリー(会計方法)を工夫するが、それによって逆に会社の経済状況を変化させてしまう等、発表者の語るエピソードを交えて経営と会計の奇特な仕組みを楽しく知ることができた。」
ふかくさ.icon ふかくさ「
今回の発表は、discordで開催している分科会で学んだWP_Ch4_小論文における主題の擁護における基本的な小論文の構成 BASIC ESSAY STRUCTURE を踏襲した原稿を作成した。
発表後、会計学に詳しいと思しき山括弧塾の人(yshmt_suitmanさんから多数のご指摘・批判を受けた。私の実力不足のため、即答はできないが、見直しをすると共に応答の必要を感じている。
(メモ)yshmt_suitmanさんからの指摘|ふかくさ https://note.com/wwmd/n/nd1ada65364bb
」
↓発表原稿PDF
負債とは何か?_PhD242.pdf https://scrapbox.io/files/65a204ac21b6d20023160dca.pdf
https://scrapbox.io/files/65a279a2a7522e002354d882.jpg