ジョナサン・アンダーソン
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16年には「ロエベ財団クラフトプライズ」をスタートさせて自ら審査員も務めている。19年からはロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館の評議員の一員になり、また23年にイギリス全土の美術館を対象に、知名度がまだあまり高くないアーティストの作品取得をサポートする「JWアンダーソン・コレクションズ基金」も設立。
JW Andersonは僕自身のとても個人的な旅路だ。僕自身がどんなものを着たいか。それを思い描いて表現するプロセスだ。
僕にとって大切なのは、どうやって息の長いブランドを築くか。近頃は、立ち上げから短時間で巨大ビジネスを狙うから 昨今の「ジェイ ダブリュー アンダーソン」と「ロエベ」のクリエイションに共通しているのは、違和感のあるシルエットだろう。極端にハイウエストだったり、タイトだったり、縦長だったり。それらをシンプルなスタイリングに徹することで、フォームをさらに強調させる。「シルエットは、私が今最もフォーカスしたいクリエイションだ。世の中のファッションの変化も、シルエットに大きな影響を受けてきたから」とアンダーソンは語る。 「私も年齢を重ねて自信をつけると共に、過去に比べてフォーカスしたい点が明確に見えるようになった。今は、シルエットだ」
近年のコレクションでシルエットやフォルムに注力している理由は?>
ジョナサン:今、私がこだわっているのがオフ・シルエット(体から離れたゆったりとしたシルエット)、新しいシルエットに対するアイデアなんです。ファッションはこれまでもシルエットによって変化してきました。なのでフォーカスしていきたいのです JW アンダーソンでもロエベでも、クラフトというのは常に私がこだわる大きなポイントです。イングランドでもほかの国々でも、素晴らしい服を作る人材を確保するように努めています。 最後に、日本の若手デザイナーに向けて一言お願いします。世界で活躍するために必要なことは?
ジョナサン:いつも好奇心旺盛でいること。そして絶対に妥協しないこと。
ロエベでのアンダーソンのアプローチに通じるところがある。常に探求を渇望し、時代に応え、周りの世界との対話として服を創造し、すべての人をその旅に誘うのだ。
「ロエベは発見のブランド。僕は未知のキャラクターに惹かれます。時に歴史に埋もれてしまう才能ある人たちを見つけ光を当てたいと考えています」>
「僕の原動力は絶え間ない好奇心。自分や芸術、人に対する好奇心だ。周りの世界を見渡す以上にワクワクすることはない。周りが目に入らないのは、調子が悪いというサインなんだ。顔を上げず、下ばかり見ているということだから。世界はすばらしいものに満ちている。取り入れるものや組み合わせの可能性も無限にある。」 もし本当にブランドを始めたいなら、これは生涯の仕事だと覚悟したほうがいい。一時的なものではないし、長い時間がかかる。妥協せず、常に好奇心を持ち、積極的に学び、失敗を恐れないこと。それから思いやりを忘れず、常に地に足をつけておくことが大切
ブランドをもっとインディビジュアルなものにしていきたいのです。今は消費者と直接対話することができます。製品の問題や人々が望むものについて聞くことができるし、SNSを活用してあらゆる人とコミュニケーションをとることもできる。多くの方法や機会を探りたいと思っていますが、今僕ができるのはデジタルで何かを仕上げること 僕は過去を考えることで、より謙虚になることができました。それはある種のノスタルジーといえるのかもしれません。過去に縛られ続けるべきという意味ではないけれど、歴史から学ぶことはたくさんあります。ファッションはポストモダンの時代を経ましたが、それはアートの世界も同様です。そして今、すべてのクリエイティビティの前に大きな壁が立ちはだかっています。僕らの唯一の好機は、それを乗り越えることです。そのためには、何かを残す必要があると思うんです。
僕は戦うことは嫌いじゃない。生きている実感を得られるから、難局においてこそ良い仕事ができる。ただ、うまく切り抜ければいいということでは決してなく、大切なのはこれから立ち向かっていくという真摯な姿勢なのだと思います。
アンダーソンは、ランウェイにできる限りのアイテムを詰め込み、何が売れるのかをマーチャンダイジングチームとチェックするようなデザイナーではない。彼にとってファッションショーとは、商業的な場ではなく、実験の場なのである。そのなかでも、彼は最もマッドなサイエンティストなのだ。
今回、アンダーソンが見せたのは、多くのデザイナーが今シーズンの隠しテーマにしていた無力なミニマリズムではなく、「縮小」というアイデアだ。近年、メンズウェア業界に蔓延していた過剰で複雑すぎるスタイリングへの反撃として、著しい縮小と減少をして見せたのだ。