市場の失敗
市場メカニズムが理想的に働くためには、「完全競争」「外部性がない」「完全情報」などの前提が必要であるが、現実にはこれらは多かれ少なかれ満たされないので以下のような問題が発生する。
1. 独占・寡占の発生
この場合、価格の吊り上げのために、社会的に最適な供給量よりも過小な供給しかなされなくなる。
市場外的要因がなくても、規模の経済がある場合には、自動的に独占が発生する可能性がある(「自然独占」)。
2. 外部性の問題
公害のような、取引当事者に帰属しない社会的費用を伴うものが過大に供給される問題など。
3. 公共財
外部経済の極端な例とも言えるが、便益の享受者を供給者が排除できないとき、フリーライダー問題が発生して需要に見合った費用が回収できず供給が過小になる。
4. 情報の非対称性の問題
5. 予想が調整されない問題
各自の自己利益のための経済行動は、各自の将来予想に依存している。
しかしそれは各自の頭中にあって、現実の需給によって調整されない。
そのため、現実の欲求や生産技術を最適に反映しない予想によって、バブルや景気変動などの動揺がもたらされる。
6. 流動性選好による不均衡
不確実性のために貨幣が発生して、それを貯め込もうとする傾向(「流動性選好」)が生まれる。 そのために、総需要が不足して、失業が解消できなくなる(詳しくは「流動性のわな」の項を参照のこと)。 この問題はミクロ経済学で扱われており、マクロ経済学に属する後二者は、伝統的には市場の失敗に入れられていなかったが、マクロ経済学をミクロ経済学的に基礎づける作業の進展によって、他の市場の失敗と共通の本質を持つものとして位置づけられるようになってきている。
よく市場の失敗をことさら大きく取り上げ、資本主義はダメだという人がいるが、この態度はまちがっている。
どんな社会だって、パーフェクトではありえない。