論理学を独習したいあなたに
https://www.youtube.com/watch?v=--SiDaFM2h0
メモ
私は残念ながら論理学に関するカリキュラムとかはほぼ全く無かったので,ほとんど独学しており,苦労しています.
みなさんにはこうした苦労はしてほしくないので,私がいまから薦めるとしたらこういう順番かなとというメモです.
Step 1を読み,まあわかってきたな,と思ったらStep 2へ.
Step 2を読み,まあわかってきたな,と思ったらStep 3AやStep 3Bへ行くと良い.
ただしStep3は私の趣味が出ているのでもし合わないなと思ったら別の参考文献を探すと良い.
とはいえ別に私も論理学の専門家ではないから,実際には本当に専門家(?,少なくともまあ業として研究している方々)の参考文献を読んだりするといいかもしれない
参考文献
数理論理学を初めて学ぶ人へのブックガイド
Hybrid Logicを研究している西村 祐輝氏の書評.
数理論理学の参考書,
Mathpediaの書評.ここより更に発展的な話題があります
論理学およびその周辺領域の本
大体網羅的で,数学の哲学寄りの話題もある.
私についての前提
私は嘘つきだ
私は論理学を学ぶ前は普通にWebでフロントエンドをやっているプログラマーでした/です
なのでBooleanの演算などは普通に理解していた程度の知識があった.
少し専門的な用語を用いて大雑把に言えば,古典命題論理の意味論はほとんど自明なものとして受け入れられた.
Step 1
大西琢朗『論理学 3STEPシリーズ』
http://www.showado-kyoto.jp/book/b592101.html
だいたい一般的な論理学の本と違い,古典命題論理の次に様相論理を学んだ後に古典述語論理を学び,その後はほとんど戻ってこずに様相論理/非古典論理のより発展的な論理体系について概説を行う.
あくまでも入門用の毛色が強いので,厳密な証明はあまり与えられず,証明の大まかなスケッチ/あらましが与えられていることが多い.
いい意味で固くない文体である.
様相論理は入門書によっては一切触れていない(あったとしても「そういうのがありますよ」ぐらいの脚注が付けられているのみ)ケースがある
様相論理や直観主義論理といった非古典論理は数学的な興味以外にも計算機科学など様々な分野で応用がある,
贔屓目に言えば変でおもしろい体系であるので,そこから論理学の面白さを知ってもらえるといいかもしれない.
この本の元になったYoutubeに講義動画があり,全部公開されている
https://www.youtube.com/watch?v=N_vHpikBN8g&list=PL54C_zUEsyCZ65DvDRILxbhauvQb8YPVF
ので独学に向いている.と思う.みんなはどうなの?
山田俊行『はじめての数理論理学』
私は読んでいないが情報を寄せられた.
Step 0として教えてもらったがチラ読みした感じはここぐらいのレベル感な気もする.
目次と教えてもらった情報から察するに日常の論理学から初めて古典命題論理と古典述語論理の徹底的な計算演習を行うらしい.
Step 2
鹿島亮『数理論理学』
https://www.asakura.co.jp/detail.php?book_code=11765
(実際はよく知らないが著者による講義でも用いられている?)本
分量的にもちょうどよく,独習するにも丁度いいと思います.
数理論理学で基本的なことは大体押さえられます.
紙面/時間の関係,不完全性定理については厳密な証明は避けて「こういうものがあります」という議論や少しの応用について触れられている.とはいえ最初はこのぐらいで良いかも知れない.
後半では直観主義論理や様相論理などの証明論なども載っており,Step1で出てきた様相論理の証明のスケッチが厳密に埋められたりもしています.
戸次 大介; "数理論理学"
https://www.utp.or.jp/book/b306383.html
比較的最近書かれた本.
特に証明論的な観点で非常に厳密に議論を行っている.
命題論理及び述語論理の各々の証明体系Hilbert流演繹体系/自然演繹/シークエント計算/タブロー計算を定義し,それらの証明能力の等価性を示しています.
そして述語論理の完全性定理はタブローから行っている.
読んだときは知らなかったのであまり気になっていなかったが,見返すと記号や意味論の与え方が独特かつ厳密なのですごい複雑になっている感はある.
述語論理の完全性定理まで遠すぎるという問題はあり,そういった人間は鹿島亮『数理論理学』のほうが良いかも知れない.
Step 3A: 不完全性定理編
ここからは私が嘘つきなので趣味が出ている.
菊池誠; "不完全性定理"
https://www.kyoritsu-pub.co.jp/book/b10004015.html
数理論理学という分野の一種のゴールであり,そしてスタートともなったGödelの不完全性定理という定理について丸々一冊書かれた本.
古典命題論理や古典述語論理などの基本的なトピックもおさえられている
が,この本だけでそれらを理解した!となれるかは疑問なのでそちらはStep 2の本で補ったほうがよいと思う.
著者による数学の哲学的な観点も禁欲的でなく(原著)多く書かれている
逆に言えばそれらの話題に全然興味のない人間にとっては冗長かつ目が滑る問題もあるが…
数学基礎論講義 不完全性定理とその発展
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/1294.html
上の菊池誠; "不完全性定理"よりはコンパクトに不完全性定理の証明にたどり着ける.
Peano算術との独立命題についての話題やその証明方法も書かれている
ゲーデルと20世紀の論理学 第3巻(本)
https://www.utp.or.jp/book/b305574.html
1章には鹿島 亮による不完全性定理のあらましがある.
上の数学基礎論序論(本)と大体内容は被っているのでどちらかで良いはず.
実際にはちょっとだけ追加されていた気もする.
R.Smullyan『不完全性定理』改訂版
https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/?book_no=294979
私が最初に読んだ論理学の本であり,思い入れも深いが,とにかく原著の書き方からして結構読みづらいという問題がある.
Step 3B: 様相論理の応用編
鹿島 亮; "コンピュータサイエンスにおける様相論理"
https://www.morikita.co.jp/books/mid/085641
計算機科学/形式検証によって用いられる様相論理(または非古典論理)の体系の入門書.
面白いが,読む動機を強く持たないと「結局これを知った上でどうすれば…?」という感じが出てくるのでそこは更に勉強する他無い.
数学における証明と真理 様相論理と数学基礎論
https://www.kyoritsu-pub.co.jp/book/b10003727.html
大雑把に言えば,様相論理を数学のさまざまな分野の分析の道具として用いる試みについての本.
とはいえこれを最初に選ぶと第1章の正規様相論理の完全性定理/有限モデル性/様相論理のシークエント計算のカット除去定理などの議論以外は何を言っているのかわからないと思う
少なくともStep 3Aのどれかを読んで不完全性定理の腹を掴むと2章の証明可能性論理についての議論の道が開かれる.