モーショングラフィックス文化とTVアニメのクレジットシーケンス
大橋史
https://gdr.jagda.or.jp/articles/71/
◎モーショングラフィックスとは
「モーショングラフィックス」という言葉を最初に用い始めたのは、CGアニメーションの父と呼ばれるジョン・ホイットニー
Vertigo (1958) title sequence
「映画のタイトルにおいてソール・バスが確立に尽力してきたような明確な表現性(articulation)が成立する場合、それは成功だといえます。しかし、そのタイトルが効果的な動きや明確な表現性を欠く場合、それは本のカバーデザインみたいなものです。この明確な表現性こそが私が『モーション・グラフィックス』という言葉で言及しているもので、デザインの領域におけるまったく新しい課題なのです。この領域についてはほとんど探究されていないため、デザイナーは細心の注意と適切なチャレンジ精神をもって取り組まねばなりません。」(John Whiteney, Digital Harmony, On the Complementarity of Music and Visual Art, Byte Books, 1980, pp. 156-157より一部意訳)
孫引き注意
ジョン・ホイットニーによるモーショングラフィックス前史
19世紀末
表現主義
ヴァシリー・カンディンスキー
パウル・クレー
ラースロー・モホイ=ナジ
バウハウス
抽象芸術
1920年代から40年代
抽象映画
ヴァルター・ルットマン
オスカー・フィッシンガー
『黄金の腕』(監督:オットー・プレミンジャー、1955)タイトルバック 
リズミカルな長方形の図形とタイポグラフィによるモーショングラフィックスが、それらの抽象映画と同様の、音楽を目で見ているかのような演出する
ソール・バスの代表作
ソール・バスはバウハウス出身のジョージ・ケペッシュに学び、その視覚言語の考え方に影響を受けていた。>
Se7en (1995) title sequence
日本では1997年に、映像作家の菱川勢一とグラフィックデザイナーのナガオカケンメイが運営するDRAWING AND MANUALの企画による『モーショングラフィックス展』が六本木・AXISギャラリーで開催
本展では実際のものから架空の提案まで企業ロゴを動かした作品が提示
日本に「モーショングラフィックス」という言葉が普及するきっかけ
2006年には『日本の映像作家100人 Japanese Motion Graphic Creators』(ビー・エヌ・エヌ)という年鑑が刊行
『STUDIO VOICE』誌が「映像表現のニュー・ヴィジョン」特集
◎動画プラットフォームとコミュニティの結晶化
YouTubeは有害サイト
クリエイターたちの受け皿となったのがYouTubeの一年ほど前から存在していた「Vimeo」という動画プラットフォーム
それまでは映画祭やDVD
モーショングラフィックスは各スタジオのサイトに埋め込まれた低画質の映像か、DVDマガジン『stash』(Stash Media Inc.)に収録されたものを鑑賞するような流れがせいぜい
SOUR '日々の音色 (Hibi no neiro)'(2009)
◎モーショングラフィックスとクレジットアニメーションとの接続
『カウボーイビバップ』(1998)オープニング
『ヤマノススメ セカンドシーズン』(2014)OP
「四畳半神話体系」(2010)ED
クリエイティブディレクターの川村真司とVimeo上で話題作を発表していた映像作家の細金卓矢
2010年代前半にはTVアニメのクレジットタイトルにYoutubeで話題を集め注目されたMVやTVCMのディレクターを起用する流れが生まれていった。
2013年には乃木坂46のMVで有名な池田一真が『サーバント×サービス』のOPを監督
2015年にはPerfumeのMV監督の関和亮が『すべてがFになる』のOPを演出
2021年には『呪術廻戦』シーズン1のEDをCMディレクターの長添雅嗣が監督
◎高精細化とビジュアルデベロップメント
Ash Thorpが2015年に発表したデジタルクリエイターのカンファレンス「FITC Tokyo 2015」のOPムービー
FITC Tokyo 2015 Titles
Ash Thorpの他の代表作
映画『トータル・リコール』(2012)
『エンダーのゲーム』(2013)
『すべてはFになる』のEDを制作した橋本麦や、スタジオカラー制作の『龍の歯医者』のOPアニメーションを制作した千合洋輔と荒牧康治は同作の影響を公言している。
◎セルアニメとの融合へ
『ダーリン・イン・ザ・フランキス』シーズン2OP(2018)
モーショングラファーがこの「撮影」も担うようになってきた
千合洋輔、荒牧康治、神谷雄貴
『呪術廻戦 渋谷事変』(2023)OP
神谷雄貴
実写MVの監督キャリアを活かした照明効果