効果的利他主義
効果的・
善意に基づく寄付とかではなく、効果やリターンをきちんと見て判断した上での寄付行為など
データや資本主義的価値観を寄付や善意の世界に持ち込んでいる?
EAは「効果的な利他主義(Effective Altruism)」の略だ。
「収入の10%以上を、可能な限り費用対効果の高い慈善団体に寄付しよう」と誓約した数千人に及ぶコミュニティを形成している。「慈善団体で働くよりも、高収入の職業を得て収入の一部を寄付する方がより『効果的』である」という考え方を共有している人たち
マッカスキルは今もEAコミュニティの中心人物である。翻訳された著書として『〈効果的な利他主義〉宣言!』(ウィリアム・マッカスキル、みすず書房、2018年)がある。
EAのコミュニティはAIを警戒する立場に立つ。
命名者は「ベフ・ジェゾス」(Amazon創業者ジェフ・ベゾスのパロディ)を名乗る匿名のネット人格である。「加速主義とは資本主義の自己認識である」などと主張し、資本主義を突き詰めてシンギュラリティ(技術的特異点。AIが人間の助けなしに自律的に進化し続ける段階に達することとされる)に到達する確率を高めることを良しとする。 EA、「効果的な利他主義」では「最も効果的な寄付先を選び、寄付しよう」と考える。つまり慈善団体が公表した数字を見て、より効率的と判断した団体に寄付することが良いと考える。また「より多く稼ぎ、より多くを寄付しよう」と考える。このように数値を見て素早く結論を出せる考え方は、エンジニアや企業経営者と親和性が高い
効果的な利他主義とはなにか。このムーブメントの中心的人物であり、史上最年少でオックスフォード大学准教授となった哲学者、ウィリアム・マッカスキルは、著書『〈効果的な利他主義〉宣言! 慈善活動への科学的アプローチ』で、効果的な利他主義をこんなふうに説明している。
〈効果的な利他主義〉は「効果的」と「利他主義」というふたつの要素からなる。(中略)私が使う「利他主義」という言葉は、単純にほかの人々の生活を向上させるという意味だ。(中略)もうひとつの要素は「効果的」という部分だ。これは手持ちの原資でできるかぎりのよいことを行なうという意味だ。効果的な利他主義では、単に世界をよりよくするとか、ある程度よいことを行なうのではなく、できるかぎりの影響を及ぼそうとする。これに倣えば、たとえゲイツやウォーレン・バフェットのような富を持ち合わせていなかったとしても、自分ができる範囲で、できるかぎりのよいこと=最大の結果を得られる利他的な行為をすることを奨励するムーブメントというふうに解釈できる。言い換えれば、より「コスパの高い」利他的行為へ導こうとする試みであり、ローリスク・ハイリターンなマネーゲームのような響きも含んでいる。 マッカスキルが効果的な利他主義を練り上げるきっかけとなったのは、同じオックスフォード大学の院生だったトビー・オードと2009年に立ち上げた「ギビング・ワット・ウィー・キャン(Giving What We Can)」だ。これは、もっとも費用対効果の高い慈善団体を調べ上げ、そうした団体に収入の1割以上を寄付するように奨める組織。同じ頃に、ニューヨークのヘッジファンドで働いていたホールデン・カーノフスキーとエリー・ハッセンフェルドが創設した「ギブウェル(GiveWell)」は、同じ1ドルでもっともよいことができる慈善団体を厳密に分析する組織だ。確かに、寄付という善行はつい「共感」や「同情」に流されがちで、それが実際にどんな影響をもたらしたのかという結果まで知ろうとしないのは、お金のスマートな使い方とは言い難い。
コスパの高さを計測するためには、使った金額に対してどれほどの成果を得られたかというエビデンスが必要になる。しかし、実際に利他的な行動が社会に対してどれほどの恩恵を与えたのかを測るすべは、すべての場合に用意されているわけではない。私たちのコレクティブエフォートが新型コロナウイルスの感染抑制につながったという実感を毎日のニュースから得ることはできても、1000円のフェアトレードのコーヒーを購入し続けたことで、どれだけの人々の暮らしがどれほど向上したのかを厳密に知ることはできない。その成果を調査し検証したデータが開示されていないからだ。
しかし、かなりうがった見方かもしれないが、効果的な利他主義の「善行のマネーゲーム化」的な側面に対して、無視できない批判があることも確かだ。人の命に関わることをコスパ換算するなどとんでもない、と抵抗感を覚えた人もいるだろう。もっともだ。 効果的利他主義(Effective Altruism)は、他者に貢献して社会をより良くするうえで、効率とインパクトの最大化を目的とする考え方を指す。米国の倫理学者ピーター・シンガーは1972年に発表した論文で、途上国支援での効率的な寄付の必要性について主張し、元となる考えが初めて提唱された。
特徴的な考え方としては、「社会へのインパクトの定量化」「普遍的な価値の存在」「無理のない利他主義」などが挙げられている。
効果的利他主義では、他人や社会に対して行う「良いこと」を定量的に測定することを重視しているのが特徴だ。
この「良いこと」が実際に、「想定している相手に望ましい影響を与えているのか」「どれだけ影響を与えているのか」「何をすれば影響が最大化できるのか」を定量的な測定・推計や費用対効果などの数値を用いて把握する。感情での判断ではなく、理性や数字を判断の根拠とすることが求められる
効果的な利他主義を実践する人々は、一般的に、スケールが大きく、扱いやすく、不当に軽視されている問題を特定しようとする
効果的な利他主義を実践する人々は、しばしば直感に反するような、不明瞭な、あるいは大げさに見える問題に焦点を当ててしまう。しかしこれは、(他のすべての条件が同じであれば)他者から軽視されている問題に取り組む方がインパクトが大きいからであり、そうした問題は(ほぼ定義上)型破りなものになる。その一例が、AIのアライメント問題である。
1. 優先順位付け:100人を助けると、1000人を助けるのと同じくらいの満足感を得られることが多い。100人を助けると1000人を助けたのと同じような満足感を得られることが多い。しかし、善を行う方法によっては、他の方法よりも劇的に多くの成果を上げることもあるため、異なる行動がどれだけの助けになるかを数字で大まかに量る試みは不可欠である。ゴールは、ただ少しでも変化をもたらすために努力するのではなく、援助のための最善の方法を見つけることである。
2. 公平な利他主義:自分の家族、友人、国家に特別な関心を持つことは普通であり、合理的である。しかし、可能な限り多くの善を行おうとするとき、私たちは、どこに住んでいようが、いつ住んでいようが、すべての人の利益を等しく重視することを目指す。つまり、最も無視されているグループに焦点を当てるということであり、それは通常、自分たちの利益を守る力をあまり持っていない人々に焦点を当てることを意味する。
3. オープンな真実追求:特定の大義やコミュニティ、アプローチにコミットすることから始めるのではなく、さまざまな支援方法を検討し、最善の方法を模索することが重要である。これは、自分の信念について真剣に時間をかけて熟考し、新しい証拠や主張に対して常にオープンで好奇心を持ち、自分の考えを根本的に変える覚悟を持つことを意味する。
4. 協調の精神:協力し合うことで、より多くのことを達成できる場合が多く、これを効果的に行うには、高い水準の誠実さ、高潔さ、思いやりが必要である。効果的な利他主義とは、「目的は手段を正当化する」理屈を支持することではなく、より良い世界を目指して意欲的に取り組みながら、良き市民であることを意味する。