Σ₁完全性定理
結論
参考文献
Remark
$ \mathscr{L}_\mathrm{A}は算術の言語とする. 当然$ \mathscr{L}_\mathrm{A}の理論である.
memo:
$ \sf PA^{-}は帰納法の公理図式を持たないPeano算術であるから$ \sf Qと同じとみなして良い(はず). 1階述語論理における任意の論理式$ \varphiに対し,同値な冠頭標準形な論理式$ \varphi'が存在する. $ \psiは$ \Delta_0論理式とする.$ 0 \leq m
2. $ \varphiの冠頭標準形が$ \exists_{x_1,\dots,x_m}\psiであるとき,$ \varphiは$ \Sigma_1論理式であるとする.
3. $ \varphiの冠頭標準形が$ \forall_{x_1,\dots,x_m}\psiであるとき,$ \varphiは$ \Pi_1論理式であるとする.
remark:$ m=0でも構わないので,任意の$ \Delta_0論理式は$ \Sigma_1論理式及び$ \Pi_1論理式であることに注意.
更に,$ 0 \leq m
4. $ \psiが$ \Sigma_n論理式で,$ \varphiの冠頭標準形が$ \forall_{x_1,\dots,x_m}\psiであるとき,$ \psiは$ \Pi_{n+1}論理式であるとする.
5. $ \psiが$ \Pi_n論理式で,$ \varphiの冠頭標準形が$ \exists_{x_1,\dots,x_m}\psiであるとき,$ \psiは$ \Sigma_{n+1}論理式であるとする.
remark:
上の注意と同様に$ m=0でも構わないので,
任意の$ \Sigma_k論理式は$ \Pi_{n+1}論理式である
任意の$ \Pi_k論理式は$ \Sigma_{n+1}論理式である
6. $ \Sigma_n論理式かつ$ \Pi_n論理式でもある論理式は$ \Delta_k論理式という.
7. $ \mathscr{L}_\mathrm{A}の論理式の集合$ \Phi \sube \mathrm{Fml}_{\mathscr{L}_\mathrm{A}}について↓が成り立つとき,$ \Phiを$ \Delta_n,\Sigma_n,\Pi_nと言う.
$ \varphi \in \Phi$ \iff$ \varphiは$ \Delta_n,\Sigma_n,\Pi_n論理式
すなわち,$ \Phiは$ \mathscr{L}_\mathrm{A}の$ \Delta_n,\Sigma_n,\Pi_n論理式全体集合となっている.
8. 同様に,$ \mathscr{L}_\mathrm{A}の文の集合$ \Theta \sube \mathrm{Snt}_{\mathscr{L}_\mathrm{A}}について同じ条件が成り立つとき,$ \Thetaを$ \Delta_n,\Sigma_n,\Pi_nと言う.
Remark: 否定について
$ \lnot \exists_{\vec{x}}.\varphi \equiv \forall_{\vec{x}}.\lnot\varphi
$ \lnot \forall_{\vec{x}}.\varphi \equiv \exists_{\vec{x}}.\lnot\varphi
よって,
$ \Sigma_n論理式$ \varphiの否定$ \lnot\varphiは$ \Pi_n論理式である.
$ \Pi_n論理式$ \varphiの否定$ \lnot\varphiは$ \Sigma_n論理式である.
Remark
以降,論理式または文は必ず冠頭標準形であるものと約束する. Def. $ \Sigma_k完全性/$ \Pi_k完全性
文の集合$ \Theta \sube \mathrm{Snt}_{\mathscr{L}_\mathrm{A}}とする.
1. 全ての文$ \theta \in \Thetaに対して$ \mathcal{N} \vDash \theta \implies T \vdash \thetaであるとき,$ Tは$ \Theta完全であるという.
2. $ \Thetaが$ \Sigma_nであるとき$ Tは$ \Sigma_n完全であるという.
3. $ \Thetaが$ \Pi_nであるとき$ Tは$ \Pi_n完全であるという.
Def. $ \Sigma_k健全性/$ \Pi_k健全性
文の集合$ \Theta \sube \mathrm{Snt}_{\mathscr{L}_\mathrm{A}}とする.
1. 全ての文$ \theta \in \Thetaに対して$ T \vdash \theta \implies \mathcal{N} \vDash \thetaであるとき,$ Tは$ \Theta健全であるという.
2. $ \Thetaが$ \Sigma_nであるとき$ Tは$ \Sigma_n健全であるという.
3. $ \Thetaが$ \Pi_nであるとき$ Tは$ \Pi_n健全であるという.
Lem 1
$ Tが$ \Pi_n完全$ \implies$ Tは$ \Sigma_{n+1}完全
proof:
1. $ Tを$ \Pi_n完全とする
2. $ \thetaは$ \Sigma_{n+1}文であるとし,$ \mathcal{N} \vDash \thetaとする.$ \vdash \thetaを示す.
3. $ \theta \equiv \exists_{\vec{x}}.\xi(\vec{x})となるような$ \Pi_n文$ \xi(\vec{x})が存在する.
4. 2と3より$ \vDash \xi(\vec{a})となるような$ \vec{a}が存在する.
$ \vDashの定義より.
5. 1と4より$ \vdash \xi(\vec{a})となるような$ \vec{a}が存在する.
$ \xiは$ \Pi_n文であり$ \Pi_n完全性より.
6. よって,$ \vdash \exists_{\vec{x}}.\xi(\vec{x}).すなわち$ \vdash \theta.
Lem 2
$ Tが$ \Sigma_n健全$ \implies$ Tは$ \Pi_{n+1}健全
proof:
1. $ Tを$ \Sigma_n健全とする
2. $ \thetaは$ \Pi_{n+1}文であるとし,$ T \vdash \thetaとする.$ \mathcal{N} \vDash \thetaを示す.
3. $ \theta \equiv \forall_{\vec{x}}.\xi(\vec{x})となるような$ \Sigma_n文$ \xi(\vec{x})が存在する.
4. 2と3より任意の$ \vec{a}で$ \vdash \xi(\vec{a}).
5. 1と4より任意の$ \vec{a}で$ \vDash \xi(\vec{a})
6. よって,$ \vdash \forall_{\vec{x}}.\xi(\vec{x}).すなわち$ \vDash \theta.
$ Tが$ \Sigma_1健全なら,無矛盾である.
proof
1. $ Tが矛盾すると仮定すると破綻することを示す.
2. 算術の理論$ Tが矛盾しているとき,$ T \vdash 0=1である.
3. $ 0 = 1は$ \Sigma_1文である.
$ \Delta_0文である.
4. $ Tが$ \Sigma_1健全なら,2,3より$ \mathcal{N} \vDash 0 = 1である.
5. しかし実際には$ \mathcal{N} \nvDash 0 = 1である.
6. 5,6より破綻する.$ Tは無矛盾である.
Thm.3 $ \Sigma_1完全性定理
$ Tは$ \Sigma_1完全である.
すなわち,
任意の$ \Sigma_1文$ \thetaに対し,$ \mathcal{N} \vDash \theta \implies T \vdash \theta
proof:
1. Lem1より,$ Tが$ \Pi_0完全であるなら,$ Tは$ \Sigma_1完全である.
2. $ Tが$ \Pi_0完全であることと$ \Delta_0完全であることは同じである.
3. 以下で示されるCor 3.4より,$ Tは$ \Delta_0完全である.
4. したがって以上より,$ Tは$ \Sigma_1完全である.❏ Lem 3.1
$ \tau(\vec{x})を$ \mathscr{L}_\mathrm{A}の項とする.
$ a_1,\dots,a_m,b \in \Nとする.
$ a_1,\dots,a_m,bは自然数である.直接項$ \tauに入れることは出来ない.
$ \mathcal{N} \vDash \tau(\vec{\overline{a}}) = \overline{b} \implies T \vdash \tau(\vec{\overline{a}}) = \overline{b}
proof:項についての帰納法.
remark:
$ a \in \Nとしたとき,数項を$ \overline{a}として表す. $ a_1,\dots,a_n,b \in \Nと書いて暗黙の了解として項としているっぽいが,ややこしいのでちゃんと明記することにする.
Lem 3.2
$ \varphiを$ \Delta_0論理式とする.
$ tを閉じた(自由変数を持たない)$ \mathscr{L}_\mathrm{A}の項とする.
$ a \in \Nとする.
$ \mathcal{N} \vDash t = \overline{a}とする.
このとき,以下が成り立つ.
1. $ \mathcal{N} \vDash \forall_{x \leq t}. \varphi(x) \leftrightarrow (\varphi(\overline{0}) \land \dots \land \varphi(\overline{a}))
2. $ \mathcal{N} \vDash \exists_{x \leq t}. \varphi(x) \leftrightarrow (\varphi(\overline{0}) \lor \dots \lor \varphi(\overline{a}))
proof:自然数の帰納法で.
また,以下が成り立つ.
3. $ T \vdash \forall_{x \leq t}. \varphi(x) \leftrightarrow (\varphi(\overline{0}) \land \dots \land \varphi(\overline{a}))
4. $ T \vdash \forall_{x \leq t}. \varphi(x) \leftrightarrow (\varphi(\overline{0}) \lor \dots \lor \varphi(\overline{a}))
proof:1と2の証明を$ \sf Qで形式化する.
Lem 3.3
$ \thetaを$ \Delta_0文とする.
$ \mathcal{N} \vDash \theta \leftrightarrow \xiかつ$ T \vdash \theta \leftrightarrow \xiな,量化子を含まない文$ \xiが存在する.
proof:
Lem 3.2より.すなわち,限定量化は$ \landと$ \lorの連なりに変換出来る.
example:
$ \exists_{x \leq \overline{2}}.\varphi(x)という$ \Delta_0文は$ \varphi(\overline{0}) \lor \varphi(\overline{1}) \lor \varphi(\overline{2})という$ \Delta_0文と同値である.
Cor 3.4
$ \thetaを$ \Delta_0文とする
1. $ \mathcal{N} \vDash \theta \implies T \vdash \theta
2. $ Tが無矛盾なら,$ T \vdash \theta \implies \mathcal{N} \vDash \theta
proof:
Lem3.3より$ \thetaを量化子を含まない文$ \xiに変形する
更に$ \xiを適当に変形すると$ \mathcal{N} \vDash \xi \implies T \vdash \xiが言える.
すなわち定義より,
3. $ Tは$ \Delta_0完全である.
4. $ Tが無矛盾なら,$ Tは$ \Delta_0健全である.
Cor 4
$ Tが無矛盾なら,$ Tは$ \Pi_1健全である.
proof:
Cor 3.4とLem2より.
Cor 5
$ \thetaは$ \Delta_0文とする.
$ T \vdash \thetaまたは$ T \vdash \lnot\thetaのどちらか一方である.
proof:
以下の事実より.
1. $ \thetaが$ \Delta_0文ならば,$ \mathcal{N} \vDash \thetaまたは$ \mathcal{N} \vDash \lnot\thetaのどちらか一方である.
2. Cor3.4より$ Tは$ \Delta_0完全である.