微分積分学
「授業(1S1A)」
εδ論法、極限、級数展開、積分
精密さを追求する学問、微小な量を完全に理解することで巨大な量も理解することができる
代数学,幾何学とともに,数学の根幹をなす解析学について,その基本的な考え方や方法を学ぶ.力学における運動方程式などに代表されるように,自然界の多くの現象が,微分積分学を用いて記述される.微分積分学は,あらゆる科学技術の基礎となっている.微分積分学は17世紀末に,ニュートンやライプニッツらによって創成された.ニュートンは量の変化の記述に注目し,速度,加速度などの物理量を表現するために微分の概念を導入した.「微分積分学の基本定理」により,区分求積法によって定義される積分は,微分の逆操作であることが,明確に認識されるようになった.
微分積分学では,極限をとること,無限和をとることなどの操作が重要な役割を果たす.このような微分積分学の基礎となる極限の厳密な定義は,19世紀後半から整えられていった.この授業では,「数理科学基礎」で学んだ極限の扱いに基づき,微分積分学の基礎と応用を学ぶ.具体的な項目は以下の通りである. S2タームの「微分積分学①」で項目1,2を扱い,Aセメスターの「微分積分学②」で項目3~6を扱うことを目安とするが,担当教員によって,順序や内容に一部変更が加えられる場合がある.
1. 一変数関数の微分 (微分の基本性質,テーラーの定理,テーラー展開)
2. 多変数関数の微分 (偏微分と全微分,合成関数の微分の連鎖律)
3. 多変数関数の微分(続き)(高階偏微分,多変数のテーラーの定理とその応用)
4. 一変数関数の積分 (区分求積法,微分積分学の基本定理)
5. 多変数関数の積分 (多重積分と累次積分,多重積分の変数変換公式)
6. 無限級数と広義積分 (関数列の収束,広義積分)
実数の連続性に基づく微分積分学の基礎の厳密な展開は,2年次Sセメスターの総合科目「解析学基礎」で学ぶことができる.将来,本格的に数学を使う分野に進学しようという場合は「解析学基礎」によって微分積分学の理論的基礎を修得することをすすめる.なお,「解析学基礎」は1年次Sセメスターでも履修することができる.また,2年次Sセメスターの総合科目として,「微分積分学」の直接的な続きにあたる「微分積分学続論」,および「微分積分学」で学んだ事項の応用にあたる「常微分方程式」,「ベクトル解析」が開講される.
S2タームの「微分積分学①」で以下の項目1,2を扱い,Aセメスターの「微分積分学②」で項目3~6を扱うことを目安とするが,担当教員によって,順序や内容に一部変更が加えられる場合がある. 参考のため「微分積分学②」の内容を併せて示す.
S2ターム
1. 一変数関数の微分:
「数理科学基礎」で学んだ関数の極限の概念と一変数関数の微分の定義に基づいて,微分の基本的な性質を論ずる.平均値の定理を用いてテーラーの定理を示し,関数をべき級数として表示するテーラー展開を扱う.
2. 多変数関数の微分 :
二変数関数の場合を中心として偏微分と全微分を扱う.二変数の関数のグラフの接平面,合成関数の微分の連鎖律を学ぶ.また,パラメータ表示された曲線の速度ベクトル,平面曲線の法線ベクトルを扱う.二変数関数の陰関数定理についてもふれる.
Aセメスター
3. 多変数関数の微分(続き):
高階偏微分,偏微分の順序交換ができるための十分条件,多変数関数のテーラーの定理を扱う.また,二変数関数の極大極小問題,有界閉領域における最大最小問題を考える.
4. 一変数関数の積分 :
区分求積法に基づいて定積分の性質を論じる.定積分の区間の端点を動かすことによって不定積分を導入し,「不定積分はもとの関数の原始関数である」という微分積分学の基本定理を得る.また,具体的に不定積分が求められる積分の計算を,広義積分,すなわち,無限区間における積分や区間の端で発散する関数の積分も含めて,主に演習で扱う.
5. 多変数関数の積分 :
二変数関数の場合を中心にして,リーマン積分による多重積分の定義を与える.さらに,多重積分を一変数の積分の繰り返しとして累次積分で表示する.また,ヤコビ行列式を用いた多重積分の変数変換の公式(直交座標と極座標の変換など)を扱い,その応用(面積,体積,平均値など)を論ずる.
6. 無限級数と広義積分 :
べき級数などの関数列の収束,とくに,関数項の級数についての優級数定理,べき級数の収束半径,関数列の一様収束などについて学ぶ.また,極限と微分,積分の順序交換がどのような場合に許されるかを考察する.さらに,広義積分の収束条件について論ずる.広義積分の例として,ガウスの正規分布関数の無限区間における積分を計算する.
1.極限
ε-δ論法、ダランベールの判定法、双曲線関数、双曲線関数の加法定理、
2.微分法
逆三角関数の微分、ライプニッツの微分公式、ロピタルの定理、テイラーの定理、テイラー展開、マクローリン展開
3.積分法
公式、定積分の性質、ウォリスの公式、面積、体積、曲線の長さ
4.多変数関数の微分
偏微分、シュワルツの定理、接平面、全微分の変数変換公式、全微分可能な2変数関数の極値の決定法、ラグランジュの未定乗数法
5.多変数関数の重積分
重積分の性質、累次積分、重積分の変数変換、重積分の極座標変換
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牛腸先生
「じっくり数学(夏学期)」
定義や定理を述べて、それを順番に証明していくというのは教える側にとって最も効率的な方法であるが、これは学ぶ側にとって理解しやすいものではあるとは限らない。
どのようなことを問題にして、どのように考えてそれを解決しようとしているのかという考え方のアイデアをしみじみと理解することが大切。
・微積分学における基本的な考え方(微分)
微分の大きな目標は、関数の様子をよりよく理解できるようになるということにある。
その方法が、一般の関数を多項式の姿に化かして多項式の力を借りて関数の様子を理解するということです。
——1変数関数の微分に関する基本事項——
・級数
いつ無限和が意味があるのかを理解する
-絶対収束と条件収束の違い
-級数の収束判定法
・べき級数(an = cn*x)
どのようなxに対して無限次の多項式の値に意味があるのかを理解する
-べき級数の収束半径
-項別微分積分
-Taylor展開
・Taylorの定理
一般の関数を多項式もどきの姿に化かす
-Taylorの定理
・関数の大まかな様子(その1)
f = P1と近似してx=aの周りでfの様子を理解する
-単調性
-臨界点
・関数の大まかな様子(その2)
f = P2と近似して、x=aのまわりでのfの様子を理解する
-極致判定
———多変数関数の微分に関する基本事項——
・微分の概念の一般化
多変数関数に対して微分の概念を一般化する
-偏微分、方向微分、全微分の違いとそれぞれの概念の関係
・Taylorの定理
一般の関数fを多項式もどきの姿に化かす
-Taylorの定理
・関数の大まかな様子(その1)
f = P1と近似してx = p0のまわりでのfの様子を理解する
-臨界点
・関数の大まかな様子(その2)
f = P2と近似して、x = p0のまわりでのfの様子を理解する
-極値判定
——発展——
・写像の微分
一変数関数の概念をRn→Rmの写像に対してTaylorの定理を一般化する
-Jacobi行列
-合成写像の微分則
・関数の大まかな様子
f = P1と近似してx=p0のまわりでの写像の大まかな様子を理解する
-逆関数定理
-陰関数定理
・条件付き極値問題
曲がった空間上での関数の大まかな様子を理解する
-陰関数の微分
-Lagrangeの未定乗数法
一変数関数の様子をどのように理解するのか
・Taylor展開
Taylor展開を用いて関数を次数が無限大の多項式の姿に化かすというのがアイデアである
・Taylorの定理
無限和の値がきちんと定まらないということや、式の左辺と右辺が食い違ってしまうということが起こり得るので、いきなり次数が無限大の多項式の姿に化かすことを考えるのではなく、剰余項付きで有限次の多項式の姿に化かすことを考える
剰余項は積分による表示とLagrangeの剰余の表示がある
・いつTaylor展開が可能であるか
nがだんだん大きくなるたびに関数fが多項式の姿に化けていく様子を表していると解釈できる
剰余項がn無限大で0に収束するならばTaylor展開が可能である
一般には、勝手な実数xに対していつでも剰余項が0になるとは限られない
また、剰余項=0が成り立つような実数xの範囲を決定することも困難である
しかし、指数関数や三角関数など基本的な関数に対しては勝手な実数でTaylor展開可能であるということを証明できる
このような考察によって多くの関数に対して次数が無限大の多項式の姿に化かすことができるということを確かめられる
・Taylor展開あるいはTaylor展開の利点
例えば、Taylorの定理を用いて多項式の姿に化かすことで特別なアイデアなしに簡単に極限の計算を行うことができる
また、exp(x)に対してTaylorの定理を適用すると剰余項の大きさを評価することで、関数の値を近似計算をすることができる
また、Taylor展開のxのところは掛け算や足し算ができるような数であればなんでも代入して考えることができる
これから、Eulerの公式から、指数関数と三角関数は本質的に同じ関数であるということがわかる
また、正方行列Xも足し算や掛け算ができるような数なので、代入して考えられる
このように行列の指数関数を考えることは定数係数の線形微分方程式を線形代数学の立場から見直す上でとても役立つ
量子力学の世界では、サイズが無限大の行列に対する指数関数が活躍することになる
・近似多項式としてのTaylor展開
fからn次の多項式を引き算したあまりは(x-a)^(n+1)でくくれるような式になっている
(f(x)-Pn(x))/(x-a)^k = がTaylor多項式を特徴付ける式である
逆に k= 0,1,,,nに対して上記を式を満たすのはPn(x)しかないということがわかる
つまり、数あるn次の多項式の中でPn(x)は|x-a|<<1の時に関数f(x)を最もよく近似する多項式であるということがわかる
・Taylor展開を求めるには
直接fのk階微分を計算することでTaylor多項式を求めようとするとすぐに大変なことになってしまう
まずは、exp(x),cos(x),sin(x),1/(1-x)など、直接f(k)を求められる時にTaylor展開を具体的に書き下せるようになるということが何よりも大切になるが、さらに進んで、f(k)を直接計算することが困難な一般の関数f(x)に対してTaylor多項式を求めることができるようになるためには単にTaylor展開の公式を納得するだけでなく、Taylor展開できる関数たちの組み合わせとして表される関数のTaylor展開がそれぞれの関数のTaylor展開からどのようにして計算することができるのかという計算規則を理解することが大切
Taylor展開できる関数の組み合わせとして、「普通に」計算すれば良い
1/h(x)という関数のTaylor展開は1 = h(x)*(1/h(x))という式から、h(x)のTaylor展開から求められる
また、合成関数のTaylor展開は、xのとこにもう1つの関数を入れれば良い
・関数の大まかな様子を調べるには
Pnはn次の多項式の中で関数f(x)に最もよく姿が似ている多項式なので、f(x)の様子を調べたければ、Pnなどの様子を調べれば良いということがわかるのではないかというのがアイデア
まずは、x=aのまわりでf(x) = P1(x)と近似して考えると、単調性がわかる
また、この単調性の評価が正しいかどうかはTaylorの定理から証明することができる
臨界点ではP1が定数関数になってしまうのでxがaからズレた時にf(x)の値がf(a)より増えるのか減るのかといった問題はP2まで近似を上げて考える必要がある
また、P2まで近似を上げることで極値が判定できる
このように、増減表を書いて関数の大まかな様子を理解するということをTaylor展開の立場から再解釈できることがわかる
無限和をどのように理解するのか
・無限和の値がいつきちんと定まるのか
無限和の値がきちんと定まっているのかどうかはパッと見ただけではわからない
考えている無限和が値がきちんと定まる意味のある無限和なのか意味のない無限和なのかということをしっかりと理解する必要がある
部分和からなる数列の極限が存在する時にのみ級数は意味を持ち、その値は無限和の極限であると考えれる。
級数が意味のある無限和のとき、級数は収束すると呼ぶ
級数が収束するための必要条件は、anがn無限大で0になることである
・絶対収束と条件収束の違い
部分和の極限として級数を定義すると、無限和の和をとる順番は部分和という数列により指定されてしまっているが、和をとる順番を取り替えたら、総和が変わるという変なことが起こる
そこで、どのような場合にこうした微妙なことが起こりえてどのような場合には有限和のように安直に扱って良いのかということを理解する必要があるが、それが絶対収束と条件収束という無限和の値の定まり方の」違いとして理解できる
無限和を正の項の寄与と負の項だけの寄与に分けて考える
無限和の極限が存在するためには、S+とS-どちらも発散するもしくは、S+,S-どちらも収束するという2つのパターンしかない
S+,S-どちらも収束する場合は絶対収束するといい
S+,S-が発散するが収束する場合は条件収束するという
絶対収束の条件の言い換えは、|an|の無限和が収束するということと言い換えられる
条件収束はうまいこと有限の値になっているという微妙な場合であることがわかる
この場合は足す順番が本質的であり、足す順番を変えることでどのような実数にでも収束させることができるということが分かる
つまり級数が条件収束している場合には有限和のように安直に扱ってしまうと奇妙なことが起こってしまう
・級数の収束判定法
絶対収束という形できちんと値が定まるための判定条件が知られている
この時のアイデアは等比級数と比較するということすなわち an = M^nとなるような数列の仮想的な公比Mに注目するということ
|an| = M^nなのであれば、これの無限和はM^nの無限和とほぼ等しいはずなので、M^nの無限和が収束するか、発散するかを判定すれば良い
ここで、M^nの無限和は0<=M<=1の時に収束し、M>=1の時に発散することが分かる
このような仮想的な公比Mが見つかればあとはMが1より大きいか小さいかをみることによりanの無限和が収束するか発散するかが分かるだろうというわけです。
このような仮想的な公比の候補としてはan+1/anやan^(1/n)などがある
実際にこのような公比を定めてみると、M < 1ならば絶対収束し、 M > 1ならば発散することが分かる
・べき級数の収束半径
Taylor展開に現れる無限和のように一般項の形がcn*xnというxのベキの形をした級数を冪級数という
x = 1など勝手に一つ値の定まった実数であると考えて、級数の収束判定を適用してみると、仮想的な公比Mに対する条件を
xに対する条件に書き換えることができる
このように定まる実数rをベキ級数の収束半径と呼び、関数の冪級数による表示は収束半径ないおいてのみ意味を持つことが分かる
・べき級数の項別微分、項別積分可能性
Nが無限大のときは、項別微分や項別積分ができるとは限らないということが知られている
一般には成り立たないが、fn(x) = cn*x^nというベキ級数のときには実際に項別微分、項別積分ができることが知られている(あとで証明せよ)
たておば、1/(1+x)のTaylor展開を両辺積分してlogのTaylor展開を求めることができたりする
・交代級数
級数の収束判定法は絶対収束することを結論するようなものだったので、このような方法では条件収束しているような級数に対しては何も言えないという欠点がある
条件収束は、見かけ上(無限大)ー(無限大)が有限になっているような微妙な場合なので条件収束巣領な級数の収束を判定するような一般的な判定方法は知られておらず、個々に対処しないといけない
ところが、比較的よく目にするような形の級数で、絶対収束、条件収束にかかわらず、収束していることがたちどころに分かるというタイプの級数が存在する
今、a1 >= a2 <=,,,でan(n無限大) = 0という数列が勝手に一つ与えられていて、それらが交互にプラマイされていくような級数を交代級数という
交代級数はいつでも収束することが分かる
また、総和Sと部分和Snとの間の誤差が簡単な形で評価できる
多変数関数の様子はどのように理解するのか
基本的には一変数関数の様子を調べるのと同様にして、多変数関数の様子を調べることができる
一変数の場合には接線だったが、二変数関数の場合は接平面というように拡張できる
このような場合でもTaylor展開の一次式による近似を調べることで多変数関数の大まかな様子を理解することができる
・偏微分、方向微分、全微分とは
ある変数以外を定数であるとみなして微分することを偏微分するという
x方向の偏微分係数とはすなわちx方向に動いた時のfの値の変化率ということです
偏微分は具体的な計算を進める上でとても便利な概念なのですが、xやyなどという特定の方向の変化率しか考えないので関数f(x,y)の値の変化率という視点から眺めた場合に概念としてはあまり自然ではないと思われる
そこでより一般にp0 = (a0, b0)として、v = (a, b)方向に極限が存在する時v方向に方向微分可能であると呼ぶ
つまりv=(a,b)方向に動いた時のf(x,y)の変化率ということである
この時勝手な方向 v = (a,b)に対してv方向の方向微分係数を対応させる関数を考えることができますが、この関数をf(x,y)の点p0における微分と呼ぶ
方向微分可能であるということは幾何学的にはp0において全ての方向に接線がかけるということですが、必ずしも関数f(x,y)のグラフ上で接平面が書けるということを意味しない
こうした場合と区別するためにp0において関数のグラフ上で接平面が描けるときに関数f(x,y)は点p0において全微分可能であると呼ぶ
関数f(x,y)の様子を調べるときにはグラフに接平面を描いて調べるということが基本となるので、微積分学が考察の対象とする関数は単に偏微分可能な関数ではなく全微分可能な関数ということである
ただし、実際にこのような偏微分可能性、方向微分可能性、全微分可能性の差が現れるのは偏微分した関数が連続関数にならないような場合であり、滑らかな関数の場合にはこのような微妙なことは起こり得ない
したがって、一度それぞれの概念を納得できたとすれば、あとはこれらの概念の差に神経質になる必要はない
・連続微分可能な関数とは
偏導関数の導関数として二階の偏導関数またn階の偏導関数が定義される
奇妙なことを排除して、多変数関数の様子をある程度統一的に理解するためには単に偏微分可能性を仮定するだけでなく、偏微分した結果得られる導関数の連続性まで仮定すると都合が良いことが知られている
fに対して、一階偏導関数が存在してそれぞれ連続関数となるときに一階連続微分可能な関数とはc1級の関数と呼ぶ
また、何度でも偏微分でき、全ての偏導関数が連続関数となるときに関数f(x,y)は滑らかな関数とか、c無限大級の関数とか呼ぶ
・連続微分可能な関数を考える利点
関数f(x,y)がC1級の関数であるとすると、関数は全備ブウ可能である、すなわちグラフには接平面が描けるということがある
p0におけるv方向に方向微分係数は偏微分係数を用いて表すことができる
一変数関数に対する微分係数という概念のに変数関数の場合への拡張は個々の偏微分係数ではなく、それらを並べた1行2列の行列であると考える方がより自然であることが分かる
また、方向微分係数の定義に戻って、第一近似でf(x,y)の増える量を考察すると、これは、v方向の接線が全て接平面に乗っているということを意味している
また、f(x,y)をC2級の関数であるとすると、偏微分の順序交換ができる
というよりもf(x,y)の二階導関数の値は偏微分する順番によらないということがある
・Taylorの定理
一変数関数のときと同様に、f(x,y)は勝手なp(x,y)、p0=(a,b)に対して、Taylorの定理を満たすような点qがp0とpを結ぶ線分上に存在することが分かる
これらの事実をTaylorの定理と呼ぶ
・近似多項式としてのTaylor展開
Taylor展開から得られるn次の多項式をn次のTaylor多項式と呼ぶ
また、Taylorの定理を用いると、k = 0,,nに対して、|f - pn|/|p - p0| = 0となることが分かる
また、このようなn次の多項式QnはPnしか存在しないということが分かる
つまり、数あるn次多項式の中で関数f(x,y)を最もよく近似する多項式であることが分かる
・全微分可能性について
点p0において、グラフ上で接平面が描けるとき全微分可能であるという、というような直感的な定義をした
ところが、この定義ではそもそも接平面とはなんなのかということがあまりはっきりしない
そこで、微積分学の教科書ではこれまでの議論を逆転させて、全微分可能性を定義する
1次のTaylor多項式と接平面の式を見比べると、P1という1次の多項式こそ接平面に他ならないことが分かる
また、Taylor多項式はk=0,1に対して p0の近くで|f - P1|/|p - p0| = 0となるような1次の多項式として一意的に特徴づけられた
この、「点p0の近くだけを考えたときに数ある1次多項式の中で最もf(x,y)に姿が似ている多項式」であるという性質が「p0において関数f(x,y)に接する平面である」ということを表しているのだと考えて、そうした性質を保証する上の式を、接平面を定義する式であると解釈してしまおうということが考えられた
すなわち |f - Q| / |p - po| = 0というQが存在するときに関数fは点p0において全微分可能であると定義される
このとき一次の多項式Qのグラフとして得られる平面を点p0における関数f(x,y)のグラフの接平面と呼ぶ
ただし、滑らかな関数f(x,y)に対しては関数f(x,y)は勝手な点p0において全微分可能でありQ(x,y)は点p0における関数fの一次のTaylor多項式で与えられることが分かるので、上の定義に基づいて実際に全微分可能かどうかを考察しなければいけない場面に出会うことはあまりないと思われる
・関数の大まかな様子を調べるには(その1)
とりあえず、f = P1と近似すると、臨界点は特別な点であると考えられる
一変数と同じように、p0における微分が0になる点を探せば極値の候補が見つかる
・関数の大まかな様子を調べるには(その2)
臨界点のまわりではP1が定数関数になってしまっているので、点pが点p0からズレたときに関数の値がf(a,b)から増えるのか減るのかといった問題はP2というように近似を上げて調べる必要がある
ここで途中に現れた行列を、関数fの臨界点におけるへシアンと呼ぶ
へシアンは一変数関数の場合の二階の微分係数に対応しているということが分かる
2次のTaylor展開式の様子を理解するためには勝手に一つ与えられた対称行列に対して二次形式によって定まる二次関数の様子が理解できれば良いということが分かる
B=0すなわち、Hが対角行列になるときは二次関数は簡単な形になるので、Fの様子は簡単に理解できる
また、Bが0でない場合にも座標変換をすることで、B=0の場合に帰着させて考えることができる
ただし、平方完成をすることによっても求められる
P2がp0で最小値を取るならば、fも点p0で最小値をとると予想でき、これはTaylorの定理によって証明される
二変数関数のときは少し手間をかけることで一変数関数と同じように極値判定ができる
少し進んだ話題
いろいろな分野で実際に数学を用いていろいろな現象を記述したり調べたりする場合には上記よりも少し進んだ状況を考えることが多いと思われる。
また、これらの変数が独立に動けるのではなく、ある拘束条件を満たすものしか考えないという状況が多いと思われる
このような状況では、拘束条件を満たすような点全体の集合がどのような形になるのかということや、拘束条件のもとで最大値最小値を求めることが必要になってくる
・写像の微分
多項式の力を借りて関数の大まかな様子を調べるという考え方はそのまま写像の大まかな様子を調べるということに一般化することができる
例えば、R2→R3という写像が与えられているとして、写像fを(X(x,y),Y(x,y),Z(x,y))と表すことにすると、それぞれの成分はTaylor展開を考えることができる
よって、X,Y,Zの微分をそれぞれ縦に並べてあげると、Jacobi行列というものが出てくる
これは一変数関数の場合の一次のTaylor多項式の表示式と同様のものであると理解できる
・合成写像の微分則
合成写像の微分則は知っているが、同じようなことを一般的な写像に対しても考えてみる
Rm→Rn→Rlを考える
chain-ruleの右辺第一項は合成関数のyは無視して一変数関数の合成関数と思って微分することに対応している
つまり、xとyという関数のそれぞれの変数の部分にだけ注目して一変数関数に対する合成関数の微分則を繰り返して適用すれば良いということを表していると解釈できる
ここで、合成写像の微分則は写像の微分を用いた表示で簡潔に表せることがわかる
これは一変数関数に対する合成関数の微分則の写像の場合への自然な拡張となっていることが分かる
・逆関数定理とは
関数の定性的な性質はTaylor展開から得られる一次の近似多項式に十分よく反映されているだろうという直感は一変数関数に限ったものではなく、例えばR3→R3に対してはJacobi行列を掛け算することにより定まる写像に十分よく反映されると期待することは自然なことのように思える
実際、こうした期待が正しいということを示すような定理がいくつかあり、逆関数定理もそのうちの1つである
今、R3→R3という写像に対して、勝手に一つ点を撮ってきて、f(x,y,z)=(X,Y,Z)となるような点(x,y,z)がただ一つだけ見つかると仮定してみると、このような状況では写像fによって定義域であるR3の点と値域であるR3の点が一対一に対応しているので逆に(X,Y,Z)に対して、f(x,y,z)=(X,Y,Z)となる点(x,y,z)を対応させるという写像を考えることができる
この写像を写像fの逆写像と呼び、f-1と表したり、変数を明記したい場合にはf-1(X,Y,Z)などと表したりする。
直感的には逆写像を持つとは、(x,y,z)が(X,Y,Z)の関数として逆に解けるということである。このような逆関数が存在するかどうかを考えるときに有効なのが逆関数定理である
例えば、p0という点のまわりでは、Jacobi行列を掛け算することによって定まる線型写像に対しては逆写像が存在するかどうかという問題をJacobi行列が正則行列かどうかという問題に読み替えることができる
さらに、線形代数の知識を用いればJacobi行列の行列式を調べれば良いということが分かる
そこで今、Jacobi行列が正則であると仮定してみると、x,y,zが逆に解けてしまうのが分かる
逆関数定理とは、一次式による近似でx,y,zが逆に溶けてしまうと、p0の近くでは近似なしに(x,y,z)が(X,Y,Z)の関数として逆に溶けてしまうことを主張する定理である
すなわち、一次式の近似に対して逆写像が存在するときには点p0の近くでは元々の写像fに対しても逆写像が存在するということを主張する定理である
・曲がった空間上の関数を調べるためには
点pがRn全体ではなく、Rnの与えられた部分集合Mの中を動くという条件のもと、関数fの極値を考えてみるというのが条件付きの極値問題となる
例えば、単位円上を動くときには曲がった空間M上の関数の様子を調べていると考える方がより自然になる
このような曲がった空間上の関数を調べるためのアイデアは曲がった空間M上の点にパラメータづけをして、調べたい関数をパラメータを用いて表すということである
単位円では、θというパラメータを用いて表すことで、θはR上を動くのでR上で関数の様子を調べる問題に帰着することができる
全く同様にして、曲がった空間M上の各点の周りで適当なパラメータづけをとって考えることができれば曲がった空間上の関数の様子を調べることができることが分かる
曲がった空間M上の各点の周りで適当なパラメータ付けをとって考えることができるかという質問に答えてくれるのが陰関数定理である
・陰関数定理とは
ゼロ点集合Mgが大体どのような形の部分集合になりそうかということを理解することと曲がった空間Mg上の各点の周りでどのようなパラメータ付けができるのかということを理解することが主な目標になる
陰関数定理も、関数の定性的な性質は第一近似した関数に十分よく反映されているだろうという直感を裏付ける定理の1つである
g(x,y)=0という本当の拘束条件を満たす点全体の集合Mgがどのような部分集合になりそうかということをを理解したいのだが、それは難しいのでg(x,y)を1次のTaylor多項式で置き換え、近似的な拘束条件を満たす点全体の集合を考えて、理解が優しい「真っ直ぐな空間」Mg^の様子を調べることで理解が難しい曲がった空間の様子にあたりをつけてみるというのが基本的な考え方である
点pが点p0に近い場合には関数g(x,y)のゼロ点集合は関数g^のゼロ点集合とほぼ同じ形に見えると期待することは自然なことである
すなわち、曲がった空間Mgはp0の近くで、直線Mg^を点p0での接線とするような曲線になっているのではないかと期待することは自然なことである
ここでさらにgのy偏微分が0ではないと仮定すると、近似的な拘束条件はyについて解けてしまう
よって関数g^のゼロ点集合上の点はxでパラメータ付けできるということが分かる
すると、関数gのゼロ点集合は点p0の直線Mg^に接するような曲線であると考えられるわけなので、曲がった空間Mg上の点も点p0の近くではx座標の値を決めるとそれに応じてy座標の値もぴったり決まるようになっているのではないかということが期待される
これらの期待が実際に正しいということを述べたものが陰関数定理であり、定理の内容は
「点p0がg=0,gのy偏微分が0ではないを満たしているとすると、x=aの近くで定義された関数が存在して関数のゼロ点集合上の点Pは点p0の近くでパラメータ付けできる」
と述べることができる
近似的にyについて解けるときは、点p0の近くで近似なしにyについて解くことができるということを陰関数定理は主張している
こうした意味で、g(x,y)=0という式はy=ψ(x)またはx=ψ(y)という関数を陰に定めていると考えられるので関数φ、ψのことを陰関数とよんだりする
陰関数の微分を求めるためにはg(x,ψ(x))=0という式を自分してやれば良い
・Lagrangeの未定乗数法について
陰関数定理の議論より、パラメータxを用いてMg上の点を表すことにすると、点pがMgという部分集合の中に留まりながら、p0の近くを動くとき、f(x,y)という関数はh(x) = f(x,ψ(x))という関数に見えるということになる
よって関数hの様子を調べることによってg(x,y)=0という条件をつけたときの関数f(x,y)の点p0の近くでの様子を調べることができる
h(x)の臨界点を求めるためにはhの微分とg=0という式を連立すれば良いと分かる
この連立方程式を解くと、関数f(x,y)の条件付きの臨界点のうちgのy偏微分が0でないものを全て求めることができる
よって曲がった空間Mg上に特異点が存在しないとき、この連立方程式を解くことで条件付きの臨界点が全て求まる
二通りの連立方程式を解くのはめんどくさいので、工夫ができないかというのがLagrangeの未定乗数法である
λを導入し、x,y,λの3変数であると考えると、xとyが全く同等の立場で扱われていることに注意して、gのx偏微分、y偏微分が0ではないということにかかわらず、連立方程式を解くことにより、f(x,y)の条件付き臨界点を全て求められるということが分かる
また、Fをx,y,λの3変数として、それぞれの偏微分が0であるという式に読み替えられる
・補足
一般化すると、Rn上のいくつかの関数を考え、こうした関数の共通ゼロ点として定まるような図形を考えるということになる
この場合にも陰関数定理を拡張できる
これによりMgという曲がった空間上の点にパラメータ付けをして考えらえる
現代の数学では、Mgのように曲がった空間上に点に適当なパラメータ付けをしてパラメータを用いて微積分をしたりする
このように曲がった空間上で微積分をしてみると、実は微積分の様子と空間の形が密接に関係していることが分かる
こうした関係に注目して、微積分の様子を調べることにより、逆に見えない空間の形を見るということがなされている
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「じっくり数学(冬学期)」
微積分学において、積分に関する部分の大きな目標は、積分の概念をよく理解して、曲線の長さや図形の面積や体積、ものの重心などいろいろな量を積分で正しく表して調べられるようになることです。
——一変数関数の積分に関する基本事項——
・Riemann和の極限としての積分の概念
有界閉区間上の積分の値をリーマン和の極限として定義するRiemann積分の考え方を理解する
-Riemann積分の定義
・微分積分学の基本定理
積分の値を求めるためには被積分関数の原始関数を求めれば良いことを理解する
-微積分学の基本定理
・置換積分と部分積分
置換積分や部分積分の公式を正しく理解して、具体的な積分の役に立てる
-置換積分の公式
-部分積分の公式
・できる積分
系統的に原始関数を求めることができる場合について、その仕組みをよりよく理解して、原始関数を求めることができるようになる
-有理関数の積分と部分分数分解
-三角関数や指数関数の有理式の積分
-xと√xの二次式の積分
・積分の概念の応用
Riemann和の極限としてのRiemann積分の考え方を用いて、曲線の長さや回転体の体積・表面積など様々な量が積分を用いて表せることを理解する
-曲線の長さ、回転体の体積、表面積など
・広義積分
有界閉区間上の積分の概念の拡張として、積分区間が無限に伸びている場合や積分区間の端っこで被積分関数が定義できない場合の積分の値をどのように定義することができるのかを理解する
またこのような広義積分の値がいつきちんと定まるのかということを判定できるようになる
-広義積分
-絶対収束と優関数による収束判定法
——多変数関数の積分に関する基本事項——
・Riemann和の極限としての積分の概念
有界閉区間上の積分の値をRiemann和の極限として定義するRiemann積分の考え方を理解する
-Riemann積分の定義
・有界閉領域上の積分
有界閉区間上の積分の概念を基にして有界閉領域上の積分の値をどのように定義することができるのかを理解する
-有界閉領域上の積分
・Fubiniの定理
多変数関数に対する積分の値を一変数関数に対する積分を繰り返すことで求めることができることを理解する
-Fubiniの定理
・変数変換の公式
一変数関数の積分の場合の置換積分の公式が、多変数関数の積分の場合にどのような形で拡張されるのかを理解する
-変数変換の公式
・広義積分
有界閉領域上の積分の概念の拡張として、積分区間が無限に伸びている場合など積分の値をどのように定義することができるのかを理解する。
またこのような広義積分の値がいつきちんと定まるのかということを判定できるようになる
-広義積分
-絶対収束と優関数による収束判定法
——極限と積分の順序交換——
実際に積分の値を求めるときには、置換積分や部分積分といった方法以外にも、被積分関数をTaylor展開して考えるという方法や、被積分関数が積分変数以外のパラメーたを持つときにそのパラメータに関して微分してやるという方法も有効である
そのためには、積分をする操作と極限をとる操作がいつ交換できるのかということを一度きちんと考える必要がありますが、こうした問題を考えるときの基本的な概念として一様収束という概念がある。
・積分と極限の順序交換
積分をする操作と極限をとる操作がいつ交換できるのかということをきちんと理解して、具体的な積分の計算に役立てる
-一様収束
-極限と積分の交換
-パラメータの関する微分
一変数関数の積分をどのように理解するのか
Riemann積分の考え方を理解するということと実際に積分の値を計算する技術を身につけるということと通して、一変数関数の積分に対する理解を深めることが主な目的になる
Riemann積分の考え方をよりよく理解することにより、曲線の長さや立体の体積などを積分を用いて表すにはどうしたら良いのかということがなっとくできるようになると思う
・一変数関数に対するRiemann積分の考え方
積分に対する理解を深める上で、そもそも積分の値とは何かということを理解することが大勢になる
そのためにはまず、積分領域の性質に起因する問題の起こらない「有界閉区間上の積分の値とは何か」ということを理解することが基本となる
∫fdxは区間a,b上で関数f(x)のグラフとx軸に囲まれた領域の符号付き面積のことである ただし、一般に曲がった図形を考えたときにはその面積の値が幾つになるのかということやそもそも面積が定まるのかということはそれほど明らかではなくなってしまう
そこで積分の値を考えるにあたって、長方形であればその面積についてはっきりしたことが言えるということに注目して、以下で見るように、短冊の面積の極限値として積分の値を定義するのが普通である
x0からxnまで大小関係を満たすような実数を与えることを区間a,bの分割と呼び、分割点の集合を考えることでこのような分割を△と表すことにする そして各小区間におけるxの増分をΔxiと表し、増分の最大値を分割の幅と呼ぶことにする
短冊に現れるそれぞれの長方形の高さを定めるために各小区間の代表点を勝手に一つずつ選んできて、γと表すことにする
このとき、各小区間を底辺とし、f(γiを高さとする長方形からなる短冊を考えると、その面積はこれらを集めたものS(Δ;γ)と表せるが、これを分割と代表点に対する関数fのRiemann和という
以上の言葉の準備のもとで、区間の分割や代表点の取り方によらず、分割の幅を小さくなりさえすればRiemann和の値が共通の極限に近づくとき、この極限値を関数f(x)の区間a,bでの積分の値であると定義する すると、いつ積分の値がきちんと定まるのかということが問題になるが、例えば、fが連続関数であれば勝手な有界閉区間上で積分の値がきちんと定まることが分かる
・微分積分学の基本定理
多項式関数の場合など、特別な場合を除いては定義に基づいて積分の値を求めることは不可能なので、実際に積分の値を求めるためには別の工夫が必要になる
そのための基礎を与えてくれるのが微分積分学の基本定理である
今R上の連続関数fに対して、例えば、積分区間の上端を変数であると考えてFという関数を考えてみる
このとき関数FはR上の各点微分可能であり、Fの微分はfであることが分かる
この事実を微分積分学の基本定理という
一般に与えられた関数に対してGの微分 = fとなるような関数Gを関数fの原始関数と呼ぶ
するとFはfの原始関数のうち1つであることが分かる
一般にはF=Gとなるとは限りませんが、次のようにしてF(x)を求めることができる
今、F-Gという関数を微分してみると、それが0であると分かる
そこでF-G=Cとして、両辺でx=aとしてみると、C=-G(a)であることが分かる
すなわち、F = G - G(a)
積分の上端をxからbに書き直すと、原始関数を用いた積分の計算法がわかる
すなわち、fの原始関数Gをなんでも良いから一つ見つけることができれば、あとは積分区間の端っこでのG(x)の値を引き算することで関数f(x)の積分の値が計算できることがわかった
つまり、f(x)の積分を求める問題が、f(x)の原始関数を求める問題へ帰着された
・置換積分と部分積分
与えられた関数f(x)に対してその原始関数がすぐ分かるとは限らないので、このような場合与えられた積分をなんらかの方法で変形してより見やすい形に帰着する工夫が必要となる
そのための工夫の代表例が置換積分と部分積分である
x=ψ(t)という関数によって積分変数をxからtへ変数変換すると置換積分の公式が得られる
また、関数の積に対する微分の公式であるLeibniz則の両方を積分して適当に移行すると、部分積分の公式がえられる
・曲線の長さや回転体の体積、表面積など
分割の幅を小さくしていった時のRiemann和の極限として積分の値を定義するというRiemann積分の考え方を応用すると色々な量が積分を用いて表せることになる
その代表的な例が曲線の長さや回転体の体積、表面積など
色々な公式がある
できる積分
関数f(x)の積分を求めるためには関数f(x)の原始関数G(x)をなんでも良いから一つ見つければ良いということになる
ところが、関数f(x)がよく知られた関数で表されていたとしても一般にはf(x)の原始関数を求めることができるとは限らないということが起こり得る。積分は微分ほど甘くない
「できる積分」の場合に原始関数が求まる仕組みをしっかりと理解して原始関数を確実に求めることができるようになることが大切である
・有理関数の部分分数展開
今実数係数の多項式全体の集合をRと表すことにすると、2つの多項式p、qを用いて、f=p/qで表せる関数を有理関数という
有理関数は原始関数を系統的に求めることのできる関数の代表的な例ですが、そのときのアイデアは部分分数展開を考えるということである
ただし実数の世界にだけこだわって部分分数展開を考えると部分分数展開の形が少し複雑になったり部分分数展開の各項として登場する関数の原始関数を求めるためにさらなる工夫が必要になったりと少し状況が難しくなってしまう
そこで、複素数の世界に考察を広げて考えることが大切になる
今、複素数係数の多項式全体の集合をCと表すことにする
このときf(z) = p(z)/q(z)を複素数係数の有理関数と呼ぶ
このように複素数の世界に考察を広げて考えると、勝手な多項式に対して、q(z)=0の相異なる根をα1、、、として重複度をmiとするとき、q(z)はCの中で一次式の席の形に分解することが分かる
この事実を代数学の基本定理という
そこで今f(z) = p(z)/q(z)が勝手に一つだけ与えられているとして、有理関数f(z)の分母であるq(z)という多項式が因数分解できるとすると、複素数の世界で有理関数の部分分数分解ができて、右辺には原始関数がすぐにわからないような項は登場しない
・有理関数の部分分数展開(その2)
ここでは実数の世界で部分分数展開を考えてみる
そこでまず、実数の世界ので多項式の素因数分解がどのようになるかということを考えてみる
q(x) = 0の根のうち、虚数根に対してはαとそれの共役複素数が対になって現れることが分かる
これより、実数係数の多項式は、Rの中で、一次式と判別式が負の二次式の席の形に分解することが分かる
・有理関数の原始関数を求めるには
上の項で見たように、勝手な有理関数は一次式と二次式がいくつか累乗されている式を用いて部分分数分解ができることがわかった
よって、有理関数の原始関数を求めるためには、
(1)a/一次式のn乗
(2)ax+b/(二次式のn乗)
(3)実数係数の多項式
という3つのタイプの関数の原子関数が分かれば良いということになる
このうち(1)と(3)の原始関数は簡単に分かるので、(2)のタイプを考えることになる
(2)のタイプの関数の原始関数を実数の世界の中だけで求めるための1番目の工夫は2x+cと1を基にして分解して考えるということである
このようにすることで、(2x+c)側の原始関数は簡単に求められてしまう
また、残ったものを、標準形に書き直して、漸化式を定義すると、部分積分で漸化式が得られ、順番に求めることができる
というのもJ1はarctanであると積分で分かるため
・三角関数の有理式の積分について
系統的に原始関数を求めることのできる関数の代表的な例は2つの多項式の商の形で表される有理関数であり、このことを用いると、なんらかの形で有理関数の積分に帰着できるような積分も原理的に原始関数を求めることができる積分ということになる
そのような積分の代表例が三角関数の有理式の積分である
三角関数の有理式の積分以外にも、できる積分が知られており、これらの共通の特徴は、積分変数の変数変換により有理関数の積分に帰着できるということになる
つまり、どのような変数変換をすれば有理関数の積分に帰着できるのかということをじっくりと理解することが必要となる
そのためのアイデアは、それぞれのできる積分の裏に隠れている代数曲線Cに注目して、積分変数の変数変換を代数曲線C上の点のパラメータ付けと対応させて考察するということになる
今、R2乗の関数で実数係数のに変数多項式全体の集合をRxyで表す
p(x,y),q(x,y)の商の形で表されるものを実数係数のに変数有理関数と呼ぶ
に変数の有理関数を用いて、それをcosとsinに置き換えたような形で表せるものを三角関数の有理式と呼ぶ
cosとsinはx,yを単位円C乗に制限したものであると解釈できる
有理関数という簡単な形をしたに変数関数を単位円C上に制限したものとして一変数関数(θ)を解釈するのができる積分の変数変換を考える上での出発点となる
すなわち三角関数の有理式の積分の裏には単位えんが隠れていると考えることが出発点
すると上のアイデアは、三角関数の有理式の積分を単位円C上の積分をθというパラメータを用いて表したものであると考えて単位円C上の点のパラメータ付けを取り替えたときに積分の姿がどのように変わるのかという観点かrあ積分変数の変数変換を考察するということになる
そこで、単位円C上の点がcosとsinというパラメータ付けとは別に、p = (φ(t),ψ(t))というようにパラメータ付けできたとする
積分変数をθからtに変数変換してみることで三角関数の有理式の積分は姿を変えた
ここで、φ、ψという関数が両方とも変数tに関する有理関数であるとすると、置換積分したあとの中身も有理関数になることが分かる
つまり、2つの有理関数φとψを用いて単位円Cの点Pがパラメータ付けできることが分かれば、三角関数の有理式の積分は有理関数の積分に帰着できることが分かる
このようなパラメータ付けは、単位円がxとyの二次式で定義されているという事実に注目すると幾何学的に構成することができ、 t=tan(1/2*θ)と取れることが分かる
・指数関数の有理式の積分
指数関数の有理式の積分についても全く同様の考察をすることができる
g(s) = f(exp(s),exp(-s))という形で表される一変数関数g(s)を指数関数の有理式という
今勝手な実数sに対して(exp(s),exp(-s))は双曲線xy=1上の点を表しているので、指数関数の有理式とは、に変数関数を双曲線C上に制限したものであると解釈することができる
すなわち、指数関数の有理式の積分の裏にはxy=1なるそう曲線が隠れていることになる
また、そう曲線Cは2つの部分からなり、それぞれパラメータ付けできる
前と同様に、そう曲線C+上の積分をパラメータsを用いて表したものであると考えて、そう曲線C+上の点のパラメータ付けを取り替えたときに積分の姿がどのように変わるのかということを考えてみる
同様にして、t=exp(s)というパラメータ付けができることが分かる
・双曲線関数とは
単位円上にcosとsinという自然なパラメータ付けが存在するのと同様にx^2-y^2=1という双曲線に対しても自然なパラメータ付けが存在する
それを与える関数がcoshとsinhである
それぞれの成分上の点がそう曲線関数を用いて二通りにパラメータ付けできることが分かる
exp(t)をcoshとsinhを用いて表してみるとオイラーの公式に似ていることが分かる
また、オイラーの公式をcosとsinに逆に解いたものはsinhやcoshの定義と似ている
そこで、Taylor展開を利用して、複素関数としての指数関数の定義し、双曲線関数も複素関数に拡張して考えてみることにする
すると、coshzとsinhzが得られ、実数軸上の点の値がcosht,coshtで虚数軸上の点の値はcosとsinであることが分かる
つまり複素数の世界まで拡張して考えると、双曲線関数と三角関数は同じ関数であることが分かる
よって三角関数の性質に似たような性質が双曲線関数では成り立つ
・xと√xの二次式の有理式の積分について
今、xと√xの二次式で表せるような一変数関数を二次の無理関数と呼ぶ
この場合にも、裏に隠れている代数曲線 y^2 = x^2 + bx + cに注目して、曲線C上の点を有理関数を用いたパラメータ付けを見つけることで有理関数の積分に帰着できる
微積の教科書にも具体的にパラメータを上げて帰着できることを示しているものもあるが、ただし、この場合は変数変換の式があまり優しい形をしていない
ここでは、いきなり有理関数の積分に帰着することを考えるのではなく、三角関数の有理式の積分あるいは指数関数の有理式の積分に帰着できることを順番に見ていく
アイデアは「二次式を見やすい形に変換する」と「単位円や双曲線の自然なパラメータ付けに注目する」ということである
ここで、二次式を平方完成してから、定数項が1になるように定数を括り出すことで、
「xと√xの二次式の有理式の積分が」
(1)Xと√X^2-1
(2)Xと√X^2+1
(3)Xと√1-X^2
というように、「見やすい形の二次式の場合に帰着できることが分かる」
よって、三通りの積分の計算ができれば良いことになる
ここで、この3つの積分の裏には、
(1)X^2 - Y^2 = 1
(2)Y^2 - X^2 = 1
(3)X^2 + Y^2 = 1
という双曲線や単位円が隠れているのが分かる
またこれらの双曲線や単位円には双曲線関数や三角関数を用いた自然なパラメータ付けが存在する
それなので、それぞれの積分を自然なパラメータ付けを用いて表すとどうなるかということを順番に見ていく
(1)はX = coshtという変数変換をすると、双曲線関数の積分に帰着できる
また(2)は X = sinhtという変数変換をすると、双曲線関数の積分に帰着できる
また、双曲線関数の有理式 = 指数関数の有理式なので、T = e(t)と置換することで有理関数の積分に帰着することができる
(3)はX = cos ir sinと変数変換すると、三角関数の有理式の積分へと帰着でき、三角関数の有理式の積分はt = tan(1/2*θ)で有理関数の積分に帰着することができた
広義積分
R上の連続関数f(x)は勝手な有界閉集合上でRiemann積分可能となるということを注意した。
被積分関数が連続関数であったとしても、積分区間が無限に伸びている場合や積分区間の端っこで被積分関数が定義できない場合などには積分の値がきちんと定まるとは限らない
積分の値がきちんと定まるように思われる場合でも、積分区間が無限に伸びている場合や積分区間の端っこで被積分関数が定義できない場合などにはそもそもRiemann和自体の値が定まるとは限らないなどの問題が起こってしまい、Riemann和の極限としての積分の値を理解することができなくなる
そこで、こうした場合には積分の概念を少しだけ拡張してRiemann和の極限とは違った形で積分の値を理解する必要がある
広義積分という考え方をしっかりと理解した上で、与えられた積分の式が広義積分の意味できちんと値が定まる意味のある積分の式なのか、式では表されているものの広義積分の意味でもきちんと値が定まらない意味のない積分の式なのかということをきちんと判定できるようになることが大切
・広義積分
積分区間が無限に伸びている場合や積分区間の端っこで被積分関数が定義できない場合などには、一般にはRiemann和がきちんと定まるとは限らないので、積分の値の定義を拡張して理解する必要がある
例えば、積分区間が無限のとき無限大をRに置き換えて、0,R上の積分の値はきちんと定まるということに注目して、Rを無限大としたときの極限として無限区間上の積分の値を定義することができそう このように積分の値を定義することを広義積分という
つまりRiemann和の極限として得られた値I(R)の極限値として理解できる
このような積分はRiemann和の極限 + 積分区間の極限という二段階の極限操作として理解できるので、Riemann和の極限という一段階の極限操作として理解できるRiemann積分特別して広義積分と言われる
実際に計算にあたっては、Riemann積分を扱っているのか広義積分を扱っているのかということはあまり意識せずに計算を進められる
・絶対収束と条件収束
広義積分は被積分関数が連続関数であっても積分の値がきちんと定まるとは限らない
したがって与えられた積分が広義積分の意味できちんと値の定まる意味のある積分なのか、式は書かれているもののきちんと値が定まらない意味のない積分なのかを判定できるようになることが大切になる
級数のときと同様に、広義積分の収束判定法ときちんと理解するためには広義積分の値がきちんと定まるパターンには絶対収束と条件収束という2つのパターンがあるということをしっかり理解しておく必要がある
S が 0から無限大のf(x)の積分として与えれているとき、正の面積と負の面積に分けて考える 総面積は、正の面積の寄与と負の面積の寄与に分けられ、S+とS-が両方とも有限の値に落ち着くか、両方とも無限大に発散するかという2パターンしかないことがわあkる
つまり、積分においても級数と同じように、|f(x)|の積分が無限大に行かないことが絶対収束する条件の言い換えとなります
・広義積分の収束判定法
アイデアとしては、勝手な有界閉区間上の積分の値が具体的に計算できるような関数と比べてみるということです
すなわち、積分区間内の勝手な点xに対して、|f(x)| <= g(x)となるような関数で、無限大まで積分しても発散しないようなものを見つけてくるというのがアイデアである
これを優関数という
具体的にな適当な実数aに対してx^aで見つけてくることが多い
ただし、aが1より大きいことが収束の条件
実際には、Taylor展開を用いて適当に被積分関数の大きさを評価することで優関数の候補を見つけることができることが多い
積分に関する少し進んだ話題
実際に積分の値を求める時には置換積分や部分積分といった方法以外にも被積分関数をTaylor展開して考えるという方法や、被積分関数が積分変数以外のパラメータを含む場合にはそのパラメータに関して微分してみるという方法も有効である
こうした方法を正当化するためには「積分をする操作」と「極限をとる操作」がいつ交換できるのかということを一度きちんと考える必要がある
この問題を考えるときの基本的な概念として一様収束という概念がある
・一様収束とは
数列がaに収束することは直感的にはnが大きくなる時にanがaに近づくということでしたが、これをanとaとの間の距離が0に近づくと解釈できる
このように数列の収束についてはただ一通りの定義に落ち着くが、関数列の収束については収束の仕方に応じて幾つかの収束のパターンを考えることができる
その中で最も都合が良い収束の仕方というのが一様収束というものである
一様収束は極限やインテグラルの操作が交換することを保証してくれる
まずは関数列が収束するとはどういうことであるのかということを考えてみる
今一つの関数列が与えれているとする、このときx0を勝手に一つ取ってきて、fn(x)たちのx0での値を考えると、数列ができる
これはただの数列なので、この数列の極限を問題にすることができる
そこで、勝手に一つ取ってきた点x0に対して数列の極限が存在すると仮定する
このとき、それぞれの点x0に対してこの極限値を対応させる関数を考えることができるが、こうして定まる関数f(x)が関数列の極限であると考えることができる
このようにそれぞれの点x0に対して、x0での値を集めてできる数列が収束するときに関数列は各点収束するという
これが最も素朴な関数列の収束の概念であるが、このような素朴な収束の仕方だけを考えたのでは一般的には極限と積分の交換は成り立たない
今関数列が各点収束しているとして、その極限の関数をf∞と表すとすると、極限と積分の交換ができるということは、fnの積分とf∞の積分がほぼ同じであるという見積もりが成り立つことであると言い換えができることに注意する
もしfnとf∞のグラフの形がほぼ等しいと仮定できるとすると、I上で関数fnのグラフとx軸で囲まれる部分の符号付き面積はI上で関数f∞のグラフとx軸で囲まれる部分の符号付き面積とほぼ等しくなると考えられるので、上の見積もりが正しいと言えそう
そこで、I上で定義された2つの関数に対して、グラフの形があまり変わらないということを数学的にどのように表現したらよいかということを考えると、グラフの近さを測る尺度として、 max|f- g|というものが考えられる
以上の準備のもとで、関数列が距離に乾sにてf∞に近づくとき、一様収束の条件となるときに関数列fnは関数列f∞に一様収束するという
積分区間が有界な閉区間であり、I上で関数列がf∞に一様収束しているときは極限と積分の交換ができることが分かる
極限と積分交換の式は冪級数の場合はべき級数の項別積分定理を表している
・パラメータに関する微分
被積分関数が積分変数以外のパラメータを含む場合には、そのパラメータに関して微分してみるということも、積分の値を求めるためにはしばしば有効である
例えば、パラメータで微分することによりnがn+1に化けることが分かる
これについて、パラメータに関する微分と積分の交換が確かめられれば、漸化式が分かる
直感的には積分とは連続無限このものの和であると解釈できるので、上の交換式は、パラメータを変数とする連続無限この関数たちの無限和が項別微分可能かどうかという問題となる
実際には、パラメータが入っていない積分で、わざわざ定数をパラメータに取り替えて、漸化式を求めてから答えを求めるというような方法で積分が計算されることもある
このような方法一般的な処方箋はなく、どのようにパラメータを被積分関数に導入するかが腕の見せ所になる
多変数関数の積分をどのように理解するのか
多変数関数に対する積分についても基本的には一変数関数の積分と同じである
ただし、一変数関数の場合と違って多変数関数の場合には積分領域に関して色々な可能性を考えることができる
本質的な部分はに変数関数の場合に全て現れるので、まずに変数関数の積分をよく理解することが大切であると思われる
二変数関数の場合にも、「Riemann和の極限として積分の値を定義するというRiemann積分の考え方を理解する」ということと、「実際に積分の値を計算する技術を身につける」ということを通して、二変数関数の積分に対する理解を深めることが主な目標となる
・に変数関数に対するRiemann積分の考え方
二変数関数の場合にも、積分領域の性質に起因する問題の起こらない有界閉区間上の積分の値とは何かということを理解することが基本となる
二変数関数のときは直感的にはxy平面とグラフで囲まれた体積を表すと考えられる
ただし、一般に曲がった図形を考えたときはその体積の値が幾つになるのかということや体積が定まるのかということがそれほど明らかではなくなるので、直方体であればはっきりとしたことが言えるということに注目して短冊の体積の極限値として積分の値を定義するのが普通である
分割の幅はmax{|Δxi| + |Δyi|}で定義する
以上の準備もと、Iの分割や代表点の取り方に寄らずに分割の幅が小さくなりすればRiemann和の値が共通の極限に近づくとき、この極限値を関数f(x,y)の区間I上での積分の値であると定義する
いつ積分の値がきちんと定まるのかということが問題になるが、一変数関数の時と同様にfが連続関数であれば勝手に有界閉区間で積分がきちんと定まることが分かる
・有界閉領域上の積分
二変数関数の場合には積分領域として色々な可能性を考えることができる
積分領域Dが有界閉領域の場合には、Dを含むIという有界閉区間を一つ取ってくることで、積分領域が有界閉領域Iの場合の帰着させて考えることができる
補助的な関数fdを考えると、関数f(x,y)の有界閉領域D上での積分の値をIを用いた式で定義することができる
一般には定数関数に対してさえ積分の値がきちんと定まるとは限らず、連続関数に対して積分の値がきちんと定まるかどうかということは積分領域Dの境界δDの性質に関係してくる
f(x,y) = 1として、この積分の値つまりDの面積がきちんと定まるときDを面積確定の領域と呼んだりする
この言葉を用いると、連続関数は勝手な面積確定の領域D上で積分の値がきちんと定まるということが分かる
具体的には、滑らかな曲線をいくつか繋いだような境界Dであるならば連続関数に対して積分の値はきちんと定まる
・Fubiniの定理
Fubiniの定理により、二変数関数に対する積分の値を求める問題が「最初にyをパラメータとみなしてx方向の積分を計算し、次にy方向の積分を計算するという問題」あるいはその逆に帰着できる
つまり、二変数関数の積分を求める問題が、一変数関数の積分を順番に求めるという累次積分を求める問題に帰着できる
つまり、直感的には、ある平面で切ったときの切り口の表面積を式で表し、表面積に厚みをかけてから足し上げることにより体積を求めることができるはずである
まずは積分領域Dの図を書いてみるなどして、積分区間をきちんと求めて計算を進めることが大切である
・変数変換の公式
一変数関数の積分の場合には、置換積分という名で呼ばれる積分変数の変数変換に対する積分の変換公式がありますが、多変数関数の場合にも、この置換積分の公式を拡張した形の変換公式が成り立つ
例えば、曲座標に基づく分割のように、xy座標とは異なる座標系に基づく積分領域の分割を行って、Riemann和を考えたとしても分割をどんどん細かくしていったときにはやはりそれらのRiemann和も同じような積分の値に落ち着くはずであることが分かる
そこで例えば、円板で考えてみる
曲座標で考えると、積分領域が扇型の小領域の和に分割される
そこで、各小領域の代表点を勝手に一つずつ選んでくることにより、Riemann和を表すことができると分かる
また、小領域は小さな扇型なので、rΔrΔθを見積もれる
また、|Δ|→0としたときに統合になると考えられるので、曲座標の場合の変数変換の公式が導かれる
そこで、より一般に、R2上の勝手な座標系を用いて同様の考察を行うとどういうことになるのかということを考えてみる
(x,y) = (φ(s,t), ψ(s,t))とすると、x,yとs,tが一対一に対応するので、s,tも一つの座標系を定めていると考えることができる
そこで今(s,t)という座標に関する有界閉区間に対応するDという領域を考えて、fdxdyという積分に対して極座標のような考察を行うとどうなるのかということを考える
分割の幅が十分小さいと仮定して、各小領域の面積の大きさを見積もることを考える
小領域IはA,B,C,Dを頂点とする長方形もどきの形をしていると考えられる
Taylor展開を用いると、小領域はAB,ACを二辺とする平行四辺形にほぼ等しいと考えられる
その面積も平行四辺形にほぼ等しいと考えられる
そして、その面積はJacobi行列の行列式で与えられる
・広義積分
一変数関数に対する広義積分の場合と同様にDが有界閉領域と異なる場合でもDを近似するDに含まれる有界閉領域Kを考え、KをDに近づけた極限として二変数関数の講義積分の値を定めることができる
いつ広義積分の値がきちんと定まるかということが問題になるが、一変数の場合と同様に、広義積分の値がきちんと定まることを保証する十分条件として、|fdcfy|<∞というのが知られており、絶対収束していることを確かめる判定方法としては優関数に判定方法がある
微分積分学の応用
どのような分野に進んでも、微分積分学や線形代数を通して学ばれている数学的な概念が基本的な言葉として用いられている場面に出会うことになると思う。その意味では、微積と線形代数が全ての基本となっている
ここでは、「πの近似計算」や「πが無理数であることの証明」、「べき級数を用いた微分方程式の解法」、「n次元球面の表面積の計算」などを取り上げる
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