超函数
準備のための概念定義が長いので、結論だけ知りたい場合は最後の方まで一気にスクロールすると良い
ちょうど切らしてた。助かるtakker.icon
集合$ Vを台とする可換群$ (V,+)が体$ Kをスカラーとするスカラー積$ \cdot:K\times V\to Vを持つ時、体$ K上の$ (V,+,\cdot)をベクトル空間と呼ぶ。
1. 加算(可換群)
(対称性)$ \bm x+\bm y=\bm y+\bm x、(単位元)$ \bm x+\bm 0=\bm x、(逆元)$ \bm x+(-\bm x)=\bm 0
2. スカラー積
$ a(\bm x+\bm y)=a\bm x+a\bm y ($ Vの加法に対するスカラー乗法の分配律)
$ (a+b)\bm x=a\bm x+b\bm x ($ Kの加法に対するスカラー乗法の分配律)
$ a(b\bm x)=(ab)\bm x (体の乗法とスカラー乗法の擬似的な結合律)
$ 1\bm x=\bm x (スカラー乗法の単位元)
$ 1は体$ Kの乗法単位元
これらを単に線形性としてまとめる事が多い
(線形性): $ a\in K,\bm x,\bm y\in V\Rightarrow a\bm x+\bm y\in V
内積(実数)
実数体$ \R上のベクトル空間$ V上で定義される二変数の写像$ \lang\bull,\bull\rang:V\times V\to\Rが非退化半正定値の対称双線型形式である時に、内積と呼ぶ。
$ \lang\lambda x+y,a\rang=\lambda\lang x,z\rang+\lang y,a\rang
$ \lang a,\lambda x+y\rang =\lambda\lang a,x\rang+\lang a,y\rang
$ \lang x,y\rang=\lang y,x\rang
$ \lang x,x\rang=0\in\R\Leftrightarrow x=0\in V
$ \Leftarrowは双線型性から示せるので要請しなくても良い
$ \lang0,0\rang=\lang a-a,0\rang=\lang a,0\rang-\lang a,0\rang=0
$ \lang x,x\rang \ge0
数ベクトルの内積
よくある内積の定義は、ベクトル空間を$ \R^nとして以下の関数で与えられる。
$ \lang x,y\rang=\sum_{k=1}^nx_ky_k
本当に内積の性質を満たすのか確認してみよう
対称性
$ \lang y,x\rang=\sum_{k=1}^ny_kx_k=\sum_{k=1}^nx_ky_k=\lang x,y\rang
双線型性
$ \lang\lambda x+y,a\rang=\sum_{k=1}^n(\lambda x_k+y_k)a_k=\lambda\sum_{k=1}^nx_ka_k+\sum_{k=1}^ny_ka_k=\lambda\lang x,a\rang+\lang y,a\rang
対称性により第二引数についての証明は省略しても良い。
非退化性と半正定値性
$ \lang x,x\rang=\sum_{k=1}^nx_k^2\ge0
$ x_k^2\ge0より半正定値性が示される
$ x_k\ne0\Leftrightarrow x_k^2>0より非退化性が示される。
関数はベクトル空間を成す
実関数全体$ \R\to\Rがベクトル空間を成すことを示そう。
加算(可換群)
$ f(x)+g(x)=g(x)+f(x)\quad\text{.for }\forall x\in\R
$ f(x)+0(x)=f(x)\quad\text{.for }\forall x\in\R ($ 0(x)は$ 0を返す定数関数)
$ f(x)+(-f(x))=0(x)\quad\text{.for }\forall x\in\R
スカラー積
$ a(f(x)+g(x))=af(x)+g(x)\quad\text{.for }\forall x\in\R
$ (a+b)f(x)=~af(x)+bf(x)\quad\text{.for }\forall x\in\R
$ a(bf(x))=(ab)f(x)\quad\text{.for }\forall x\in\R
$ 1f(x)=f(x)\quad\text{.for }\forall x\in\R
関数の内積
実関数はベクトル空間を成すので、内積を考えることができる。
取り敢えず、数ベクトルの内積のアナロジーとして、以下のものを考えてみよう
$ \lang f,g\rang=\int_\R f(x)g(x){\rm d}x
これが内積の性質を満たす条件を確認しよう
収束性
そもそも$ \int_\R f(x)g(x){\rm d}x<\inftyとなるべき
対称性
$ \lang g,f\rang=\int_\R g(x)f(x){\rm d}x=\int_\R f(x)g(x){\rm d}x=\lang f,g\rang
これはいつでも満たす。
双線型性
$ \lang\lambda f+g,\phi\rang=\int_\R (\lambda f(x)+g(x))\phi(x){\rm d}x
$ =\lambda\int_\R f(x)\phi(x){\rm d}x+\int_\R g(x)\phi(x){\rm d}x
$ =\lambda\lang f,\phi\rang+\lang g,\phi\rang
これもいつでも満たす。また、対称性により第二引数についても満たす。
非退化性と半正定値性
$ \lang f,f\rang=\int_\R f(x)^2{\rm d}x
$ ^{\forall x}\lbrack f(x)^2\ge0\rbrackより、$ \lang f,f\rang\ge0
$ ^{\forall x}\lbrack f(x)\ne0\Rightarrow f(x)^2>0\rbrackより、$ \lang f,f\rang=0\Rightarrow f=0
これもいつでも満たす。
したがって、積分$ \int_\R f(x)g(x){\rm d}xの収束のみが要請される。
Lp空間
線形代数の勉強をする際に以下のような話を聞いたことがあるだろう。
(数)ベクトルの大きさを表す際に$ \|\bm x\|をノルムと呼ぶ。
$ \|\bm x\|_p=\,^p\sqrt{\sum_{k=1}^n\left|x_k\right|^p}をLpノルムと呼び、特にユークリッド距離を表す$ \|\bm x\|_2をL2ノルムと呼ぶ。
関数の Lp ノルムを定義可能な空間を Lp空間と呼ぶ 準備
$ 1\le p<\inftyとする
$ (S,\Sigma,\mu)を測度空間とする。
Lp空間
以下の積分が有界であるような可測関数$ f:S\to\R全体の集合をLp空間と呼ぶ。
$ \|f\|_p=\,^p\sqrt{\int_{S}|f|^p{\rm d}\mu}<\infty
特に、先程定義した関数の内積はL2空間で収束する
TODO: もうちょっと丁寧に加筆するSummer498.icon
特に、本当に収束するのか
シュワルツ超函数
$ f:\R\to\Rを局所可積分関数として、テスト関数$ \phi:\R\to\Rをコンパクトな台を持つ$ C^\infty級関数とする。
コンパクト: 実数に対しては「有界」と同じ意味
$ \phiは任意に選べるようにする。
$ \phiの条件を満たす関数の存在も示す。
このとき、
内積$ \lang f,\phi\rang=\int_{\R} f\phi{\rm d}x\in \Rは収束する。
内積$ \lang f,\phi\rangは$ \phiに関して線形かつ連続に変化する実数である。
(線形性) $ \lang f,\lambda \phi+\psi\rang=\lambda\lang f,\phi\rang+\lang f,\psi\rang
(連続性)
L2 ノルム空間で
$ f_n\to f,\phi_n\to \phi$ \Rightarrow$ \lang f_n,\phi_n\rang\to\lang f,\phi\rang
TODO: もっと丁寧に加筆するSummer498.icon
よって、関数$ fを「テスト関数全体の成すベクトル空間上の連続線形汎関数」と見なせる。
ここで、$ fの条件を緩和して関数ではなくても良い物とする。
すなわち$ fに要請する条件を「テスト関数全体の成すベクトル空間上の連続線形汎関数」のみにする。
そうすると、今まで関数として扱えなかったものをあたかも関数であるかのように扱えるようになる。
TODO: もっと丁寧に加筆するSummer498.icon
特に一意性
$ \lang\delta,\phi\rang=\int_\R\delta\phi{\rm d}x=\phi(0)とする。
これを満たす関数(?)$ \deltaを考えると、
$ x\ne0\Rightarrow\delta(x)=0 ←この部分は関数と見なせる
$ x=0\Rightarrow\delta(x)=c
$ cの値をどのように設定すると先の内積を満たすのだろうか?
$ \lang \delta,\phi\rang=\int_{\R}\delta\phi{\rm d}x=\int_{\{0\}}c\phi(0){\rm d}x=0?
$ cを如何なる実数に設定しても$ {\rm d}xのせいで消える。
したがって、$ \deltaは関数にはならない
超関数の微分と内積
(普通の)関数の微分と内積の関係を見てみよう
部分積分の公式により
$ \int_{\R} f'\phi{\rm d}x=\lbrack f\phi\rbrack_{x\to-\infty}^{x\to\infty}-\int_{\R}f\phi'{\rm d}x
ここで、$ \phiに有界性を要求していたため、境界値による定数項が$ 0になる。
$ \therefore\lang f',\phi\rang=\int_{\R}f'\phi{\rm d}x=-\int_{\R}f\phi'{\rm d}x=\lang f,\phi'\rang
したがって、超関数$ fの微分$ f'を
$ \lang f',\phi\rang=\lang f,\phi'\rangのように定義する。
超関数が一位に定まれば、超関数の微分も一位に定まるSummer498.icon
可積分だが不連続な関数の微分
不連続な関数は少なくとも不連続点において微分不可能である。
不連続な関数は不連続点において左極限と右極限が一致しない。
$ \exist c\in\R\ s.t.\lim_{\Delta\to -0}f(c+\Delta)\ne\lim_{c\to +0}f(c+\Delta)
微分可能な関数は、各点において微分の定義式の左右極限が一致する。
$ \forall x\in\R\ \lim_{\Delta\to -0}\frac{\phi(x+\Delta)-\phi(x)}{\Delta}=\lim_{\Delta\to +0}\frac{\phi(x+\Delta)-\phi(x)}{\Delta}
不連続な関数は不連続点において微分の定義式の左右極限が一致しないので微分できない。
$ \exist c\in\R\ \lim_{\Delta\to-0}\frac{\phi(c+\Delta)-\phi(x)}{\Delta}\ne\lim_{\Delta\to0}\frac{\phi(c+\Delta)-\phi(x)}{\Delta}
以下のヘヴィサイトの階段関数を考えてみよう
$ H_c(x)=\left\{\begin{matrix}0\quad(x<0)\\1\quad(x>0)\\c\quad(x=0)\end{matrix}\right.\qquad c\in\lbrack0,1\rbrack
$ c=0のとき、ステップ関数と呼ばれる。
これは$ x=0で明らかに不連続である。
$ cをいかなる値に設定しても連続にならない。
しかし、この関数は有界なので可積分である。
したがって、内積を考えることができる。
$ \lang H_c,\phi\rang=\int_{\R}H_c\phi(x){\rm d}x=\int_{x\ge0}H_c\phi(x){\rm d}x
先程の超関数に関する微分の議論から、本来微分不可能なヘヴィサイトの階段関数に関する微分を考えてみよう。 $ \lang H_c',\phi\rang=\lang H_c,\phi'\rang=-\int_{-\infty}^\infty H(x)\phi'(x){\rm d}x
$ =-\int_0^{\infty}\phi'(x){\rm d}x$ \qquad\because$ H_c(x)の定義から
$ =-\lbrack\phi(x)\rbrack_{x=0}^{x\to\infty}
$ =-(-\phi(0))=\phi(0)$ \qquad\because$ \phiは有界なので$ x\to\infty\Rightarrow\phi(x)\to0
ここで、ディラックのデルタ関数の定義は$ \lang\delta,\phi\rang=\phi(0)であった。
したがって、
$ \lang H_c',\phi\rang=\lang H_c,\phi'\rang=\phi(0)=\lang\delta,\phi\rang
$ \therefore H'_c=\delta
TODO: 内積を複素数で定義する
積分を複素数上で定義しなくちゃいけなくなってダルい
まかせたSummer498.icon
takker.iconの課題とするSummer498.icon
↑繰り広げられるn次受けSummer498.icon