偏微分方程式
「機械系数理工学」
機械工学で現れる様々な微分方程式を系統的に解く手法について,具体的な例題を通して学ぶ.特に,ばね・マス系の振動問題と弦や膜の振動問題を介して,行列の固有値問題から,微分演算子に対する固有値問題を説明していく.そして,固有ベクトルが固有関数の概念へと置き換わり,ベクトルを固有ベクトルで分解することが,関数を固有関数で分解することに対応しているのを理解する.特に,三角関数の基底で表現される通常のフーリエ級数展開に加え,2階の線形常微分方程式に現れる様々な特殊関数が,関数空間の直交基底となっていることを理解することにより,弦の振動と膜の振動の違いなどを理解する.また,そのような解析を行うために必要な数学的スキルを身につける.
講義内容(14回)
1. 機械工学で現れる微分方程式
2. 行列の固有値と固有ベクトル ( 固有ベクトルと変換の幾何学的意味 )
3. 振動問題における固有値と固有ベクトル( N個の粒子のバネマス系における固有
値問題)
4. 振動から波動へ ( 行列の固有値問題から演算子の固有値問題へ )
5. 固有ベクトルと固有関数の直交性(対称行列と対称演算子の固有値問題)
6. 直交関数系とSturm-Liouville型微分方程式1 ( 微分方程式の固有値問題 )
7. Sturm-Liouville型微分方程式2 ( 線形作用素と種々の直交関数系 )
8. フーリエ級数と直交関数展開
9.弦の振動と膜の振動1(1次元波動方程式と軸対称波動方程式)
10.弦の振動と膜の振動2(偏微分方程式の固有値問題としての解法)
11. フーリエ級数とフーリエ変換
12. フーリエ変換による微分方程式の解法
13.偏微分方程式の分類(波動方程式,熱伝導方程式,ポアソン方程式)
14. 期末テスト
第一講
弦の振動、膜の振動は同じ周波数なら同じ音に聞こえるか?
答えはNo、なぜか?
これを理解する
弦と膜は基本モードが同じでもn=2,3,となるとモードが違うので音も変わる
行列の固有値問題から、微分演算子に対する固有値問題を説明する
そして、ベクトルを固有ベクトルで分解することが関数を固有関数で分解することに対応することに対応することを理解する
2階の線形常微分方程式に現れる様々な特殊関数が関数空間の直交基底となっていることを理解する
弦の振動を変数分離法で解く
実は変数分離は微分演算子の固有値問題なのでうまくいく
第二講
定常の熱伝導方程式を変数分離で解く
フーリエ変換でcosなどをかけて積分しているのは、その基底方向の射影を求めている
無限の空間では可算個の組み合わせじゃ表せないのでフーリエ変換も実は無限個の規程で表している
テクニックとして、境界条件を満たす解を1つ見つけて、引くと同時境界条件になるということがある
バネ-マス問題を行列の固有値問題として解く
第三講
バネ-マス問題は固有値問題に帰着できる
目で固有値が書きくだせる
第四講
対称行列に関して異なる固有値に対する固有ベクトルが互いに直行することを証明する
固有値、固有ベクトルを求めることで、行列の変換の幾何学的意味がわかる
量子力学では、演算子作用が観測を表す量子力学でスピンを行列で表すのは複素数を固有値にもつ実行列は回転を表すのに都合が良いからである
第五講
行列で複素数の固有値が出てきたときは、とりあえず固有値問題のようにして解く
いくつかの行列がかかっている形で出てくるが、虚数は見えないので1つずつ理解することは不可能
回転行列の固有値問題と比較して解く
空間は押されたら戻るという性質があり、バネます振動と同一視できる
よって、波動方程式が導かれる
Nこのバネマス問題を解く
Nが無限までいくと、Aが微分演算しを表すようになる
対称行列に対応する対称演算子が出てくる
偏微分方程式は、直行関数が違うだけで、統一的に見れるようになる
第六講
Nを無限大にすると波動方程式が出てくる
波動方程式を考察すると、水の中に小さな気泡が分散しているときの音速は音速よりも遅いことがわかる
第七講
フーリエ展開は規格化された基底で展開しているわけではないので係数に変なのが出てくる
偏微分方程式が変数分離で解けるのは演算子の固有値問題としえちゃんとしているから?
第八講
前回までの復習
第九講
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「変分法(数学1B)」
1 変分法の考え方
1.1 前説
・最適な関数を見つける
決める条件:全体として最適に
1.2 問題の形式
1.3 自明な例
1.4 オイラーラグランジュ方程式
2 いくつかの境界条件
2.1 自由境界条件
2.2 曲線上に束縛された境界
2.3
3
4 拘束条件がある場合
4.1 ラグランジュの未定乗数法
4.2 条件付き変分問題
4.3 等周問題
4.4 等周問題
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「授業(数学2B)」
10.フーリエ変換と偏微分方程式
有限区間の偏微分方程式
・波動方程式
木関数として、-L~Lに拡張すると、フーリエ正弦展開が使える
境界条件は常に満たされる
・熱伝導方程式
拡散の振る舞いを記述する
2種類の境界条件が考えられる
・変数分離法
微分方程式は線形の演算子なので、たまたま変数分離で基底が満たされる
詳しくは機械系数理工学で
解全体は線形空間をなす
変数分離でこの基底を求める
無限区間の偏微分方程式
・無限に長い棒の熱伝導
フーリエ変換を考える理由として、微分が掛け算になることが挙げられる
たたみ込みの定理を利用する
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「Chap2 偏微分方程式」
1 偏微分方程式
偏微分を含む方程式を偏微分方程式と呼ぶ
1.1 偏微分方程式の型
数値計算の方法に注目すると、偏微分方程式は次の3つに分類される
(1)楕円型:ポアソン方程式
楕円型の微分方程式は時間微分項を持たない
境界値問題として解かれる
離散かして得られる連立一次を解くことにより数値解が得られる
(2)放物型:熱伝導方程式、拡散方程式、移流拡散方程式
初期値問題として解かれる
現在のタイムステップの値を使って繰り返し直後の値を求める
陽解法では連立一次方程式を解くことなしに直接値を決められる
(3)双曲型:移流方程式、波動方程式
初期値問題として解かれる
拡散項がないため、安定な解を得るのが難しい
2 偏微分方程式の解析解
解は境界条件によって拘束される
境界条件によって解が特殊な形でかける場合のみに解析的に解くことができる
2.1 変数分離法
解の多変数関数が1変数関数の積で表せるときには偏微分方程式を複数の常微分方程式に分けることができ、これを変数分離法と呼ぶ
2.2 変数変換
変数を別の変数に置き換えることを変数変換と呼ぶ
変数変換によって偏微分方程式が常微分方程式に変形できることがある
3 熱伝導方程式の2つの解
上の2つの方法により熱伝導方程式の解を求める
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「偏微分方程式入門-桂田祐史-」
第0章
偏微分方程式は解析学の最も重要なテーマであると言えるが、幾何学とも関係が深く、また数学以外の他の諸科学にも広範な応用を持つ
偏微分方程式の代表的な3つの型(放物型、楕円型、双曲型)からそれぞれ典型的なケースを取り上げ、その性質を調べる
理解の助けになるような様々な話をするが、幹となるのはFourierの方法、最大値原理、エネルギー保存則で、問題として適切性である
(1)波動方程式
(2)熱伝導方程式
(3)Poisson方程式
この3つは次に述べる理由から良い代表例である
・PDEを3つに分類することができるが、それぞれの典型例となっている
・簡単であるため取り扱いが容易だが、本質は失われていない
・物理的な意味を持ち、歴史的にも早い段階で登場した
この講義ではFourier解析を主な道具として3つの方程式を解析する
Fourier解析の初歩は付録Bにまとまっている
PDEの研究には、
(1) Fourier解析
(2) 変分法
(3) 積分方程式
という3つの道具が重要である
これらの道具は数学的に厳密に取り扱うのが難しいので、それを遂行するため、Lebesgue積分論や関数解析ができた
PDEとは無限次元空間における方程式であり、その厳密な取り扱いには無限次元空間の解析学の誕生が必須であった
第1章 波動方程式
1.1 波動方程式とは
MaxwellはMaxwell方程式を変形したら、偏微分方程式の形になるから真空中を伝播する電磁波の存在を予言した
どんな波動現象でも波動方程式で記述できるだけではなく、薄い板の振動は4階の偏微分方程式に従う
1.2 1次元空間における波動方程式
・ダランベールの解
f(x-ct)は正方向に速さcで進む波、g(x+ct)は負方向に速さcで進む波を表している
ダランベールはこれをどのように見つけたのか?ということは、微分作用素の因数分解に隠されている
・初期値問題、ダランベールの波動公式
解は無限に存在し、解を1つに特定するためには他の条件を追加しなければならない
代表的なものは特定の時刻における状態を指定する条件である
波動方程式は2階なので、初期条件が2ついる
・依存領域、影響領域、伝播速度
ダランベールの波動公式を見ると、上半平面の任意の点を任意に固定したとき、その点でのuの値は区間とct0だけの距離内にある点に依存して初期値とは一切関係ない
この区間を依存領域という
逆にx軸上の点を固定すると、この点での初期値によってuの値が変換する集合は影響領域という
波動方程式について初期値の伝播速度はcであると言える
1.3 R^nにおける初期値問題
空間変数xの属する空間の次元を1より大きいnとすると難しくなるが、xが動く範囲が全空間R^nである場合はやや単純で比較的容易に扱うことができる
具体的には、Fourier変換を用いて初期値問題の解を得ることができる
Fourier変換は無限領域における積分で定義されるので積分の収束を真面目に問題にするとかなり面倒だが、ここではその点には目を瞑って形式的計算議論をする
・Duhamelの原理
非同次の初期値問題を解くために、その特別な場合である3つの初期値問題を考える
・Fourier変換による解の表示
Fourier変換は非常に強力だが、広義積分で定義されていて、厳密な扱いが少し難しいのでこの講義ではあまり扱わないことにする
・R^2, R^3における初期値問題の解の簡単な公式
Fourier変換を用いた解の公式では解の性質を調べるには若干使いにくいところがあるので、よりわかりやすい解の公式を紹介する
・Huygensの原理
波動方程式の解は空間の次元によって性質がずいぶんと異なる
1.4 初期境界値問題
障害物のない波動現象はつまらないので、初期値境界値問題を考える
・問題の設定
有限区間における波動方程式の問題を考える
解を1つに定めるには初期条件だけでは不十分で、境界条件と呼ばれる条件を指定することが多い
初期条件と境界条件を満たす微分方程式の解を求めよという問題を初期値境界値問題という
・解の存在
この問題の解の存在については、Fourierの方法を用いて解が構成できる
・解の一意性
波動方程式の解の一意性の証明にはエネルギーを導入してその保存則を利用する
証明は全く数学的であるが、物理的な意味を持つ補助関数を導入するところが面白い
熱伝導方程式の古典解の一意性を証明するために最大値原理を導入するが、波動方程式については最大値原理のような定理は存在しない
1.5 頭の中の整理・確認
1.6 微積分の問題
第2章 熱方程式
2.1 1次元熱方程式の導出
2.2 多次元熱方程式の導出
日常の熱現象は三次元なので、R^nにおける熱方程式がどんなものであるか興味が湧く
2.3 初期値境界値問題、適切性
・定式化
・適切性
アダマールは適切性という概念の重要性を提唱した
問題が適切であるとは、問題の解が一意的に存在しかつ解がデータに連続的に依存することである
・古典解
適切性の議論をするために考察する対象とする解を明確に定義する必要がある
偏微分方程式は難しいので、解の存在を示すためにしばしば次のような論法を使う
まず、もとの方程式の意味を緩めた弱解または広義解を求めて、後からそれが元の方程式を満たすことをチェックする
常微分方程式の問題の適切性を示すのは簡単だが(一般的な定理がある)、偏微分方程式の問題の適切性を示すのはかなり難しい
一般的に議論するのは絶望的で、ここの偏微分方程式のタイプに応じた証明が必要になる
1つの方程式の問題で、解の存在を示すための方法と解の一意性を示すための方法がまったく異なってしまうことも珍しくはない
ここで考えている初期値強化一問題も、解の存在はFourierの方法で示せるが、一意性やデータに関する連続性は最大値原理という定理を用いる
2.4 最大値原理と解の一意性
2.5 解の安定性、初期データへの連続的依存性
2.6 Fourierの方法で解を求める
2.7 Fourierの方法で解を求める(解であることの確認)
2.8 Fourierの方法とスペクトル分解
なぜFourierの方法で問題が解けるのか?
熱伝導方程式の初期値境界値問題はFourierの方法で解を構成することができたが、それは線形代数でおなじみの「実対称行列は実直交行列で対角化できる」という定理や、定数係数線形上微分方程式の初期値問題の解法と深い解法にある
2.9 非同次問題
2.10 Neumann境界値問題
2.11 解の漸近挙動
2.12 紙芝居
2.13 エネルギーを用いた議論
2.14 変数変換の例
2.15 この後の熱方程式の勉強
2.16 Fourier級数の問題
第3章 Laplace方程式、Poisson方程式
3.1 イントロ
3.2 例
3.3 最大値原理
3.4 円板領域におけるLaplace方程式のDirichlet問題
3.5 調和関数の積分表示、Laplace作用素の基本解、Gaussの球面平均定理
3.6 解の存在証明
・解の存在証明はかなり難しいことが多いが、そこには豊かな数学がある
・解の存在証明をしようとすると、関数解析の必要性が強く感じられるようになる
・解の存在証明は抽象的なものになりがちで、解についての具体的な情報や性質を得にくいことが多い
特に工学的な観点からは、数値解法の必要性が高くなってくる
3.7 練習問題
付録A 歴史的なこと
付録B 解析学一夜漬け
付録C 一様収束、広義一様収束
付録D Fourier級数の復習
付録E Fourier変換の応用
付録F 錠微分方程式のGreen関数
付録G misc
付録Fourier解析大全
付録I その他