あの小説を特徴づける、奇妙なまでの表現の乏しさ、貧しさも、またその貧しさによってこそもたらされた、おそらくはいかなる国の言葉にでも翻訳可能だろうと思わせるような、簡潔きわまる小説の威力
from 2023/06
あの小説を特徴づける、奇妙なまでの表現の乏しさ、貧しさも、またその貧しさによってこそもたらされた、おそらくはいかなる国の言葉にでも翻訳可能だろうと思わせるような、簡潔きわまる小説の威力
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「表現の乏しさ」が、言葉の世界を豊かにする?|葉っぱの坑夫
『悪童日記』についての野崎歓さんの文章
あの小説を特徴づける、奇妙なまでの表現の乏しさ、貧しさも、またその貧しさによってこそもたらされた、おそらくはいかなる国の言葉にでも翻訳可能だろうと思わせるような、簡潔きわまる小説の威力も、「文盲」の作家という根源的なハンディキャップに由来するものだったにちがいない。
野崎歓『われわれはみな外国人である:翻訳文学という日本文学』
195 - 198p 亡命者の憤怒『文盲:アゴタ・クリストフ自伝』より
生きるために選んだ言葉で生活し、仕事をしているけれど、まだ完璧とはいえない、間違うし、辞書が手放せない。一方母語の方は、使わないうちに錆びつき、忘却の彼方へと去っていく。移民の人のエピソードとしてよく聞く話です。
30年間その言葉を話し、20年間その言葉で作品を書いていても、かつて母語で書いていたようには書けない、という現実。
「われわれはみな外国人である 翻訳文学という日本文学」 野崎歓|踏み跡
「文盲:アゴタ・クリストフ自伝」ハンガリー語を奪われフランス語で作品を書かざるを得ない作家の、フランス語に叩きつけた「否」。