論理哲学論考における「哲学」と「自然科学」の関係について記述
哲学とはなんなのか、に触れている断章が4項にある。自然科学との対比として記述されている
哲学は自然科学ではない
哲学の目的は思考の論理的明晰化である
哲学は学説ではなく、活動である
哲学の仕事の本質は解明することにある
以下、野矢茂樹『言語哲学がはじまる』第5章『論理哲学論考』の言語論 「為すべきは説明ではなく解明」(200ページ)より
自然科学は「説明」する
「説明」とは「仮説」を立てて「説明」すること
哲学は「解明」する
「解明」とは実情を記述し(ありのままを受け入れ)明晰に見通すこと
ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン『哲学探究』109節
われわれの考察はいかなる仮説もあってはならない。あらゆる説明は退場し、ただ記述だけがそれに取って代わらなければならない
岩波文庫版 野矢茂樹
4.0 <本文なし>
4.00 <本文なし>
4.001 命題の総体が言語である。
<略>
4.01 命題は現実の像である。
<略>
4.05 現実は命題と比較される
4.06 命題は現実の像であることによってのみ、真か偽でありうる。
<略>
4.1 命題は事態の成立・不成立を描写する。
4.11 真な命題の総体が自然科学の全体(あるいは諸科学の総体)である。
4.111 哲学は自然科学ではない。(「哲学」という語は、自然科学と同レベルのものを意味するのではなく、自然科学の上にある、あるいは下にあるものを意味するのでなければならない。)
4.112 哲学の目的は思考の論理的明晰化である。 哲学は学説ではなく、活動である。 哲学の仕事の本質は解明することにある。 哲学の成果は「哲学的命題」ではない。諸命題の明確化である。 思考は、そのままではいわば不透明でぼやけている。哲学はそれを明晰にし、限界をはっきりさせねばならない。
4.1121 他の自然科学に比して心理学がより哲学に近いわけではない。 認識論は心理学の哲学である。 記号言語に関する私の研究は、哲学者たちが論理の哲学にとってきわめて本質的とみなしていた思考過程の研究に相当するものとなってはいないか。彼らはほとんどの場合いたずらに非本質的な心理学研究にまきこまれていたにすぎない。私の方法にも、同様の危険がある。
4.1122 他の自然科学の仮説に比してダーウィンの理論がより哲学と関係するということはない。
4.113 哲学は自然科学の議論可能な領域を限界づける。
4.114 哲学は思考可能なものを境界づけ、それによって思考不可能なものを境界づけねばならない。 哲学は思考可能なものを通して内側から思考不可能なものを限界づけねばならない。
4.115 哲学は、語りうるものを明晰に描写することによって、語りえぬものを指し示そうとするだろう。
4.116 およそ考えられうることはすべて明晰に考えられうる。言い表しうることはすべて明晰に言い表しうる。
4.12 命題は現実をすべて描写しうる。しかし、現実を描写するために命題が現実と共有せねばならないもの論理形式を描写することはできない。 論理形式を描写しうるには、われわれはその命題とともに論理の外側に、すなわち世界の外側に、立ちうるのでなければならない。
<略>
4.2 命題の意味とは、事態の成立・不成立の可能性と命題との一致・不一致である。
4.3 ~ 4.4 <略>
4.5 <書かないけどすごく重要な断章。とても大事>
5 命題は要素命題の真理関数である。(要素命題は自分自身の真理関数である。)
Pears/McGuinness 英訳版
4.1 Propositions represent the existence and non-existence of states of affairs.
4.11 The totality of true propositions is the whole of natural science (or the whole corpus of the natural sciences).
4.111 Philosophy is not one of the natural sciences. (The word ‘philosophy’ must mean something whose place is above or below the natural sciences, not beside them.)
4.112 Philosophy aims at the logical clarification of thoughts. Philosophy is not a body of doctrine but an activity. A philosophical work consists essentially of elucidations. Philosophy does not result in ‘philosophical propositions’, but rather in the clarification of propositions.Without philosophy thoughts are, as it were, cloudy and indistinct: its task is to make them clear and to give them sharp boundaries.
4.1121 Psychology is no more closely related to philosophy than any other natural science. Theory of knowledge is the philosophy of psychology. Does not my study of sign-language correspond to the study of thought-processes, which philosophers used to consider so essential to the philosophy of logic? Only in most cases they got entangled in unessential psychological investigations, and with my method too there is an analogous risk.
4.1122 Darwin’s theory has no more to do with philosophy than any other hypothesis in natural science.
4.113 Philosophy sets limits to the much disputed sphere of natural science.It must set limits to what cannot be thought by working outwards through what can be thought.
4.115 It will signify what cannot be said, by presenting clearly what can be said.
4.116 Everything that can be thought at all can be thought clearly. Everything that can be put into words can be put clearly.