LOEWE
https://www.thedrum.com/news/2025/01/29/loewe-s-cmo-charlie-smith-encouraging-the-fashion-house-behave-publisher
Loewe’s CMO Charlie Smith is encouraging the fashion house to ‘behave like a publisher’
ロエベのチーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)を務めるチャーリー・スミスは、伝統的なロンドンの広告代理店からキャリアをスタートさせ、現在は世界的に人気の高いファッションブランドのマーケティングを牽引している。彼の歩みは「流動的なキャリア」の重要性を強く示し、常に新たな学びやチャンスを求める“ハイブリッド”な姿勢の大切さを体現している。
もともとスミスはファッション畑ではなく、広告代理店でアカウント担当からキャリアを開始した。2008年の金融危機直前にイギリスのマーケティング企業へ入社し、ノキアなど大手クライアントを担当。その後、McCann Ericksonではマイクロソフトなどのデジタル広告戦略に携わり、当時まだ珍しかったオンライン広告やソーシャルメディア施策にも深く関わる。加えてY&RではM&Sやランドローバーといった著名イギリスブランド、さらに2012年ロンドン五輪でBBC向けに制作されたトレーラーにも携わるなど、大きなプロジェクトを数多く経験した。こうした経歴を経て、ロサンゼルスのWPP系列エージェンシーPossibleでエンタメ業界に近い案件に取り組んだ後、R/GAでは念願のナイキ案件を担当。アプリやウェブサイト構築、デジタル技術を使った革新的な広告の数々を手がけ、「現代の文化的ブランドは出版社のようにふるまうべき」という考えを確立していく。
ロエベに入社したきっかけは、スミス自身が「ファッション業界はデジタルによって大きく変化しようとしている」と直感したためだったという。ロエベのクリエイティブ・ディレクターであるジョナサン・アンダーソンやCEOのパスカル・ルポワーブルと面会し、ファッション畑出身ではない人材を求める同社の方針と合致した。ロエベでは、雑誌のように高頻度で多様なコンテンツを生み出す“コンテンツ・エンジン”を構築。ブランド独自のクラフトマンシップを核に置きながら、週に一度かそれ以上のペースで映像や写真を撮影・編集し、SNSから紙媒体まであらゆるチャネルで発信している。もともと1846年に創業されたロエベはクラフト技術を重んじる一方、スペインらしい遊び心や親しみやすさを大切にしており、伝統と現代性を融合させるやり方はアンダーソンのリーダーシップによるところが大きい。たとえば手作業で作ったアニメーションを映像プロモーションに取り入れるなど、職人技とデジタル施策を組み合わせることでブランドの世界観を広げている。
具体的な例として、スミスはダニエル・クレイグを起用した2022年秋冬キャンペーンを挙げる。映画『クワイア』での衣装デザインをアンダーソンが担当した縁から、クレイグのジェームズ・ボンド後の新たなイメージをユーモラスかつスタイリッシュに表現。ほかにもマギー・スミスを大胆に起用するなど、伝統的イメージに収まりきらない意外性あるコラボレーションを通じて話題を呼んできた。また、ネットユーザーの何気ない「このトマト、まるでロエベみたいだ」という一言から着想を得て実際にトマト型のバッグを作るなど、バイラル性や遊び心を逃さずブランドの魅力に取り込む柔軟な姿勢も特徴的だ。
ロエベのキャンペーンで特に評価が高いのは、スミス曰く「ブランドが常に文化やアートと結びついている点」である。アンダーソンはアーティストとのコラボレーションを積極的に行い、製品だけでなく広告映像や展示などさまざまな形で“新しいアート”を生み出している。2024年秋冬メンズコレクションではコラージュ作家のリチャード・ホーキンスにグリーンスクリーン撮影した映像素材を渡し、大規模なビデオコラージュインスタレーションを展開した。その体験こそがブランドの“文化的価値”を高め、ファンを惹きつけるエンゲージメントへとつながっているという。
最後にスミスは、キャリアを築く上で欠かせない考え方として「常にハイブリッドであり続けること」「好奇心を絶やさないこと」を強調する。自分がクリエイティブ畑かアカウント畑かといった枠にとらわれず、多角的なスキルや視点を身につけることで新たな場所でも柔軟に活躍できる、と彼自身が体感しているからだ。特にファッションや広告など変化が早い業界で成功するには、「まずはエンターテインする」「文化を取り込み一緒に動く」姿勢が欠かせない。スミスのキャリアは“変化を楽しむ”姿勢から生まれたものであり、そこにこそロエベのようなブランドを牽引する原動力があるといえるだろう。
“Loewe almost acts like a magazine,” he says. “We have an in-house team where we can make editorial content, producing different content for our magazine, which we publish four times a year, for TikTok, Instagram and for our website, as well as our big advertising campaigns. It means that we're essentially doing, quite often, two shoots a week.”
#ブランド #ハイブランド