川水に鹿のしがらみ掛けてけり浮きて流れぬ秋萩の花
新古今和歌集・巻四・秋歌上・三二八。
作者は大江匡房。
詞書「堀河院御時百首歌中に、萩をよみ侍りける」
堀河百首にて詠まれたらしい。
新古今での並び
前:たなばたは今やわかるるあまの河かは霧立ちて千鳥鳴くなり
後:狩衣われとは摺らじ露しげき野原の萩のはなにまかせて
それまで続いてた七夕の話題がここで途切れて、次から萩の話題になってる!しかも内容は文字通り川の流れを止めたので萩が留まっているという……配置の妙イタロー.icon
語釈
川水
川の流れる水。
しがらみ
水の流れを止めるために杭を打ち、木や竹を横に並べて組んだもの。
転じて物事にからみつくもの、まつわりつくものをいい、現代語はこちらの意味が重くなってきている印象。
古今集に「瀬をせけば淵となりてもよどみけり別れを止むるしがらみぞなき」という歌がある。
瀬をせき止めると深い淵となり、流れがよどむことだ。(しかし、)人の別れ、死別を止めてくれるしがらみはないのだ。
流れぬ
ラ行下二段活用「流る」の未然形+打消の助動詞「ず」の連体形。
当初完了の助動詞「ぬ」と取ってしまっていたが、誤りcFQ2f7LRuLYP.icon
「しがらみ」と呼応すると考えなければならんかったcFQ2f7LRuLYP.icon
流れない、の意。
秋萩の花
萩にて解説。
萩と鹿を詠みこんだ歌が多いらしい。
この歌では鹿が秋萩でしがらみを作っているよ、という見立てをしている。
しがらみは人の作為で水をせき止めるもの
百人一首に山川に風の掛けたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり(春道列樹、古今・秋下・三〇三)という歌がある。
こちらは風の散らした紅葉が水をせき止めている様子を、「風の掛けたるしがらみ」と表現する。
現代語訳
川の水に、鹿がしがらみを掛けているよ。水に浮いて流れずにいる秋萩の花が、そのしがらみだ。
参考
『新古今和歌集』(角川ソフィア文庫)