戦略とはインスピレーションによって生まれるもの
from そしてあらゆる戦略は兵站によって支えられている。
戦略とはインスピレーションによって生まれるものであり、基本的には作戦は競争相手の虚をつくことで勝利する。主攻と助攻の組み合わせで虚をついて勝つ。つまり、人類が有史以来ずっと行なってきた競争の本質とは、想像力の競争であると解釈できる。キングダムでも、どんな名将も必ず相手の虚をついて勝っている。つまり想像力で相手を勝ることこそ最も重要なこととして描写される。これはもちろん漫画としての意図的な演出だと思うが、なんらかの隙をつかなければ小が大に勝つことはあり得ない。孫氏曰く、「凡そ戦いは、正を以て合い、奇を持って勝つ」。ハンニバル・スミス曰く、「作戦は奇を持って良しとすべし」この原則は、市場を支配している王者以外の全ての組織、すなわちほとんど全部の組織にとって必要な行動基準である。
ハンニバルもナポレオンも、アルプス越えをすることで敵の意表を突こうとした。織田 信長も桶狭間の戦いでは寡兵で大軍の今川 義元を奇襲した。真珠湾では、世界初の航空主兵による攻撃が加えられた。常に想像力で相手を上回る人々が勝利した。ハンニバルは最終的には負け、ナポレオンがアルプス越えを終える前にジェノバは陥落したが、その瞬間の戦略では勝利した。そこまで大袈裟でなくても、フェイントやフェイクパスはスポーツの基本戦術だ。最近感心したのは、格闘家の朝倉 未来が、明らかに負けそうにない格下の相手と戦う時にもきちんとフェイントを入れていたことだ。対人戦闘という最も小さいレベルでも相手の想像力の上を行くことが勝利の鍵なのである。
さて、これがAI時代に突入するとどのように変化するだろうか。
少し前まで、企業の戦略にAIが介入することなど想像もつかなかった。しかし現実はもっと進んでいる。
AIは明らかに人間の想像力を拡張する。単なるランダムではなく、人間が想像できないような奇妙な戦略や作戦を考え出すであろうことは、AlphaGoとイ・セドルの対戦をプロ棋士が解説しようとして見事に失敗していたことからもよくわかる。
戦略の中心にOODAループがあるとすると、最も敏捷性が高いユニットは明らかにAIである。
清水 亮