ライフイベント法
心理学者であるホームズとレイは、人生で起こるさまざまな出来事(=ストレッサーになり得る出来事)とストレス過程との関係を研究し、患者たちが病気を発症する前に人生における重大な変化、すなわちライフイベントを経験していることを明らかにしました(Holmes & Rahe, 1967)。 彼らは、5,000人の患者を対象に過去10年間にわたる生活上の重大な出来事(ライフイベント)について調査を行いました。具体的には、「結婚」によるストレス度を50点としたときに、その他の項目について個人が感じるストレスの程度を0~100点の範囲で自己評価させ、項目ごとの平均点を算出しました。 研究の結果、1年間に経験したイベントの合計点が300点を越えた人の79%が、翌年に何らかの疾患を訴えていたことを明らかにしました。この研究手法はライフイベント法とも呼ばれており、その後、多くの追試や適用もなされており、ストレッサーを測定するための手法として高く評価されています。
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これはあくまでも一例ですが、1年間に経験したイベントの合計点数が260点以上なら要注意、300点以上なら対応必須という判断基準を設けられているため、1年間でこれくらいのライフイベントを経験すると、ストレス状態が非常に高くなる危険性があります。
日本版の指標
夏目ら(1988)
日本人勤労者1,630名を対象にホームズらの取り上げたストレッサー43項目に職場生活に関するストレッサー18項目を加えたストレス調査表を作成
ストレス得点が基準となる「結婚(50点)」を上回った項目が27項目
2位「会社の倒産(74点)
6位「会社を変わる(64点)」
10位「仕事上のミス(61点)」
11位「転職(61点)」
など
夏目ら(2012)
全国・全業種の10,494名の勤労者を対象に「ストレス評価に関する調査研究」の調査報告
調査参加者に各ストレッサーについて半年間の生活で体験したかどうかを尋ね、「体験あり」と答えた場合には、「そのことによってどの程度のストレスを感じたか(もしくは感じているか)」を11段階(0-10点)で評価してもらい、項目ごとに平均点を求める
ひどい嫌がらせやいじめ、又は暴行を受けた(7.1点)
退職を強要された(6.5点)
1か月に140時間以上の時間外労働(休日労働を含む)を行った(6.3点)
上司とのトラブルがあった(6.2点)
セクシャルハラスメントを受けた(5.6点)
など
一方、人生における主要なイベントと健康状態の間には、必ずしも深い関係があるわけではないと指摘する研究もあります。
たとえば、ラザルスとコーエン(Lazarus & Cohen, 1977)は、ライフイベントのような日常生活においてめったに経験することのない重大な出来事よりも、デイリーハッスル(日常苛立ち事)の方が私たちの心身への悪影響を考えるうえで重要だと主張しています。