プリマス駅の銃撃犯は夫の仮想人格を導入
TDLimg.icon プリマス駅で若い女性を射殺したメイベル・ジェーン・スタッフォードだが、亡き夫の仮想人格を導入していたことがわかった。故グレゴリー・スタッフォード中尉は海軍士官として外洋に出ることも多く残された妻が寂しくならないようにと自身の仮想人格を、導入させていたとされる。妻のメイベルは夫の仮想人格を導入するだけで、実際にはその人格を発動することはなかったという。しかし、一発の銃弾で女性を狙い撃ちしたことについて、射撃の名手といわれた夫の技術ではないかとの疑いがもたれていた。 精神鑑定を行ったプリマス病院のジョン・ミルフォード医師は、メイベル・ジェーンは仮想人格を発動していなかったが、仮想人格の影響をうけていたと考えられると話した。
メイベル・ジェーンがプリマス駅でジェーン・リディックを偶然見かけたとき、一瞬心が騒ぐのを感じた。見知らぬ女性がどうしたのだろうか。しかし、メイベル・ジェーンはその刹那、大いなる秘密に触れた気がした。彼女はバッグに入れておいた夫の形見の拳銃を取り出すと、狙いも定めずに撃った。その弾丸は不幸にもジェーン・リディックまで目標を失うことはなかった。
メイベル・ジェーンの行動は衝動にかられたものではなかった。そのとき働いた女性の勘は、一瞬の心の動揺がメイベル・ジェーン自身でなく、仮想人格化された夫グレゴリーのものであると覚ったのである。そして、それがすべての事実を彼女に教えた。隠された夫のかつての裏切りを。
果たしてメイベルに罪はあるのだろうか。不幸なジェーン・リディックを撃ち殺したのはグレゴリーの拳銃であり、弾丸である。その射撃の技術も夫のものである。メイベル・ジェーンにはまともに拳銃を発射する技術はないだろう。
動機? はたしてメイベルに動機はあったのだろうか。見知らぬ女性でしかないジェーン・リディック。夫の仮想人格のわずかな動揺がなければ、お互いすれ違ったことさえ覚えていない程度の関係。仮想人格化されてもなお動揺するだけの、まやかしさを感じていたのはグレゴリーでなかったか。そのまやかしさを消すために、仮想人格の射撃の技術が発動されたのではなかろうか。
通常、仮想人格の行為の主体は真の人格をもつ身体保有者と考えられている。しかし、真の人格が認識できる範囲外での仮想人格の行為が問題となることもある。この事件においても、仮想人格自らが発動するという真の人格の意思を無視した行為であり、責任の所在がどこにあるのかを判断することは難しいといえる。
―巡回裁判での精神科医ジョン・ミルフォードの証言
プリマスの巡回裁判では、この件につき検討され、最終的にメイベル・ジェーンには無罪の判決が下された。そして、夫の仮想人格は消去され、そのプログラム・カルテは廃棄されることとなった。 関連記事
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