「資本とイデオロギー」は富の不平等がイデオロギーにどのような影響を及ぼすかを論じる
2019/7
新刊のタイトルは『資本とイデオロギー』で、富の不平等がイデオロギーにどのような影響を及ぼすかを論じた本である。 ピケティは「バラモン左翼(Brahmin left)」と「商業右翼(merchant right)」という言葉を使っているが、左翼や社会民主主義勢力が、教育水準が低く貧しい人たちの政党から教育水準が高く裕福なミドルクラスや上流階級の政党へと徐々に変化していく一方で、高収入で裕福な層は依然としてビジネスエリートとしての価値観で保守政党に投票し続ける構図がある。 その結果、教育と所得の移動を受けられなかった人々を代表する政党がなくなり、そうした層の受け皿が「ポピュリスト政党」になるというわけである。 ワタシは『21世紀の資本』のことを「資本主義社会では元から資本を持つ者がますます富むことになるという、庶民がとっくに薄々実感していたことを、経済学者にも分かるように書いた大著」と書いたことがあるが、新刊は(前作が経済学者にとってそうであったように)政治学者が自分の専門分野の見方を変える本になるだろうか。