4.3アナログテスタ(1)
◎アナログマルチテスタ
本実験で用いるアナログテスタ(図4.13)は,少なくとも抵抗,直流電圧,直流電流,交流電圧のモードを切り替えて測定を行うことができる,複数のモードを持つテスタは,マルチテスタとも呼ばれる.
通常,各モードには,さらに複数のレンジがある.
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図4.13 アナログマルチテスタ(SP18D)
★本節で扱うテスタの表示や内部抵抗は,三和電気計器(SANWA) SP18Dという機種をベースにしている.具体的な数値は機種による異なるので注意されたい.
測定器は,使用するまえに,測定器の能力を最大限に引き出し,精度良く測定を行うための調整を行う必要がある.
アナログテスタの場合は,0点調節を行う必要がある.
0点調整を行っても針が全く動かない場合はヒューズや電池を交換することで復旧する場合がある.
◎テスタのモードとレンジ
表4.1 は,本実験で用いる2種類のテスタごとに測定におけるモードと,各モードが持つレンジを示したものである.
※レンジとは測定可能範囲のこと.一般的なテスタでは複数レンジを切り替えて使う.
表4.1 テスタのモードとレンジ(例)
https://gyazo.com/6f166e47b7b8b22fa9e82c0a73b7e923
測定には適切なレンジを選択する必要がある.特にアナログテスタの場合,測定値がレンジの範囲を越えると測定できないばかりか,針を動かすコイルに許容範囲を越えた負荷がかかり,故障の原因となる.
アナログテスタでは目視で針の位置を読むため,精度良く測定するためには,なるべく針が大きく動く,狭い範囲のレンジを選ぶことが望ましい.
☆例:抵抗値測定を考える.
A. 抵抗器が約 1 Ω の場合,
a.0~2M Ω のレンジで測定すると,針はわずかにしか動かない.
b. レンジの最大値が測定対象の値を上回っている条件を考慮して,最もレンジの範囲が狭いのは,0~2 kΩ のレンジである.
B. 抵抗器が約 5 kΩ の場合,
c. 0~2 kΩ のレンジでは測定できない.
d. 0~2 MΩや 200 MΩ のレンジでは範囲が広すぎる.
e. 適切なレンジは,0~20 kΩのレンジである.
抵抗値が未知の場合は,広いレンジから徐々に狭くしていくのが原則である.
※ただし,後述の内部抵抗の問題があるため,一般に回路中の高い抵抗値の測定は精度よい測定がしにくい.
◎抵抗値測定時の 0Ω 調節
抵抗値測定をする場合,測定レンジを変更するたびに 0Ω調節が必要である.
0Ω調節は,テスタのプローブを直結(赤と黒のケーブルの先を接触)して行う.
プローブを直結すれば当然,抵抗値は 0Ω になるはず.
ところが,抵抗測定回路は内蔵の電池で駆動していて,レンジによって負荷が異なり,レンジを切り替えると0Ω値が変化する.
図4.14 のメーター右下にある 0Ω調節つまみを左右に回して針が 0Ω を指すよう調節する.
◎表示板の読み方
https://gyazo.com/f37bf0a1f767a9ff475bee5a807806fe
図4.14 テスタ表示板の目盛り
図4.14 の表示板を説明する.扇形の一番外側から,抵抗用,視差確認用鏡,直流用,交流用,コンデンサ用,ボタン電池用,乾電池用,となっている.
※機種により表示は異なる
このうち主要な3つを挙げる.
1. 抵抗用: 右端が 0 Ω,左端が 2 kΩ になっている.レンジに合わせて倍率を変えて読む
2. V-A : 直流電圧(DCV: Direct Current Voltage)と直流電流用(DCA: Direct Current Ampere),左側0――右側レンジ最大値
3. AC12V : 交流電圧(ACV: Alternating Current Voltage)用,左側0――右側レンジ最大値
(抵抗値の読み方)
抵抗用の表示板には,目盛が 0~2k までの表記しか存在しない.
テスタには,0~2k Ω レンジ以外に,0~20k Ω や 2M Ω レンジが存在するが,その場合,どうするのか.
表4.1 を読むと,例えば 0~20k Ω のレンジは,テスタのレンジ表記で x10 と記載されている.
この意味は,図4.14 の 2k の表記を 10 倍して読む,ということである.
図4.14 の針は16.5を指しているので,x10 のレンジでは10倍して165 と読める.
この読み替え法は,他の測定モード(V-A や AC12V)でも同様に行う.
※抵抗測定では右端が0,それ以外では左端が0になっている点に注意
★次節はテスタ使用上の諸注意.