ACTをはじめる
ACTをはじめる(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)セルフヘルプのためのワークブック
スティーブン・C・ヘイズ、スペンサー・スミス
アクセプタンスとは「今、この瞬間」をしっかりと受け止めるということ。説明はp11 p89
考えること以外の何かをしようとすれば、私たちはまず、考えるというプロセスをつかまえる必要があります(飛びまわってる虫をつかまえるように)。そうしておかないと、「自分の思考に自分自身が取り込まれる」という悲しい結果に行き着くことになるからです。つまり、自分自身の考えていることが、福音書に書いてある真理のように正しく思えてしまい、それが持っている破壊的な力を見落としてしまうからです。
p90
認知療法の父、アーロン・ベック(Aaron Beck)は、自分が考えていることに自覚的になるプロセスを次のように言い表しました。それは「距離をとる(distancing)」というものです(ACTがもともと「すべてに対して距離をとる(comprehensive distancing)」と呼ばれたのも、このためです)。また、ベックのアプローチばかりでなく、他の科学に基づくほとんどのセラピーにおいても、「距離をとる」という方法が使われています。しかし、それは、思考を評価し、中断させるための最初のステップとして使用されてるだけです。その場合、セラピストが「距離をとる」という方法を使ってクライエントに教えることは、①思考の論理的な矛盾を見つけ、②それを支持する新しいエビデンス(証拠)を探し、③不安な思考を変化させる、ということです。それは、ニセの標識を見つけて、それを壊すか、その内容を書き換えようとすることと同じです。もちろん、そうすれば、誤って水たまりに落ちることもないし、泥はねをたくさんつけるようなことはなくなるでしょう。
しかし、ACTのアプローチは、ベックのアプローチとは違います。私たちのアプローチはよりシンプルです。そして、現在のエビデンスによれば、ACTの方がより効果的であることが示唆されています。ACTが援助するのは、
思考から何かを見るのではなく、思考そのものを見る
p114
思考から見るのではなく、思考を見ることを学ぶという方法です。この方法をACTでは脱フュージョン(congnitive defusion)の技法と呼んでます。脱フュージョンはACTの中心となる要素です。この技法は「あなたの思考が作り出した世界」と「刻々と変化するプロセスとしての思考」との区別を助けるものです。とりわけ、思考があなた自身に関するものである場合、脱フュージョンは、「考えているあなた」と「その考えを通じて、あなた自身に当てはめた言語的な分類」とを区別するのに役立ちます。脱フュージョンは、こころの平安をもたらします。それは、必ずしも「心理的な戦いが終わった」という意味ではなく、あなたが「戦場から立ち去った」からなのです。
脱フュージョンのトレーニングは、自分の苦痛日記などを参考にして、自分を言い表す単語を一つか二つ見つけ出して、それを短時間で連呼させて言葉への信頼度を失わせる様なセルフトレーニングをするらしい。 脱フュージョンというのは、自分の囚われの言葉を見つけ出して、その言葉の信頼性を失わせるいろんなイメージコントロールをつかう方法だ。方法のリストは、p136-137に載っている。
p140
脱フュージョンを使用するタイミング
認知的フュージョンはいつでも、どこでも、何に対しても生じ、止まることはありません。そのため、私たちはそれに気づかないことがあります。以下に挙げたのは、あなたが自分の思考と認知的フュージョンを起こした際に、それに気づく手がかりとなるものです
あなたの思考は、古く慣れ親しんだもので、活気がないと感じられる
あなたは、思考の中に沈み込んでいて、しばらくの間、外の世界が消えてしまう
あなたのマインドが比較や評価をしている
あなたは、心理的にどこか別の場所や時間の中にいる
あなたのマインドには、ずっしりと重たい「正邪」の感情がある
あなたのマインドは、余裕がなく混乱している
もし、あなたが、がんじがらめになってうまく身動きがとれず、これらの手がかりに当てはまるものがあれば、まず、認知的フュージョンを起こしている思考を探し出しましょう。それを見つけたら、脱フュージョンの方法を一つ試してみてください。
ACTのプロセスにおける次のステップで、あなたの思考や感情、身体感覚に対して、マインドフルな(出来事をあるがままに意識する)姿勢をどのように保つか、ということを学びます。この本の第7章と第8章で「マインドフルネスとは何か」、「『今、この瞬間』と接し続けるにはどうすればよいのか」を検討していきましょう。
ウィリングネスとは望まない感情であれど、居場所をちゃんとみとめてやること。 喜び、憂うつ、つまらなさ、ある瞬間の気づきは、まるで予期せぬ訪問者のように突然やってくる。それらをすべて歓待し、もてなそう!
ジェラルディン・ルーミー、英語の翻訳はコールマン・バークス(1997)による
p199
ウィリングネスの本当の意味は、苦痛の内容から、人生の内容に行動目標を切り替えることです。
p204
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