シティポップ
アメリカの若い世代は自分たちの過去の記憶に純粋なノスタルジアを感じることができなくなっている。その代わり、日本という他者──自分たちが経験したものではない時代と場所の記憶に、ある種の新鮮で穢れていないノスタルジアを求めているのだという。シティポップの全盛時代である 80 年代といえば、日本はバブル景気に湧き、アメリカには安価な日本製品が大量に流入してくるなど、日本のプレゼンスが否応にも高まっていた時期に当たる。シティポップが内蔵していた楽観的で多幸的なビジョンは日本においては 90 年代以降説得力を失った。だが、その楽観的で多幸的なビジョンが現在のアメリカという地で需要されている。存在したかも定かでない時と場所への郷愁と期待感。