春の日の光に当たるわれなれどかしらの雪となるぞわびしき
from 2023立春
春の日の光に当たるわれなれどかしらの雪となるぞわびしき(古今・春上・8、文屋康秀)
春の日の光にあたっている私ですが、頭に雪が降りかかっているのがさびしいことでございます。
東宮様の御庇護にあずかる私めではございますが、また一つ年を取り髪が白くなるのは避けえず、つらいことでございます。
詞書
二条の后より正月三日に呼び出されたとき、日が照っているのに頭に雪がかかったので詠んだ歌
お年賀の挨拶に参上している
詞書では「二条の后の春宮のみやすん所ときこえける時」とある
二条の后が生んだ貞明親王が皇太子となっているとき。貞明親王は後の陽成天皇
春宮は皇太子の意。東宮ともいう
五行思想では春は東に配置される
御息所は天皇の寵愛を受けている人で、后以外の人を指す
ダブルミーニングがふたつある
1. かしらの雪
頭に雪がかかってきたこと
白髪のこと
2. 春の日の光
新春正月三日の春の日の光
…のような、二条の后と東宮の御威光
あなた様の寵愛を受けている私めではございますが…という意味合い
お正月の挨拶で雪が頭にかかったのを、当意即妙の読みぶりで新春を寿いでいる
ついでに自分を「翁」の体で読み上げてる