4.6データ記録時の注意
◎一般的注意
オシロスコープなど計測機器のデータを記録する際には,
a. 観測しうる波形のスケール(細かさ)
b. 書き写す図で表現しうるスケール
このa.とb.が同じになるように注意が必要.
※単純に言えば,なるべく大きく書き写すようにデータを取る.
観測条件をできるだけ詳細に記録しておくこと†42.
※観測条件:日時,場所,オシロの設定,回路の条件等々,第三者がその記録を見て実験を再現できるように意識する
データは複数回観測すること.
計測時には常に誤差とデータの有効範囲を意識すること.
図やグラフはあくまでもデータを見やすくするための方策なので,「データをプロットして線をつなげただけ」では意味不明.
a. グラフへの適切な特徴量の記入をする
b. 本文でデータの意味やグラフの特徴点を適切に解説する
このa.b.は必須と考えたい.図と文章の両方を使い,読み手にくどいくらい説明する.
◎ディジタル表示の注意
ディジタル式の機器でもっとも注意すべきことは,表示値の有効桁数と誤差である.
例えばFGの発信周波数表示の桁数が 8 桁だとする.
周波数を 100kHz と指定すれば,"100.00000kHz"と表示される.
しかしそれは,そのFGの発生信号の精度が小数点5桁あるわけではない.
つまり,100.000000kHz と 100.00001kHz との差が有意に表現できる確度を持っているとは限らない.
仮に確度± 0.1 %だとすると,上の数値の 4 桁目(100.0)以降はすべて誤差を含んでいる.
→ 正しい表記は100.0kHz であり,残りの 4 桁は無意味である.
ディジタル機器を使う時には,機器の仕様書から確度を調べておくこと.
◎有効桁・有効数字
☆例えば,"10"と"10.0"は工学的には別の数値である.
計測した数値と算出した数値の最右桁が誤差を含んだ桁として整っているかを,常に意識する.
有効数字については高校物理で学習しているはずなので復習しておくこと.
※ネットでも多くの文献が見つかる.
例えば次のような WebPage が参考になるだろう.
◎誤差の少ない測定のために
☆☆ ポイント(1)電圧/周波数設定はオシロスコープで☆☆
精度のいい周波数設定はどうすればいいのか?
答えは簡単で,回路の入力信号も出力信号も同じオシロスコープで観測するのだから,周波数も電圧もそのオシロスコープで測定しつつ設定すればよい.つまり,
設定(1)実験条件として指定された電圧/周波数を信号発生器で設定して出力する.
設定(2)オシロスコープで数値を確認する.
設定(3)目標値からずれていれば,
設定(4)オシロスコープで見ながら目標値ぴったりになるまで,信号発生器の微調整をする.
これで計測データの計算やグラフへのプロットの際に誤差を最小限に抑えることができる.
☆☆ ポイント(2)誤差/精度/確度/有効数字を面倒がらず考える☆☆
測定は誤差との戦いである.
この戦いを制するには「己を知り敵を知る」ことにつきる.つまり,
1. 測定系の道具(テスター,オシロスコープ等)の精度・確度をよく把握し,
2. 被測定系の道具(信号発生器,回路素子等)の誤差を知りつくし,
4. 正しい測定のやり方をすれば,
→ 最も誤差の少ない計測結果を導き出すことが可能である.
逆に,測定機器の誤差も知らずに適当に測定したデータから,精度のいい数値を導き出すことは,逆立ちしても不可能である.
今取ったデータの有効桁数は?測定器の確度は?――これを確認するのを怠らないこと.
【検討課題 0-1】( 実験・計測の基本 )
レポートを作成するにあたり,予習として,以下の項目についての注意事項,重要事項を調査し,簡潔に箇条書きせよ.
※出典情報は必須
(1)オシロスコープの数値の見方,記録の仕方
(2)観測データの誤差と有効桁数
(3)データの表現:表の作り方と留意点
(4)データの表現:グラフの作り方と留意点
その他,「実験レポートの書き方」という類の本やwebサイトは沢山ある.これらの書籍は概して安いので,自分にあったものを購入しておくことをお奨めする.