4次元空間中の2次元複体は何も囲まない
3次元空間中の多面体の1-骨格は、厳密な意味では空間を内外に分けていない。 というのも、多面体の2-骨格は骨組みに布を張って周囲をぴったりとふさいだ状態のテントに喩えられるのだけれど、1-骨格はテントの骨を組んだだけで布を張っていない状態に喩えられる。ここでどこか遠くから飛んできた蝿を考える。2-骨格テントの内側には蝿は入れない。しかし、1-骨格テントの「内側(だと思っているところ)」には蝿は平気で入ってくるから、この意味において内外を区別できておらず、体積をもつ領域を囲んでもいないのだ。
公園のジャングルジムは1-複体の例だが、やはり蝿の侵入を防げる領域はない。
同様に、超立方体の2-骨格は4次元空間を内外に分けていない。 4次元空間中の2次元閉曲面も、超空間から超体積を切り出してはいないだろう。
また、我々の世界のおたまや水筒を(重力を想定した)4次元空間に持っていっても、おそらく機能しない。釣り針で水を掬うような真似になってしまうのではないか。
なお、4次元空間中の3-複体には超体積を囲んでいるものもあれば、囲んでいないものもあるので要注意。
超立方体の3-骨格は内外を分けることができる。
一方で3次元世界の分厚い金庫を4次元に持っていっても、ある方向から見れば土管のように筒抜けである。
根上生也の短編数学小説『四次元マンション』では、マンションには泥棒の侵入を防ぐための「4次元建築」が施されているという設定になっている。