2-3.授業外・授業内の学習デザイン、教材設計の工夫
本ページの作成日:2021/3/15
本ページの最終更新日:2021/3/15
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達成目標や評価の方法が決まれば、授業の「中身」を設計する段階に入ります。
その際には、以下のようなポイントをおさえることが重要です。ここでは、それぞれについて解説します。
授業外学習の設計・開発
学習デザイン
教材設計の工夫
対面授業内の学習活動の設計
(1) 授業外学習の設計・開発
授業外学習
授業外で学んでおくべき内容と学習活動を設計する
学習デザインを考える(後述)
2単位の授業の場合・毎回3時間までを基準に
授業外教材のポイントは「疑問を残す」こと
授業外で完結してしまわないように(授業外学習と対面授業の連続性が大切)
他者が作成した教材の場合、視聴する以外の活動を課す
学生の理解を得ることも大切
学生の一定割合は反転授業やアクティブラーニングを望んでいない → 反転の意義・意味を知らせることが重要
フリーライダーを許さない仕組み(ジグソー法(後述)なども効果的)
(1-1) 学習デザイン
学習デザインとは
学習活動自体をデザインする方法・プロセス
学習活動の種類、順序、必要な時間等を考慮して進捗確認・介入のポイントを決める
学習者はどのような順番で、どのような学習をしていくのかに着目
学生に伝わる学習デザインを
「いつ、どのような学習活動をしてほしいか」(そして各活動はどのように確認されるか)が学生に伝わっているか
例)ビデオのオンデマンド教材を視聴する場合
視聴しないとどうなるのか、ノートテイクが求められているのか、理解できない場合何をすればよいのか、関連して読んでおく文献などはあるのか… などが学生に伝わるように設計・教材開発をする
オンライン授業のスタディスキルは学生にもない(ビデオの場合「とにかく視聴しておけばよい」と思いがち)
「活動させる」だけでなく、アセスメント(評価)とセットにすることが重要
対面授業では、学生の様子を見ながら指示できる内容が多い
学習デザインのイメージ
学生に行ってほしい学習活動のフローチャートのイメージ
https://scrapbox.io/files/60462bb920389c001cb84f1e.png
学習デザインからみた学習支援・指導のポイント
「ゲート」
「分岐」
「アセスメント」
以下、それぞれについて説明
ポイント1:ゲート
一定の条件をクリアしないと次の学習活動に進めないポイント
どこに・どのような形でゲートを設けるか
通常単元(教授内容のまとまり)ごとに設ける
注意点
学生にゲートがあることを知らせておく
ゲートを抜けられなかった時の処遇の妥当性
多すぎても少なすぎてもよくない
ポイント2:分岐
学習者の一部を異なる学習活動に導く操作
ゲートやアセスメントの結果との関係
メインの流れとそこから分岐する流れ
注意点
複雑な分岐を作らない
学習の遅れにつながる可能性を考慮
前向きの分岐(学習活動のスキップ)もある
ポイント3:アセスメント
学習者の進捗を確認するための活動
妥当性と信頼性を確保する
注意点
多く実施しすぎないように
最終的な成績評価との関係を明らかにしておく
必ずしも「テスト」をするわけではない
「ひっかけ問題」はあまり意味がない
ゲートや分岐と組み合されないアセスメントもある
(1-2) 教材設計の工夫
ビデオだけが教材ではない
教材の種類は様々
ビデオ作成簡易ソフト(PPTでも作成可能)
ストリーミング配信⇔ダウンロードさせる
PDFやPPTに音声を添付したファイル
(小)テストコンテンツ(予習課題)
予習用Webページ(読ませる教材)
紙ベースの教材
効果を減じない範囲で省力化
省力化のための工夫
1.学外教材の利用:教材を「自作」しない
MOOCs、放送教材、図書館にあるビデオライブラリ…
多くの教材が無料で利用できる時代
2.ビデオ以外の教材を使う
読む教材でも構わない(オンライン化はした方がよい)
3.反転させる部分を限定する
問題の解説部分だけビデオ化
質問が出た部分だけ問題の解説(授業のオフィスアワー化)
本当に必要な授業回だけ反転
オンデマンドコンテンツのヒント
ビデオ教材の場合
1本あたりの教材は短いほどよい(最長でも20分、4~5分で十分、視聴する側にも利便性がある)
(参考文献)
井上博樹(2014)反転授業実践マニュアル.海文堂
ジョナサン・バーグマン、アーロン・サムズ(2014)反転授業.オデッセイコミュニケーションズ など
映像は「スマホで見られる」ことを前提に:人物はアップの画像中心に・PPTの文字フォントはゴシック系28pt以上を心がける→字幕は効果的、しかし使いすぎないように
画質より音質が重要
「原稿を間違いなく読む」は難しいうえに退屈→難しいならQ&A方式(インタビュー形式)で
文字中心教材の場合
「学生にさせること」(学習活動)が最も自由に設定できる:どの程度の時間を掛けさせるかを想定しておく
画面で読ませる場合、文字サイズ・フォントが重要(特にスマホ)
プリントアウトさせる場合、プリンターとの相性が関係ないようにPDF化
1~2ページで一つのコンテンツに
文字教材であるからこそアクティブにする必要
テスト教材の場合
レベル:難しすぎず、簡単すぎないように
LMSにアップロードする教材としても、LMSの機能自体を活用しても作れる
結果の即時フィードバック:LMSの機能もあり
ゲートキープとしての設定(合格点、受験回数、ランダム出題、フィードバック時の解説内容など)
授業全体の成績評価との関係を明示
(2) 対面授業内の学習活動の設計
対面授業を設計・開発
対面授業で学ぶべき学習内容と活動
対面授業のポイントは「教えない」こと
アクティブラーナーにするための反転(ファシリテーターとして授業に参加)
質問を受けたら教える
ファシリテーターとしてのスキルを身につける
教育ではなく学習活動に焦点を当てる
コーチングができるように
反転授業で最も大きく変わるのは対面授業
インストラクタとファシリテータ
教員はインストラクターではなくファシリテーターに
インストラクター:教授活動(インストラクション)が主な職責
教える、指示する、評価するのが仕事
特徴:権威がある、プレゼンテーションがうまい
ファシリテーター:学習者の学びを助ける
モチベーションを保つ、効果的・効率的な学習方法を提案する、進捗管理を助けるのが仕事
特徴:親しみがある、応答やアドバイスがうまい
成績評価にも注意
学習活動・学習成果と評価の一致度が重要
対面授業のアクティブラーニングを思いつきで設計してしまうと、評価をないがしろにするケースもある
チェックポイント
授業外に学ぶ内容も評価対象に含める
対面授業の活動は、個人の成果とグループの成果を分けて評価する
能動的な活動を評価する(受動的なだけの学びを求めていないことを繰り返し強調)
グループ活動のチェックポイント
適切なグループサイズ:
3~6人
適切な役割分担:
司会進行役、調査役、反対意見を述べる役、記録・報告役……
適切な課題:
1.グループ活動の成果をどのように報告し、どのように評価するか(ゴールや良し悪しを学生自身が判断できる課題)
2.グループ活動に適した課題(議論などせずに、一人で取り組んだ方が効率的な課題にしない)
時間配分の確認
グループ活動の可視化
グループ活動をやりっぱなしにしない
学生自身に可視化・報告させる
グループ活動の過程・成果を記録する(フリーライダー対策も)
記録フォーマット・記録係を決めてディスカッションさせる
オンラインでPPTなどの成果物を作らせる(Google, Miroなど活用)
何を評価するのかをグループ活動開始前に学生に伝える
成果に対するフィードバックをできるだけ早く返す
反転授業の設計についてまとめると…
達成目標→テスト・評価→授業方法→教材・コンテンツの順で設計・開発
ゲート(学習デザイン)の設定:いつ・何をチェックするのか
短いコンテンツを多数:長いコンテンツを避ける
スマホ・タブレットへの対応:フォント、画質、学生の操作
対面授業で行うことは対面でないとできないことに絞る
グループ活動ではサイズ・役割・課題・可視化をチェック