3.2能動素子(3)トランジスタ
◎トランジスタの機能と種類
トランジスタとは,半導体の特性を利用して信号を増幅したり回路をスイッチングする機能をもつ素子である.
電子回路の素子に電流を流す(電荷を運ぶ)担い手のことをキャリアと呼ぶ.
※電子素子はキャリアによって動作する.
キャリアには負電荷の電子と正電荷の正孔(ホール)の 2 種類(実は裏表)がある.
トランジスタにはいくつも種類が存在するが大まかには,作用するキャリアが正負どちらか一方か,両方かによってタイプを分けることができる.
a.両方=バイポーラ・トランジスタ(Bipolar Junction Transistor:BJT)
※Bipolar の”bi”は”両方”の意
バイポーラ・トランジスタ(BJT)にはPNP型と NPN型がある.
※本実験で用いるのは NPN型
b. 電子か正孔のいずれか一方=ユニポーラ・トランジスタ(Unipolar transistor) ≃ 電界効果トランジスタ(FET)
以下に分類体系を示す.
https://gyazo.com/b8238211db82fe22fa64b6a94fcaa92f
図3.26 トランジスタの分類
◎BJTの記号とパッケージ
図3.27 に BJT の記号と,一般的な3端子パッケージとの関係を示す.
図のように,BJT には三つの足,E(emitter),C(collector),B(base)がある.
記号の内側にある矢印の向きによって NPN(外向き)か PNP(内向き)がわかる.
https://gyazo.com/d1f4add252250a7e40783b6e6be695e0
図3.27 BJT の記号と形状
◎命名規則
図3.28 に,トランジスタの命名規則を示す.
https://gyazo.com/b89695a64f88dd3d369bb78f19ecd4b1
図3.28 トランジスタの命名規則
◎BJTの例:2SC1815
NPN型 BJT の一例として,表3.8 に 2SC1815 の特性を示す.
表3.8 2SC1815 の特性
https://gyazo.com/fd1d7f080795f976da7f7778b225e2a0
この表が示すように,直流電流増幅率($ h_{FE})のばらつきが10倍と大きい.
※$ h_{FE} :エミッタ接地増幅回路における直流電流増幅率
それでは実用上困るため,半導体メーカはばらつきの範囲が 2倍程度に収まるよう,$ h_{FE}の範囲によって分別し,識別文字をつけることがある(付帯形名).
2SC1815 の場合,O, Y, GR, BL ランクの付帯形名がつけられている(表3.9).
table:表3.9 Trの付帯形名(いずれも概数)
付帯形名付品番 最小h 最大h
2SC1815-O 70 140
2SC1815-Y 120 240
2SC1815-GR 200 400
2SC1815-BL 350 700
◎トランジスタの選び方
トランジスタを利用する場合には,上表のような特性に基づいて,以下のような点を考慮する必要がある.
A. 何ボルトまで使えるか:$ V_{CEO}で見る
$ V_{CEO}:コレクタ・エミッタ間最大定格電圧
※実際にはこれの 1/2 以下の電圧で使うようにする
B. 何アンペアまで流せるか:これは2つの観点から考える.
1.コレクタ最大定格電流($ I_C)は絶対超えられない値
※実際の使用では 1/2 以下で使う
2.最大全損失($ P_C)では何ワットまで使えるか
※「使う電圧」×「流す電流」を考慮の上,1/2 以下で使う
※全損失は放熱板の有無や周囲温度で変わるため,温度特性グラフで確認するとよい
C. 何倍の増幅が出来るか:$ h_{FE} で見る
※設計上必要なら付帯形名も考慮
D. どの周波数まで増幅できるか:利得帯域幅積($ f_T)と直流電流増幅率 $ h_{FE}に依存し,下記のように算出できる.
使用可能な周波数 $ f = \frac{f_T}{h_{FE}}
2SC1815 の例:
$ f_T = 80MHz,$ h_{FE} \simeq 70~700を代入
→ $ 114kHz$ \lt f \lt 1.14MHz