『組織の問題解決を、安易に「制度」に頼ってはいけない〜個別に真正面から対応をするのが嫌なだけ〜(曽和利光) - 個人 - Yahoo!ニュース』
次に、制度とは、「最大公約数的」なものでしかない、ということです。「例外の無いルールはない」ではありませんが、どこかに線引きすれば、必ずそれには当てはまらないケースが出てくるものです。
例えば、報酬制度で、「このグレードは、基準給が年俸500万円」とすれば、中途採用の際、前職で510万円の人に入社してもらう時、「すまないけども、当社規定により10万ダウンでお願いします」としなければなりません。「10万ダウン」には特に意味がありません。評価が低いわけではなく、単に「制度で決まっているから」です。昇格の規定を決めたら、すごい人材が現れて超法規的な特進昇格をさせたくても、なかなか勝手にはできません(まあ、本当は例外処理をすればよいのですが、あまりたくさん例外を認めると示しがつかなくなっていきます)。すべてのケースを想定した制度を作ることは不可能です。
最後に、私が「制度化はできるだけ引き延ばすべき」と思う最も大きな理由を述べますと、それは、上述のようなデメリットのある制度化をせずとも、経営や人事の「個別対応」でできることが本当はとても多いからということです。
例えばの話をします。何らかの事業場の理由でリストラをしようとする際、ふつうは退職金の上乗せなどの何らかの制度を導入します。しかし、制度によってリストラをすると、よくある現象が「いい人から辞めていく」というものです。制度を一旦リリースすれば、それを使うか使わないかの判断は個人に移り、アンコントローラブルになります。そうすると、本来は本意ではない優秀層の流出につながるというわけです(もちろん、優秀層をロックするような制度の工夫もありますが限界があります)。
ところが、私が昔在籍した会社は、リストラを制度によってではなく、個別対応でやっていました。「勤続○年以上の人は、いつまでに退職を決めれば、こういう追加の退職金パッケージがあります」とするのではなく、人事担当者がダイレクトにローパフォーマーの方々に連絡し、面談をし、ミスマッチを起こしていることを語り、納得してもらい、新しい道を歩んだ方がよいと説得し、結局、合意の上での退職へと導いていました。制度ではなく、個別に対応していたのです。
もちろんこれはかなり大変なことで、担当者は頭に10円ハゲを作っていたぐらいです。この例は最も過酷な極端な例で、人事担当者のメンタルヘルスを悪化させてまでやるべきとは言いませんが、要は「制度」ではなく「個別対応」でやることにより、組織にとって最も目的にかなった状況が実現できたということです。