拡張の4つのステップ
ステップ1 観察する
体の中の感覚を観察する。数秒かけて、頭からつま先まで体をスキャンしてみてほしい。するといくつか不快な感覚があることに気づくだろう。一番不快なものを探してみよう。たとえば喉の奥の詰まったような感覚、胃がギュッと締め付けられる感じ、涙があふれる感覚など(体全体が心地よくない場合は、一番不快感がある場所を見つけよう)。次にその感覚に注意を向ける。新しい現象を発見した科学者のように、好奇心をもってその部分を観察しよう。それがどこから始まってどこで終わっているか。その感覚の輪郭を描くとしたら、どんな形になるだろう? 体の表面にあるのか、それとも内部か、その両方か? もっとも強く感じるところはどこか? 逆に弱いところは? 中心と端の部分とでは感じ方が異なるか? 脈動か振動を伴っているだろうか? それは軽いか重いか? 動いているか止まっているか? 温かいか冷たいか?
ステップ2 息を吹き込む
感覚の内部や周囲に息を吹き込む。まず何回か深い呼吸をしてみよう(できるだけゆっくりする)。息を吐くとき肺を完全にからっぽにしよう。ゆっくりとした深い呼吸をすることが重要だ。それは体の緊張を緩める。感情を追い払うことはできないが、深い呼吸は体の中に穏やかな中心点を作るだろう。それは感情の嵐の中の錨のようなものだ。錨は嵐を遠ざけることはできないが、それが過ぎ去るまであなたをつなぎ止めてくれる。ゆっくりと深い呼吸をして息が感覚の周囲や内部に流れ込むのを想像しよう。
ステップ3 感情の居場所をつくってやる
感情の内部や周囲に息を吹き込むというのは、体の中にさらなるスペースを作るようなものだ。その感覚の周囲にスペースを作ってやり、それが自由に動き回るための場所を開けてやる(感覚が大きくなるようならさらに大きな居場所を作る)。
ステップ4 容認する
たとえそれが好ましいものでなくても、感覚の存在を容認してやる。別の言い方をすれば「あるがままにさせる」ということだ。あなたの心が起こっていることにコメントしたら「心よ、ありがとう!」と伝え、観察に戻ればよい。もちろん簡単ではないだろう。感覚を追い払いたい衝動に駆られるかもしれない。その場合は衝動を承認してやろう(承認とは、うなずいて存在を認めてやること、「そこにいるのか、見えるよ」と言ってやるようなものだ)。そして、注意を感覚に戻していく。
忘れていけないのは、感覚を排除したり変えようとしたりしないことだ。それが自身で変わるのであれば問題ない。変わらなければそれもよし。変えたり追い払ったりするのは目的ではない。目的はそれらの居場所を作ってやること、好むと好まざるにかかわらず、そのままにしておいてやることだ。
感覚と戦うのを完全に止めるまで、数秒から数分間、それに集中する時間が必要かもしれない。辛抱強くなろう。必要なだけ時間をかけよう。このスキルはあなたにとって価値あるものなのだ。
練習が終わったら、再び体をスキャンして他にいやな感覚がないか見てみよう。もしあれば再びこのプロセスをやってみよう。たくさんの異なる感覚に対し、必要なだけやってみることが可能だ。「悪あがきのスイッチ」が完全にオフになるまで続けよう。
p126-127
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