ロシアのウクライナ侵攻と安全保障理事会、国連
top
ロシアのウクライナ侵攻と安全保障理事会、国連
2022/2/24
冷戦体制がぶり返しているんではなくて?
イデオロギーによる対立、なんていうのはとうの昔に消え去っているか
国連そのものが、第二次世界大戦の戦勝国のものだった
常任理事国
安全保障理事会、議長国がロシアだった
一昨日に続き、ウクライナ情勢をめぐって夜の安保理緊急会合が開かれます。
国連の事務総長が「即興で」スピーチをするほか、理事国15カ国、ウクライナの外相が演説します。
全員分、ライブで訳してお伝えします。
写真は中国とロシアの国連大使が話す様子。
https://pbs.twimg.com/media/FMVA5sFWYAI3GC3.jpg
安全保障理事会緊急会合
安保理の議場の外には、理事国15カ国の国旗が掲げられています。常任理事国のものはずっと外されません
米国、英国、フランス、ロシア、中国。
この5カ国が負っているものは、とても大きいものですが、同時に、とてももろいものでもあります。
https://pbs.twimg.com/media/FMVas6iXIAAP5p0.jpg
2022/2/24
安保理緊急会合のさなか、ロシアのウクライナ侵攻が始まった
そのスレッド
劇的
人生の中で、最大の転回点にいると思う
第一次世界大戦のバルカン、第二次世界大戦のスペイン、
そして、今回のウクライナ、
と、ならないことを祈るが
日本もロシアの隣国であることを忘れてはいけないな
同様の展開が中国と台湾の間で起きたら、とか
北海道とロシアとか、
藤原学思
朝日新聞、ニューヨーク支局員
この人の記事を読みたくて、そのためだけに朝日新聞のサブスクリプションを契約するか悩んでいる
1) NY時間の日曜午後、また安保理会合があります。1月31日以来、6回目となります。
ただ、今度は少し趣旨が異なります。「国連総会緊急特別会合」という名の場を設けるためのものです。聞きなれませんが、かなり珍しい形態です。
大事な会合なので、整理をしておきます。
2022/2/27
国連総会緊急特別会合
国連や安保理は、ウクライナ危機に対して何ができるのか。国連を専門とする国際関係学者に聞きました。
国連の武器は"naming and shaming"、名指しして恥をかかせることだと言います。公の場で、いかに間違っているかを批判する。まさに、欧米諸国が試みていることです。
2022/2/27
NY時間10時、国連総会緊急特別会合が始まりました。
犠牲者に1分間の黙祷が捧げられ、これから総会議長、事務総長、100カ国の代表が順次、発言していきます。
ポイントは、数日以内に採択が見込まれる決議案の文言がどうなるか、何カ国が賛成するかです。
2022/3/1
2022/2/28
トーマス・ウィース
ニューヨーク市立大ラルフ・バンチ国際問題研究所 名誉所長
Thomas G.Weiss
国連を専門とする国際関係学者。「The United Nations and Changing World Politics」(国連と変化する世界政治)など国連に関する著書多数。ニューヨーク市立大大学院センター最高位の教授であり、同大ラルフ・バンチ国際問題研究所の名誉所長も務める。
2022/3/3
193カ国で構成される国連総会は2日昼(日本時間3日未明)、ロシアを非難し、ウクライナからの即時撤退を求める決議案を141カ国の賛成で採択した。反対はロシアなど5カ国。
反対はロシアのほか、ベラルーシ、北朝鮮、エリトリア、シリアだけ。中国やインドなど35カ国は棄権票を投じ、ベネズエラなど12カ国は票を入れなかった。
賛成141▽反対5▽棄権35▽無投票12
ウクライナ危機の深層 第46回
2022/3/11
星野俊也・大阪大大学院教授
前日本国連代表部次席常駐代表
国連総会がロシアを非難する決議を採択しました。193カ国中141カ国が賛成しました。
193カ国中141カ国が賛成
共同提案国が96カ国
西側の先進国のみならず、南の途上国や、ロシアと関係の深い国の一部までも含め、これほど多くの加盟国が一致してロシアを非難する場面を演出できたことは、きわめて重要です。世界のほぼすべての国の代表が一堂に会する国連総会だからこその光景でした。
しかも、今回の決議が採択されたのが、国連総会の「緊急特別会合」だったという点にも意義があります。これは1950年、総会で採択された「平和のための結集(Uniting for Peace)決議」に基づくものです。朝鮮戦争をめぐり、ソ連(当時)の拒否権で安保理の身動きが取れなくなった際に、総会にバトンタッチをして、国際の平和と安全の議論を進めるために編み出された制度です。安保理の要請としては、実に40年ぶりに開かれました。歴史の教科書に載るようなことが、いま目の前で、実際に起きています。
平和のための結集決議
Uniting for Peace
緊急特別会合の要請は2月27日。その2日前、安保理でロシアを非難する決議案が否決になっていました。この決議案を主導した米国、アルバニアは、事態の重要性に鑑みて、特例的に安保理メンバー以外にも決議案への共同提案を広く呼びかけました。名を連ねたのは80カ国以上に上ります。もちろん、安保理でロシアが拒否権を行使することは目に見えていて、それでもあえて、ロシアにぶつけたわけです。
米国、アルバニア
国際社会の総意はどのようなものかをわからせる。ロシアを包囲し、孤立させ、最大限の圧力をかける。そうした狙いを考えれば、制度や手続きを駆使し、決議の文言調整まで、限られた時間で考えられることはやったと言えます。満点に近いのではないでしょうか。対ロシア政策は今後、各国の個別対応になりますが、この決議が一つのスタンダードになります。
2022/3/22
ウクライナ危機をめぐり、193カ国で構成される国連総会の「緊急特別会合」が近く再開されることになった。国連外交筋が明らかにした。各国が数日間にわたって意見を述べ、ウクライナの人道状況についての決議案を採択する見通しだ。
フランスとメキシコは21日までに、各加盟国に決議の草案を配布した。朝日新聞が入手した草案は前文19項目、主文14項目で構成。「ロシアが即座に、完全に、無条件にウクライナ領内から軍隊を引きあげる必要性を想起する」「ロシアによるウクライナに対する敵対的行為がもたらした悲惨な人道的結果に遺憾の意を表す」といった文言が並ぶ。
フランスとメキシコ
欧州の外交官は取材に、「前回の決議案では35カ国が棄権した。だが、時間が経つにつれて現場で何が起きているのかが明らかになり、今回棄権することにはためらいがあるのではないか」と指摘。「141カ国以上の国が賛成票を投じることを期待している」と話した
前回(3/3)の141カ国以上の国が賛成票を投じることを期待
2022/3/23
国連安全保障理事会(15カ国)は23日、ロシアによるウクライナ侵攻を巡り、ロシアが独自に作成した人道決議案を採決したが、賛成票が足りずに否決された。ロシアと中国が賛成し、米国や英国など残りの全13カ国は棄権した。
安全保障理事会
2022/3/23
「ソ連は死んだ」「最初に銃を撃ち、それから医師を装うことはできない」――。国連安全保障理事会の非常任理事国として、印象的な言葉を多く残し、存在感を増している国があります。アルバニアです。ウクライナ問題では、安保理で米国とともに議論を主導する「ペンホルダー」を務めています。 地中海に面するアルバニアの人口は280万人。経済的にも決して豊かとは言えません。ただ、フェリット・ホジャ国連大使は「できるだけ大きな声をあげ、できるだけはっきりと、大胆に行動しなければならない」と言います。ウクライナ危機に揺れたこの1カ月をどうみているのか。安保理には今後、何ができるのか。ニューヨークのアルバニア国連代表部に、ホジャ大使を訪ねました。
「安保理で働くということは、どれほど悲しいことなのか」。それが私の最初の反応でした。続いて「理事国15カ国の外側から、どれほど高い期待をかけられているか」を痛感しました。15カ国には15の立場があり、極めて重要な問題について15の見解をどのようにして一つにするのかと。「平和と安全」は誰でも支持するものです。ひとの命を救うこともそうです。ただ、ではそれをどのようにして行動として具体化するのか、ということに戻っていく。結果が出ないことにストレスもたまります。
我々はあの夜、様々なシナリオを想定していました。時間についてはわかっていませんでしたが、「何かが起こる」ということはわかっていました。アルバニアは15カ国中、最初の発言者でした。その直後に、私の同僚がニュースを見せてくれました。「プーチンが軍隊の移動を命じた」と。
間違いなく、最も歴史的で、最も痛ましく、最も劇的な瞬間の一つです。大国が、安保理の常任理事国が、他の国々の平和と安全に責任を持つ国が、隣にある自分たちよりも小さな国を攻撃したのです。しかも、安保理の会合中に、です。私たちが正しかったという点で驚きはありませんでしたが、何かが間違っていた。複雑な心境でした。
2022/3/24
2回目の国連総会緊急特別会合
ウクライナ危機をめぐる総会緊急特別会合は、これで2回目となる。前回は2月末から3日間開かれ、今月2日、ロシアを非難する決議が141カ国の支持を得て採択された。
欧米の理事国は今回、「ウクライナに対する侵略の人道的結果」と題した決議案を用意。現在の人道危機を引き起こしたロシア軍の即時完全無条件撤退を迫るもので、欧米、日韓など「96カ国」(キスリツァ氏)がすでに共同提案国に名を連ねている。
96カ国が共同提案
だが、前回は棄権だった南アフリカが、ロシアへの言及を一切避けた決議案を提出。前回棄権票を入れた35カ国のうち17カ国がアフリカの国で、南ア決議案に票が流れる可能性がある。
南アフリカが別の決議案を提出
そうなれば、国際社会が分裂しているとの印象を与えかねない。国連のデュジャリック報道官は22日、グテーレス国連事務総長が望んでいるのは「結束だ」と主張。「この組織が最も力を発揮するのは、一つにまとまるときだ」と述べ、分裂の回避を求めるような発言をした。
両者の決議案は、人道危機の深刻さを強調するという点では一致している。
ただ、米国のトーマスグリーンフィールド大使は22日、南ア案について「人道危機の原因を特定していない」と指摘。英国のウッドワード大使も「人道危機の原因を明確にしない限り、国連が決議を求める意味はない」と不満を漏らし、ともに南アの代表と話し合っていることを明かした。
2022/3/25
国連総会(193カ国)は24日昼(日本時間25日未明)、ウクライナの人道危機について「ロシアの敵対行為の結果」と明記した決議案を採択した。2日に採択したロシア非難決議に続き、ロシア軍のウクライナからの即時完全無条件撤退を求めている。
投票結果は、賛成140▽反対5▽棄権38▽無投票10。前回の決議よりも賛成国が1カ国減ったが、圧倒的多数がロシアのウクライナ侵攻を容認しない姿勢である構図が改めて明らかになった。
今回 3/25
賛成140▽反対5▽棄権38▽無投票10
前回 3/3
賛成141▽反対5▽棄権35▽無投票12
多国間主義を掲げる国連がまとう「信頼のマント」に裂け目があるとして、「修復する最善の方法を見つけねばならない」と指摘。「その裂け目は、ウクライナ内外の紛争地域で人権侵害や食料不安に苦しむ数百万人に影響を与える」と訴えた。
そうした「裂け目」は、提出された決議案が複数になったことにも見て取れた。フランス・メキシコ案とは別に、ロシアと歴史的に関係の深い南アフリカはロシアの責任に触れない案を提出した。欧米諸国は取り下げを求めて説得を重ねたが、「政治的な思惑は盛り込まれるべきではない」(23日、南ア大使)という理屈ではね返された。
南アフリカは前回 3/3 は棄権
棄権した国 38カ国を賛成側に取り込む目論見は南アフリカの提案によって切り崩された
南アフリカというかアフリカ諸国の思惑とは?
2022/3/25
フランスとメキシコの人道決議案と南アフリカ案
採択後に40秒間の拍手が響いた今月2日とは違い、議場に熱気はない。
理由の一つは、前回採択されたロシア非難決議の賛成数141カ国を上回れなかったことだ。
賛成140カ国
たとえばアフリカ諸国(54加盟国)の棄権票は前回(17カ国)よりも増え、20カ国に上った。
アフリカ諸国(54加盟国)の棄権票は前回(17カ国)よりも増え、20カ国
また、人道決議の採決直後に「もう一つの決議案」について投票が行われることになっていたことも影響した模様だ。
この決議案の提出したのは南アフリカだった。南ア案は、同国が以前から一定の関係を保つロシアの責任には触れていない。また、23日に安全保障理事会で否決されたロシア提出の決議案と似ており、ウクライナのキスリツァ国連大使は二つを「双子の兄弟」と表現した。
南アフリカ
南ア案を採決するかどうかを決める投票では、結局、反対が67カ国で採決前に廃案となった。一方、「採決に賛成」とする国も50に上った。ブラジルやエジプト、サウジアラビアやタイは、人道決議案と南ア案ともに賛成した。後味の悪さを残し、ロシアへの対応が必ずしも一枚岩ではない現状を露呈することになった。
南ア案
採決反対が67カ国で採決前に廃案
採決賛成が50カ国
ブラジルやエジプト、サウジアラビアやタイは、人道決議案と南ア案ともに賛成
【反対=5カ国】
ベラルーシ、北朝鮮、エリトリア、ロシア、シリア
【棄権=38カ国】
アルジェリア、アンゴラ、アルメニア、ボリビア、ボツワナ、ブルネイ、ブルンジ、中央アフリカ、中国、コンゴ共和国、キューバ、エルサルバドル、赤道ギニア、エスワティニ、エチオピア、ギニアビサウ、インド、イラン、カザフスタン、キルギス、ラオス、マダガスカル、マリ、モンゴル、モザンビーク、ナミビア、ニカラグア、パキスタン、南アフリカ、スリランカ、スーダン、タジキスタン、トーゴ、ウガンダ、タンザニア、ウズベキスタン、ベトナム、ジンバブエ
【無投票=10カ国】
アゼルバイジャン、ブルキナファソ、カメルーン、コモロ、ドミニカ、ギニア、モロッコ、ソマリア、トルクメニスタン、ベネズエラ
2022/3/6
JNNニューヨーク支局長 萩原豊
圧倒的な“少数派”である「反対」「棄権」の国名を並べてみる。
◎反対(5):ロシア、ベラルーシ、北朝鮮、シリア、エリトリア
◎棄権(35):アルジェリア、アンゴラ、アルメニア、バングラデシュ、ボリビア、ブルンジ、中央アフリカ共和国、中国、コンゴ、キューバ、エルサルバドル、赤道ギニア、インド、イラン、イラク、カザフスタン、キルギス、ラオス、マダガスカル、マリ、モンゴル、モザンビーク、ナミビア、ニカラグア、パキスタン、セネガル、南アフリカ、南スーダン、スリランカ、スーダン、タジキスタン、ウガンダ、タンザニア、ベトナム、ジンバブエ
棄権した国、アフリカ諸国、多い
もうひとつ、アフリカの大国、南アフリカも「棄権」だった。アフリカでは、17か国が「棄権」の票を投じている。この南アの姿勢に、国内では「反対と同様、棄権も、ロシアの暴力を許容したものと同じだ」などと批判の声も上がっているという。旧ソ連との歴史的な深い関係が背景にあることも指摘されるが、ここでは、南アのジョイニ国連大使が発表した「国連総会の採決で、なぜ南アは棄権したのか」というタイトルの声明から読み解きたい。
声明では、南アも国際法、国連憲章の原則を守るよう全ての当事者に強く要請する、という前提のうえで、棄権した決議について、こう指摘している。
「決議は、外交、対話、調停に資する環境を整えるものではない」
「両者(ロシアとウクライナ)を対話に近づけることに、もっと注意を払うべきだ」
「決議は、紛争の解決に貢献するどころか、当事者の間により深く、くさびを打ち込む恐れがある」
決議によって、事態が悪化しかねないと警告しているのだ。
具体的には、「紛争の根本的な原因のひとつは、当事者の安全保障上の懸念にあると理解されている。この点について決議のなかに盛り込まれるべきだった」とした。
それ故、「安全保障理事会が国連憲章に定められた役割を果たすように促されるべきだ」。
つまり、安保理の「機能不全」を早急に改善すべきという主張だ。
さらに、国連総会の緊急特別会合について、「緊張を緩和し、敵対行為の停止を約束し、信頼を構築しながら、橋を架け、意見の相違に対応し、当事者が妥協の精神で関与するための勧告と支援を提供するプラットフォームとして活用されるべきであると考える」と説明した。
ロシアの武力行使そのものに非があるのは明白だ。立場によっては、両者の間に「橋を架ける」という言葉は、「絶対的な悪者」への譲歩に見えるかもしれない。一方で現在進む、暴力のエスカレートを止めることが最優先されるべきだろう。そのための「架け橋」「プラットフォーム」を作るべく、国連は動けるのだろうか。
そして、南アは、最後に、国連の対応について、こう断じた。
「意味ある行動をとらずに、単に平和を推進しているという印象を与えるだけのジェスチャーは、何の役にも立たないのである」
平和を推進しているという印象を与えるだけのジェスチャーは、何の役にも立たない
2022/3/6
3月2日の国連総会におけるロシア非難決議の際に明らかになったのは、アフリカの多くの国が賛成票を投じなかったことである。エリトリアが反対、アンゴラや南アフリカなど17カ国が棄権、ブルキナファソやモロッコなど8カ国が投票しなかった。54の加盟国のうち、26が賛成しなかったわけである。この理由は各国それぞれである。
アフリカ連合(AU)
南アフリカはBRICsの枠組みでロシアと従来から関係が深く、またラマポサ政権の「親西側」のスタンスを批判する勢力に配慮したと言われる(3月4日付Africa Confidential)。
南アフリカは BRICS の枠組みでロシアと従来から関係が深く
BRICs
Brazil, Russia, India, China
ブラジル、ロシア、インド、中国
BRICS
BRICs 4か国に南アフリカ共和国を加えた5か国が BRICS (5文字が大文字)と総称される
Brazil, Russia, India, China, South Africa
ロシア侵攻が開始された2月24日、AUはロシアに国際法を守るよう声明を出した。しかし、AU議長国のセネガルは、国連総会決議では棄権した。ルモンド紙は、外交筋の情報などから、1)ロシアからサイバー攻撃などを仕掛けられる恐れ、2)西側に追従する姿勢を批判する国内野党勢力への配慮、という2点を挙げている(3月4日付)。こうした状況は、多くの国に一定程度共通する。マリで典型的に見られた反仏感情は、西アフリカ諸国に広まっているということである。
AUはロシアに国際法を守るよう声明を出した
AU議長国のセネガルは、国連総会決議では棄権
この状況をどう解釈するかは慎重に分析すべき問題である。ロシアはアフリカに対して突出した武器輸出国であり、またRT(Russian Today)などメディアもかなりの国に浸透している(4日付AC)。また、アフリカでは、植民地支配などの経験から、西側の偽善に対する感覚も敏感である。いずれにせよ、今回の国連決議に対するアフリカ諸国の対応は、現時点での彼らの「感覚」を示したものであり、今後それがどう変化するのか、しないのかが注目される。
アフリカでは、植民地支配などの経験から、西側の偽善に対する感覚も敏感である
アフリカ諸国には、西側諸国への歴史的な不信感と、ロシアとの政治的経済的近しさと、がある
というかロシアや中国がそういう隙きを突いて、アフリカ諸国との関係を深めてきたというべきか
2022/3/26
きっかけは、南アフリカがロシアに一切触れない別の決議案を出したことだった。「国際社会はロシア非難で一致しているわけではない」。そんな印象を与え、採択された決議に影を落とした。
取材に対し、マブホンゴ氏は「純粋に南アが主導したものだ。ロシアとは何の関係もない」と、ロシアの圧力を否定。
国連総会では、同じ議題で複数の決議案がある場合、先に提出されたものを採決し、その後、別の決議案について決めるというルールがある。ウクライナはフランス・メキシコ案の採択後、「南ア案を採決にかけるか」について投票を要求した。
結果は賛成50▽反対67▽棄権36。これで、採決にすらかけられないことが決まった。ただ、マブホンゴ氏は言う。「多くの国が西側諸国の決議案を快く思っておらず、(ロシア案との)中間点を望んでいることを示したかった。だから、試みは成功だったと思う」
賛成50▽反対67▽棄権36
南アがロシア寄りの対応を取るのは、与党「アフリカ民族会議(ANC)」が長らく、反アパルトヘイト(人種隔離)闘争で、旧ソ連から支援を受けたことが影響しているとみられる。また、両国はともにBRICS(新興5カ国、他にブラジル、インド、中国)の一員だ。
ラマポーザ大統領は10日、プーチン大統領との電話会談後、「ロシアとウクライナで起きている状況について、理解を深めることができた」「プーチン大統領は我々のバランスのとれたアプローチを高く評価している」とツイッターに謝意を書き込んでいる。
ロシアを非難できないのは、南アだけではない。アフリカは国連に加盟する54カ国のうち、20カ国が採択された決議に棄権。前回採択されたロシア非難決議の時よりも、3カ国増えた。
ウクライナとロシアを軸に、欧米とアフリカ諸国の分断が明らかになった
2022/3/27
そもそも、ロシア側の発表を額面通りに受け取っていいのかどうかは、いつも判断が難しいのです。ロシア国内の大半のメディアは体制に従順ですし、軍をめぐる「偽情報」を処罰する法律もありますから、軍としては発表内容を検証されたり、批判されたりするおそれがない。ある意味、検証不能なことであっても自由に言えるわけです。
それに、本当に戦力を東部に集中させたいのなら、必ずしも記者会見でおおっぴらに言う必要はありません。発表することには何か別の理由があるかもしれないということも、考えておいて損はないように思います。
本当に戦力を東部に集中させたいなら記者会見でおおっぴらに言う必要はない
別の理由がある
ロシア軍は侵攻から1カ月経っても主要都市をほとんど落とせていない。ウクライナ側の発表では約1万6千人、ロシア側の発表でも1351人が死亡し、その数は増え続けています。もっともらしいことを言って、「犠牲に見合う結果を出したんだ」と国内向けにアピールする必要があったのではないかと私はみています。
国内向けにアピールする必要があった
内政に問題を抱えつつある?
2022/4/8
国連総会(193カ国)は7日、ウクライナに侵攻したロシアについて、人権理事会の理事国としての資格停止を求める決議を賛成93カ国、反対24カ国で採択した。
2022/4/8
表決は賛成が93カ国で、反対が24カ国。採択には棄権(58カ国)や無投票(18カ国)を除き、3分の2以上の賛成が必要だった。人権理理事国の資格を失うのは、2011年3月のリビア以来、2例目となった。
賛成93▽反対24▽棄権58▽無投票18
国連安全保障理事会(15カ国)の理事国としては、ロシアと中国の他に、アフリカのガボンも反対した。また、ブラジル、ガーナ、インド、ケニア、メキシコ、アラブ首長国連邦は棄権に回り、賛成したのは欧米の6理事国だけだった。
常任理事国(5常任理事国)
中国
フランス
ロシア
英国
米国
非常任理事国(10か国) ※( )内は任期期限年
アルバニア(2023)
ブラジル(2023)
ガボン(2023)
ガーナ(2023)
インド(2022)
アイルランド(2022)
ケニア(2022)
メキシコ(2022)
ノルウェー(2022)
アラブ首長国連邦(2023)
2022/4/13
「国連には失望することが多いかもしれません。でも絶望してはいけません」
「安保理は機能不全」。そう片付けるのは簡単だ。ただ、それは今回のウクライナ危機に始まったことではない。たとえばシリア内戦で、ロシアは中国とともに度々拒否権を行使している。米国にしたって、イスラエル・パレスチナ問題では拒否権を使うことをいとわない。
「国連には失望することが多いかもしれません。でも絶望してはいけません」
これは私がニューヨークに赴任する前、元国連事務次長の明石康さん(91)に言われた言葉だ。ただ、私はウクライナ侵攻が始まった当初、希望を見いだしづらかった。
「中立性」 neutrality
安保理や総会を取材していて、考えさせられたことがある。「中立性」についてだ。
私はその言葉について「真ん中に立つ」という捉え方をしていた。AにもBにも配慮して、どちらか一方に加勢することはないという意味だ。
この「中立性」を保とうとすれば、ロシア側にもウクライナ側にも寄らない立場を取ることになる。
だが今回、安保理や総会の場で大勢を占めたのは、ロシア側を明確に批判する立場を取る国々だった。ふだん「中立国」と呼ばれる国も、その例外ではなかった。
「公平性」 impartiality
演説を聞いていてわかったのは、各国代表が「中立性」のほかに「公平性」という概念も踏まえながら発言しているということだ。
一例を挙げると、240万人以上のウクライナ難民が国境を越えてきたポーランドは、欧州安全保障協力機構(OSCE)の議長国として3月14日、安保理会合に出席した。そこでラウ外相は、OSCE議長として「公平性」(impartiality)が欠如しているとロシアから指摘を受けていると切り出し、こう反論した。
「現在のようなときには、品位と誠実さを保つことが我々の道徳的義務だ」
「加害者はその行いによって裁かれる。だが、我々は、この惨事にいかに反応したかで裁かれる」
ラウ氏はさらに、ホロコーストを生きのびたノーベル平和賞作家、故エリ・ビーゼルの一節を引いた。
《無関心は常に敵の友だ。無関心が利益をもたらすのは、犠牲者では決してなく、攻撃者だからだ》
つまり、ラウ氏がいう「公平性」とは、国際的な規範に違反する国がいれば違反に目をつぶらず、公然と指摘することを躊躇(ちゅうちょ)しないということだろう。
「私たちが、国連なんですよ」“We are the UN.”
「中立性」や「公平性」にかかわる議論のなかで、ラウ氏の発言と並んで印象的だったのは、オーストリアのマーシック国連大使の言葉だった。
私はまた、「国連は機能不全」という主張に対し、どのように思うかも尋ねた。するとマーシック氏は「安保理だけの責任だ、というのは少し不公平な気がしますね」と言い、こう付け加えた。
“We are the UN.”
「私たちが、国連なんですよ」と。
「国連」という言葉は「世界の問題をなんでも議論、解決する国際機関」という風に捉えられがちだ。ただ、国連加盟国の国民一人ひとりがそれにコミットしていく必要があると、私はマーシック氏の発言の意図を受け止めた。
取材の終盤、マーシック氏は念押しするように、こう語った。
「責任を逃れるための手段として、中立性を悪用すべきではない、ということは言えるかもしれませんね。中立とは、紛争に参加しないことです。でも、無関心であること、目をそらすことを意味するわけではないんです」
2022/4/14
国連総会決議案
米国とリヒテンシュタインの国連代表部
38カ国が共同提案
安保理の常任理事国が拒否権を行使した場合、自動的に10日以内に国連総会の会合を招集する
拒否権行使の状況について報告書を提出する安保理に求める
国連総会の場で、拒否権行使について、説明を行わなければならない
米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は12日、国連安全保障理事会(15カ国)の常任理事国が拒否権を行使した場合に、自動的に国連総会(193カ国)で会合を開く国連総会決議案を準備していると明らかにした。来週にも決議案を加盟国に正式提示する。
米国と主導するリヒテンシュタインの国連代表部によると、安保理で拒否権が行使されてから10日以内に国連総会の会合を招集する。また、拒否権行使の状況について報告書を提出するよう安保理に求める。既に38カ国が共同提案国に名を連ねたという。
ウクライナ情勢をめぐり、安保理では2月25日、ロシアを非難し軍の即時撤退を求める決議案が、ロシアの拒否権行使で否決された。人道状況の改善を訴える決議案も、ロシアの拒否権を背景に安保理での採決が見送られ、国連総会に持ち込まれた。
新たな決議案は、こうしたロシアの拒否権行使を念頭に置いたものだ。193カ国が加盟する国連総会の場で説明責任を果たすよう求め、乱用を防ぐ狙いがある。
安保理の決議に関わる議案ではなく、国連総会に関する議案なので、国連総会での決議によって決定することが出来るんだな
常任理事国であっても、国連総会においては平等な一国にすぎないので、従う義務が発生するわけだ(?)
2022/4/15
松野博一官房長官は14日の記者会見で、国連安全保障理事会(15カ国)の常任理事国が拒否権を行使した際、自動的に国連総会(193カ国)で会合を開くことを柱とする国連総会決議案の共同提案国になったと明らかにした。
2022/4/18
リヒテンシュタインが主導してつくった総会決議の草案は、P5が拒否権を使った場合に10日以内に総会を開き、拒否権が行使された状況について話し合うと規定。さらに総会が開催される72時間前までに、安保理としての「特別報告書」を出すよう求めている。
リヒテンシュタイン国連代表部によると、15日夜までに米国や日本、韓国、オーストラリア、カナダ、ドイツなどが共同提案国になった。P5では他にフランスが取材に「賛成票を投じる」と明言した。
国連が公表している記録をもとに集計すると、1990年以降で拒否権を使ったのは、ロシア29回▽米国19回▽中国15回。英国とフランスは89年、米軍のパナマ侵攻を遺憾とする決議案に行使したのが最後となっている。
ロシア29回▽米国19回▽中国15回。英国とフランス1回
2022/4/17
リヒテンシュタインのウェナウェザー国連大使は今回の決議案の意義について「安保理の政治的な行き詰まりは根深く、総会がより責任を果たすことが重要だ」と語る。拒否権の行使に対する構想は2年半前から練ってきたという。
ウェナウェザー氏はまた、「国連憲章の起草者が念頭に置いていた制度的な関係は、過去数十年間で著しくゆがんでしまった。我々の構想は革命的なものではないが、それに対応したものだ」と指摘。特に、ウクライナ危機を抱える現在については「国連にとって岐路に立っている。必要な変化を選択するか、それを逃すかだ」と語る。
2022/5/27
国連安全保障理事会は26日、北朝鮮に対する制裁を強化する決議案を採決にかけた。米国が提出し、理事国15カ国のうち13カ国が賛成したが、常任理事国の中国とロシアが拒否権を行使し、否決された。対北朝鮮制裁をめぐり、安保理で拒否権が行使されるのは初めてとなった。
常任理事国の中国とロシアが拒否権を行使
対北朝鮮制裁をめぐり、安保理で拒否権が行使されるのは初めて
国連総会(193カ国)は先月、拒否権を行使した常任理事国に対し、総会の会合で説明を求める決議を採択している。この決まりが適用される初めてのケースにもなる。総会会合は来月上旬に開かれるが、実際に説明するかは中ロに委ねられる。
拒否権を行使した常任理事国に対し総会の会合で説明を求める決議が適用される
2022/6/2
石兼公博(きみひろ)
国連大使
ロシアとの対峙(たいじ)の仕方について、「ロシア対米国」「ロシア対NATO(北大西洋条約機構)」「ロシア対EU(欧州連合)」「ロシア対西側」という構図で描くということを推し進めすぎると、なかなかついてこられない国が出てきます。
「ロシア」 vs 「米国」
「ロシア」 vs 「NATO(北大西洋条約機構)」
「ロシア」 vs 「EU(欧州連合)」
「ロシア」 vs 「西側」
私はむしろ、これは「ロシア対法の支配/国際法/国連憲章の諸原則」という構図で提起することによって、国際社会の連帯をより確保しやすくなるだろうと思っています。
「ロシア」 vs 「法の支配/国際法/国連憲章の諸原則」
アジアやアフリカの国々がどう考えているか。いくつかの切り口があります。それぞれ、ロシアや旧ソ連との経済的、軍事的な関係、あるいは旧ソ連時代からの植民地独立における関係と、国々によって濃淡があるわけです。ロシアと近しさを感じる国もあります。そういったことが、今回の紛争をどうみるかという視点にも影響してきます。
ロシアや旧ソ連との経済的、軍事的な関係
旧ソ連時代からの植民地独立における関係
さらに言えば、国連の議場など公の場で聞くことはないにしても、少しずつ聞こえてくるのは「いやあ、西側って二重基準(ダブルスタンダード)じゃないですか」というものです。「欧州で起きているから、みんな一生懸命になっているのではないか」と。同じように悲惨な状況というのは、他の地域ではあちこちにある。話をしていると、二重基準に対する、心の底にあるものがふっと表面に出てくることもあります。
「西側って二重基準(ダブルスタンダード)じゃないですか」
もう一つ。もともとコロナで相当途上国が傷ついている中で、ロシアによるウクライナ侵攻が起きました。もちろんロシアが悪いわけで、食料危機についても、ロシアの責任であることは間違いありません。ただ、現実的に、途上国が苦しんでいます。
COVID-19 感染拡大
食糧危機
各国のロシアとの距離関係、感情的な、あるいはイデオロギー的な側面、現実世界において彼らが遭遇している困難。この三つの要因がないまぜになっているのが現状であり、ここにしっかり目を向けて手当てをしていかないと、「ロシアは孤立している」とは軽々には言えないだろうと思います。
ロシアとの距離関係
感情的な、あるいはイデオロギー的な側面
現実世界において遭遇している困難
end