プロフィットセンター
企業組織内において独立的に事業を営み、その採算について権限と責任を持つ分権的利益管理単位のこと。一般に事業部制における事業部がこれに当たる。
プロフィットセンターは利益を測定指標とする事業単位である。その管理責任者は、トップマネジメント(本社)に対して利益責任を負うと同時に、当該事業にかかる費用および売上収益の一切についての包括的な決定権限が委譲される。組織の機能としては販売(営業先や価格、値引率、販売数量の決定など)、仕入れ(調達先の選択など)、生産(生産品目や生産量など)、人事(採用・配置など)などを備え、自律的に経営が行える自己完結型組織を構成することになる。これらの機能・権限が保障されていない体制は、事業部と呼称されていても本質的にはプロフィットセンターとはいえない。
コストセンターと対蹠的に語られること多いが、コストセンターが特定の工程におけるコストを限られた方法で改善する管理単位であるのに対して、プロフィットセンター(事業部)は極めて大きな経営自由度を有する。例えば「同じ売上で支出を削減する」以外に、「単価を下げて販売数量を上げ、売上を大きくする」「利益率の大きな品目に注力して、利益を極大化する」といった複数の選択肢から、状況にあった戦略を選ぶ権限が付与される。
日本では、事業部制と称しながら責任範囲が限定的な部門組織によって構成する擬似事業部制を敷く会社が少なくない。そのため、大幅な権限委譲を伴う体制を区別して「カンパニー制」と呼ぶことがある。また、1997年の独占禁止法改正による純粋持株会社解禁後は、持株会社の下に事業部門を分社化して事業権限の委譲を担保する企業が増えている。経理部や人事部などの間接部門をプロフィットセンターとして分社化するシェアードサービスに取り組む企業も多い。
これとは別に、5~50名程度の少人数の組織(職能別組織体でもよい)に“社内取引”の概念などを使って利益指標を適用するミニプロフィットセンターという経営手法も古くから存在する。アメーバ経営の京セラ、ヒガシマル、太陽工業、オリンパス光学などのケースが知られている。これらは業務の最前線となる現場組織に経営的発想を持たせることで、従業員のモチベーションを高め、組織を活性化することを目的としている。
プロフィットセンターという言葉は、米国の経営学者・著述家 ピーター・F・ドラッカー(Peter F. Drucker)の造語とされる(本人がそのように主張している)。これはあくまでも企業の経済活動を事業として把握することを強調するためのものだったが、「プロフィットを生み出す組織」と誤解されるようになったこともあり、ドラッカーは著書で「およそ企業の内部には、プロフィットセンターはない。内部にあるのはコストセンターである」(『Managing for Results』 1964年)、「組織の内部に生ずるものは、努力とコストだけである。企業にはプロフィットセンターがあるかのごとくいわれるが、単なる修辞にすぎない。企業には“努力センター”があるだけである」(『The Effective Executive』 1966年)と繰り返し述べている。