3.3集積回路(1)オペアンプ
本節では,半導体素子の集合体である IC(Integrated Circuit)を紹介する.
集積回路とは,一つのパッケージの中に数多くの電子回路が作り込まれ,特定の機能を持つ素子のことである
IC は,大きく分けてアナログ IC とデジタル ICに分けられる.
ここでは,アナログ系IC の例としてオペアンプと,ディジタル系IC として TTL と CMOS を紹介する.
◎オペアンプとは
オペアンプの正式名称は演算増幅器(Operational amplifier)である.
演算という命名からもわかるように,一種の計算機能を持っている.
オペアンプの回路記号としては,反転入力端子と非反転入力端子という二つの入力と,一つの出力をもった,図3.29 のような記号で表記される.
https://gyazo.com/c877962d80839ea27e83fedff456e963
図3.29オペアンプの回路記号
https://gyazo.com/1f1f268f6c6dce86100da6c0231f4c61
図3.30 オペアンプ ICの種類とピン配列
また,実際の製品としては,図3.30 のように,8本足のカン型と呼ばれる,オペアンプが一つだけ含まれたシングルタイプの製品や,DIP型のICとしては,含まれるオペアンプの数の違いから,シングル,デュアル,クワッドなど,異なるタイプの製品が存在する.
また,オペアンプは基本的に正と負の二つの電源が必要となるが,近年では,単電源に対応できる製品も生まれている.
◎オペアンプの種類と用途
オペアンプの用途は様々に広がっている.主要なものだけでも,以下のような回路が構成される.
(a)加減算回路 (b)微分積分回路
(c)発信回路 (d)フィルタ回路
(e)コンパレータ回路 (f)センサ回路
(g)制御回路 (h)変換回路
(i)アナログコンピュータ
また,製品の用途別の種類としては,表3.10 のような種類がある.
表3.10オペアンプ IC 用途別の種類
https://gyazo.com/f3ccc692038c1ef6e27e86fc13bc8c7b
◎オペアンプの歴史
オペアンプの生い立ちは,1920年代の負帰還アンプに遡る.
1930 年代~1940年代に真空管を用いた差動回路の発展形として実現された.この時代は,第二次世界大戦に投入する兵器開発のために大きく発展したエレクトロニクス部品の一つである.例えば連合軍側のM9 Gun Directorは,高射砲の照準をより早く正確に合わせるためにオペアンプを採用した電子式のシステムである.
1950 年代にはトランジスタ製のオペアンプが登場して小型化が進んだ.
1960 年代に集積化技術の発達によって,さらに小型化が進んで IC型のオペアンプが登場した.
1970 年代には,音質の良さが求められ,低雑音・広帯域化を目指した製品が製造されるようになった.
現在では,高い増幅度を基軸として,これまでのディスクリート素子によるトランジスタ回路の座を奪い,数多くの電化製品において主役の一つとなっている.