文化的進化
進化生物学者のジョゼフ・ヘンリック氏によると、1人の人間が調理法を一から編み出すのではなく、むしろ社会全体として知識を伝達し蓄積したのだという。
人間集団は生物の進化と同じように、試行錯誤を重ねることで文化を発展させていく。十分な時間があれば、文化的進化も生物の進化と同じように、目覚しく複雑な成果を生み出すことがある。
誰かが偶然、キャッサバの危険性を少し和らげる方法を見つけたとする。その方法が広まり、また別の方法が見つかる。時がたつうちに、効果の高い複雑な儀式が一歩また一歩と発達していくというわけだ。 さらに人間の場合、何かを模倣するとなったら、それにまつわる一切を忠実に、儀礼的に模倣する。これはチンパンジーはしないことだ。心理学者はこれを「過剰模倣」と呼ぶ。
これだけ聞くとチンパンジーの方が賢いように思えるが、キャッサバの根を調理する場合には、過剰模倣こそ必要なのだ。
ヘンリック氏の説が正しいなら、人間の文明は純粋な知識よりも、互いから学びあうという高度な能力によって作られたことになる。
「人間の場合、何かを模倣するとなったら、それにまつわる一切を忠実に、儀礼的に模倣する。これはチンパンジーはしないことだ。心理学者はこれを「過剰模倣」と呼ぶ。」
@nishio: @tokoroten 「人間がチンパンジーに比べて無駄な手順をする」って実験は元論文にあたったことがある 私たち人間は、チンパンジーのようにどの手順は省略しても安全か判断できると過信せず、すべての手順を愚直に真似したほうが、全体にうまくいったのだろう。
もちろん、文化的進化で実現できることには限界がある。現代では科学的手法が正解を教えてくれる。はい、キャッサバは本当に2日間寝かせなくてはなりません。いいえ、ヤギをいけにえにしても火山は機嫌を直してはくれません。 科学の原理を理解すれば、試行錯誤や模倣から学ぶよりも速やかに前進できる。しかし、19世紀のオーストラリアでキングの命を救った集合知を軽視してはいけない。