エラノス会議
「エラノス」という名前は古典ギリシア語の晩餐会に由来し、これは幾人かの客たちが自前で食べ物を持ってきて、互いに頒ち合い、食卓を囲んで談笑しあう会食を意味する。1933年にオランダ系イギリス人女性の神秘家・オルガ・フレーベ・カプタイン (Olga Froebe-Kapteyn) によってこのグループが設立された。それ以来スイスのアスコナ近くのマッジョーレ湖岸にある彼女が私有する屋敷で毎年会議が開催された。60年以上の間、このイベントは異なる知の領域からなるざまな思想家たちが人間の精神に関するさまざまな事柄を討議するための接点として貢献した。 各々の大会は8日にわたって行われるが、その間、すべての参加者は食事、睡眠、生活をともにすることによって、議論の雰囲気は促進され、相互理解が深まる。毎年、新しいテーマに取り組み、各々の思想家が主題についての2時間の講義を行い、このアイデアの晩餐会への彼(女)の貢献によって、参加している多種多様な思想家は生産的で知的な談話に移っていく。
しかし、彼ら、彼女らは皆、個別に黙々と自らの信じる営みを行うに留まり、一堂に会することはなかった。そうした人々に集結の契機を提供し、言葉を交わすなかで、混迷を打破する新しい「世界観」を構築することができるのではないかというのがオルガの眼目だった。彼女の想念にユングとオットーが強い共感を示したことで、思いは一気に大きなうねりになる。
松岡正剛千夜一夜
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(左)円卓を囲むエラノス会議参加者。