ベーシック圏論6章1節
読んだ内容を軽くまとめます.
これまでの章で個別に見てきた随伴性、表現可能性、極限は全て普遍性を異なる角度から見たものである。この章ではこれら3つの概念の相互作用を通して普遍性への理解を高める
6章のハイライト
関手圏での(余)極限は最も単純な方法で機能する
米田埋め込みは極限を保存する(が余極限はそうでない)
表現可能関手は前層の素数のようなものである:全ての前層は表現可能関手の余極限として標準的に表せる
右随伴関手は極限を保存し、いくつかの仮定をおけば逆も成り立つ
前層の圏$ \lbrack \mathbf{A}^\mathrm{op}, \mathbf{Set}\rbrackは$ \mathbf{Set}と同じような構造をしている
6.1 表現可能関手と随伴による極限の定義
便利なので極限の定義を表現可能関手や随伴を用いて言い換えていく。
対角関手
$ \mathbf{I}, \mathscr{A}を圏、$ A\in\mathscr{A}とする。このとき関手$ \Delta A:\mathbf{I} \to \mathscr{A}を全て$ Aにおくる定数関手とする。これによって次の対角関手が定まる。
$ \Delta:\mathscr{A}\to \lbrack \mathbf{I}, \mathscr{A} \rbrack
錐関手
$ D:\mathbf{I}\to\mathscr{A}を図式、$ A\in\mathscr{A}とする。$ D上の$ Aを頂点とする錐とは、自然変換$ \bar p:\Delta A\to Dである。
また、$ \mathrm{Cone}(A, D)を$ D上の$ Aを頂点とする錐全体とするとこれは関手$ \mathrm{Cone}(-, D):\mathscr{A}^\mathrm{op} \to \mathbf{Set}を誘導する。また、$ \mathrm{Cone}(A, D)=\lbrack \mathbf I, \mathscr A \rbrack(\Delta A, D)。
※錐の自然性は次の図式が可換になると言うことに対応している。
https://gyazo.com/ce589859de1894a81f211030b1660fed
極限錐は表現である
$ D:\mathbf{I}\to\mathscr Aを図式とする。このとき$ D上の極限錐と関手$ \mathrm{Cone}(-, D)の表現との間に1体1対応が存在する。
(証明)
補題4.3.2より$ \mathrm{Cone}(-, D)の表現とは、然るべき普遍性をもった$ D上の推で構成される。その普遍性こそが極限錐の定義における普遍性そのものである。$ \square
極限の一意性
極限は同型を除いて一意
(証明)
$ \mathscr{A}(-, L)\cong \mathrm{Cone}(-, D)\cong \mathscr{A}(-, L')。よって補題4.3.10より$ L\cong L'。$ \square 図式の変換と極限
$ \mathbf Iを小圏としhttps://gyazo.com/342b2875d84730767627a405ef3c11fdを自然変換とする。また、
$ \left( \lim_{\leftarrow}D\xrightarrow{p_I}D(I) \right)_{I\in\mathbf{I}}および$ \left( \lim_{\leftarrow}D'\xrightarrow{p'_I}D'(I) \right)_{I\in\mathbf{I}}
を極限錐とする。
1. 一意的な射$ \lim_\leftarrow \alpha:\lim_\leftarrow D\to \lim_\leftarrow D'が存在して、各$ I\in\mathbf Iに対して次を可換にする。
https://gyazo.com/bcd56f35b776ae5fbfce70faea37dfe6
2. 与えられた錐$ \left( A\xrightarrow{f_I} D(I) \right)_{I\in\mathbf I}と$ \left( A'\xrightarrow{f'_I} D'(I) \right)_{I\in\mathbf I}と射$ s:A\to A'が任意の$ I\in\mathbf Iについて
https://gyazo.com/7ac525a2d0eb792450411c71d7b94b6b
を可換にするのなら
https://gyazo.com/543f8feb865e5d534fb1cb2d1c603d54
は可換。(ここで$ \bar fと$ \bar f'は普遍性により定まる極限への普遍射である)
(証明)
(1. ) まず、次の図式は可換であるから$ \left( \lim_\leftarrow D \xrightarrow{\alpha_I p_I} D'(I) \right)_{I\in\mathbf I}は$ D'上の錐である。https://gyazo.com/902a9b5ae106f9f6698d58b34b729cb0
よって、$ \lim_\leftarrow D'の普遍性から条件を満たす射$ \lim_\leftarrow \alpha:\lim_\leftarrow D\to \lim_\leftarrow D'が一意的に存在する。
(2. ) 各$ I\in\mathbf Iに対して
$ p'\circ \left(\lim_\leftarrow \alpha \right) \circ \bar f = \alpha_I\circ p_I\circ \bar f = \alpha_I \circ f_I = f'_I \circ s = p'\circ \bar f'\circ s
である。(最初の等号は(1. )より、2つ目の等号は$ \bar fの構成から、3つ目の等号は仮定より、最後の等号は$ \bar f'の構成から分かる。)
ゆえに今、各$ I\in\mathbf Iに対して下の図式が可換になっており、このような$ Aから$ \lim_\leftarrow D'への射は普遍性からただ一つである(演習問題5.1.36)。よって$ \lim_\leftarrow\alpha \circ \bar f = \bar f'\circ s。$ \square
https://gyazo.com/b541a86a5395b0c1ab08bc0e981fab9a
極限は右随伴
$ \mathbf Iを小圏、$ \mathscr Aを$ \mathbf I型極限を持つ圏とする。このとき$ \lim_{\leftarrow\mathbf I}:\lbrack \mathbf I, \mathscr A \rbrack \to \mathscr A;\ D\mapsto\lim_\leftarrow Dは対角関手の右随伴である。
https://gyazo.com/206ee00f345e4d184abeeaf8c8fdf6ff
(証明)
各$ D\in\lbrack\mathbf I, \mathscr A\rbrackに対し、その極限錐の頂点を$ \lim_\leftarrow Dで表すことにする。また、図式の変換と極限により$ \lbrack \mathbf I,\mathscr A \rbrackにおける射$ \alpha:D\to D'に対し標準的な射$ \lim_\leftarrow\alphaが定まる。これらにより$ \lim_\leftarrowは関手となる。 $ \lbrack \mathbf I, \mathscr A \rbrack(\Delta A, D)= \mathrm{Cone}(A, D)\cong\mathscr{A}(A, \lim_\leftarrow D)
また図式の変換と極限 2.において$ s=1_Aとすれば$ \lim_\leftarrow \alpha \circ \bar f = \bar f'となり、これは https://gyazo.com/b0f9c80de9ce53bf37b83ee866161c8b
が可換であることと同値である。よって上の同型の式は$ Dについても自然である。$ \square