人間知性新論
人間知性新論
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《人間知性新論》におけるフィラレートとテオフィルの架空の対話は、ありえなかったロックとライプニッツとの対話篇である。それは、経験論と合理論の二つの哲学的伝統の最も偉大な魂の間で交わされる対話に他ならない。 魂はタブラ・ラサ(何も書かれてない板)ではない。魂はその本来の内容、本有的概念をもつという〈モナド論〉的に把握された魂の形而上学的考察に始まり、観念・言葉・真理・認識という主題をめぐり、ライプニッツの哲学が、自由に鮮明に語られる。そして、この書のどのページからも〈時代を絶した至高の知性人〉(ラッセル)の知性の輝きが感じとれる。 なぜここにラッセルが出てくるのか、さっぱりわからない これかな?
この書の影響は、カントのいわゆるコペルニクス的転回から、現代ではチョムスキーの言語理論にまで及んでいる。近代以降の人間中心の世界観に対する反省から、自然と神と人間とが微妙な調和を保っていた〈バロックの哲学者〉の精神が今よみがえる。それは、世界観全体の重心の移動の可能性すら秘めて、混迷する思想界に一つの方向を指し示すであろう。 [初版1987年12月10日発行]
目次
凡例
序文
I 本有的概念について
1 人間の精神の内に本有的原理があるかどうかについて
2 本有的であるような実践の原理は全く存在しないということ
3 思弁に関わる本有的原理と実践に属する本有的原理とに関する、別の考察
II 観念について
1 観念一般が論じられ、人間の魂が常に思惟しているかどうかが折に触れて検討される
2 単純観念について
3 一つの感官から私たちにやってくる観念について
4 固性について
5 さまざまな感官に由来する単純観念について
6 内省に由来する単純観念について
7 感覚と内容との双方に由来する観念について
8 単純観念に関する補論
9 表象について
10 把持について
11 識別について、あるいは観念を区別する能力について
12 複雑観念について
13 単純様態について、そしてまず空間の単純様態について
14 持続について、そしてその単純様態について
15 持続と拡がりとを合わせた考察について
16 数について
17 無限について
18 他のいくつかの単純様態について
19 思惟に関する様態について
20 快苦の様態について
21 力能について、そして自由について
22 混合様態について
23 実体についての私たちの複雑観念について
24 実体の集合的観念について
25 関係について
26 原因について、結果について、そして他の幾つかの関係について
27 同一性あるいは差異性とは何であるか
28 他の諸関係について、特に道徳的関係について
29 明晰な観念と曖昧な観念、判明な観念と混雑した観念について
30 実在的観念と空想的観念について
31 完全な観念と不完全な観念
32 真なる観念と偽なる観念について
33 観念の連合について
III 言葉について
1 言葉ないし言語について
2 言葉の意味について
3 一般的な名辞について
4 単純観念の名について
5 混合様態と関係の名について
6 実体の名について
7 不変化語について
8 抽象的名辞と具体的名辞について
9 言葉の不完全性について
10 言葉の誤用について
11 今しがた述べられた不完全性と誤用とに施され得る矯正策について
IV 認識について
1 認識一般について
2 私たちの認識の程度について
3 人間的認識の範囲について
4 私たちの認識の実在性について
5 真理一般について
6 普遍的命題、その真理性と確実性について
7 公準あるいは公理と名付けられる命題について
8 取るに足らない命題について
9 私たちの現実存在について私たちが持つ認識について
10 神の存在について私たちが持つ認識について
11 他の事物の存在について私たちが持つ認識について
12 私たちの認識を増大させる手段について
13 私たちの認識についての他の考察
14 判断について
15 確からしさについて
16 同意の程度について
17 理性について
18 信仰について、理性について、そしてそれらの別個な限界について
19 狂信について
20 誤謬について
21 諸学の区分について
注
訳者あとがき
索引